ピエロのプライベート
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第一章
ピエロのプライベート
ヒューストンで銀行員をしているジュゼッペ=ゴンザーロは休日はピエロのボランティアをしている。縮れた黒髪と彫のある黒い目に高い鼻と先が割れた顎の面長の顔をメイクで覆い。
引き締まった長身をピエロの服に包んで活動している、そんな彼にだ。
妻のテレサ、小柄で青い目に黒髪でスタイルがよく全体的にあだっぽい丸顔の彼女は家でこんなことを言った。
「想像出来なかったわ、あなたがピエロなんて」
「これでも好評なんだよ」
夫は妻に笑って話した。
「僕のピエロは」
「面白いって」
「動きもよくてね」
「そうなのね」
「メイクをして服を着て」
そうしてというのだ。
「完全にピエロになれば」
「銀行員のあなたはなのね」
「もう完全にだよ」
こう言っていいまでにというのだ。
「ピエロになるんだよ」
「そうなのね」
「銀行員の時はスーツだけれど」
そして真面目に働いているのだ。
「ピエロになればね」
「完全にピエロね」
「ピエロじゃないって言う人なんて」
それこそというのだ。
「一人もだよ」
「いないの」
「ピエロの僕を見てね」
「じゃあ一度見せてもらうわ」
妻は夫に笑顔で話した。
「その時のあなたがどうなのか」
「いいよ、ボランティアでやっていてね」
「観て楽しんでもらうものだから」
「君もね」
自分の妻である彼女もというのだ。
「是非ね」
「観ていいのね」
「そうしてくれていいよ」
「じゃあ今度の日曜ね」
「教会でのミサの後だよ」
「ピエロになるのね」
「教会の前でね」
場所の話もした。
「なるから」
「じゃあその時にね」
「うん、宜しくね」
「こちらこそね」
こうした話をしてだった。
テレサは実際にジュゼッペのピエロ姿を観ることにした、まずは夫婦でミサに参加してその後だった。
夫は教会の裏に入った、そして暫くしてだ。
境界の前の広場に出た、その姿はというと。
白塗りを基調とした派手なメイクにピエロの服で様々な芸を披露する、身軽で日課にしているジム通いの成果も見られた。
剽軽でおどけていて明るい、それはまさにピエロであり。
妻はこれが夫かと内心驚いた、それでだった。
ボランティアのそれが終わって自宅に帰って遅めの昼食を摂っている時にだ、彼女はこう夫に言った。
「いつものあなたにはね」
「思えなかったね」
「ええ」
まさにというのだ。
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