アフリカ系が活躍して
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第一章
アフリカ系が活躍して
藤井寺球場の近鉄バファローズと阪急ブレーブスの試合を観てだった。
小学生であどけない顔をしている橋田照治は笑顔で言った。
「ブライアントもブーマーも凄いね」
「そうだな」
一塁側の席に一緒にいる父でサラリーマンの輝夫も頷いた、息子そっくりの顔だが背はより高く大人の身体つきである。
「どちらもな」
「物凄いパワーだよね」
「ああ、ホームランどんどん打つな」
「それでだけれど」
息子は父にさらに言った。
「二人共黒人だよね」
「肌黒いだろ」
「だから黒人だね」
「どのチームにもいるだろ、助っ人で」
「うん、ただね」
照治は父に首を傾げさせつつ言うのだった。
「この前学校で先生に聞いたよ」
「先生にか?」
「アメリカじゃ黒人の人は差別されてるって」
「ああ、それはな」
父は息子の今の言葉に即座に答えた。
「本当のことだ」
「そうなんだ」
「肌の色が違うからな」
だからだというのだ。
「アメリカは白人多いだろ」
「バースみたいに」
「ああ、白人の方が多いからな」
そうした国だからだというのだ。
「黒人の人達はな」
「お肌の色が違って少ないから」
「差別されるんだ、何やっても白人より駄目とか思われてな」
「駄目?」
そう言われてだ、照治は。
バッターボックスにいるブーマーを観てだ、父に言った。
「ブーマー三冠王獲ったじゃない」
「そうだな」
「バースも落合もやったけれど」
「二人と同じだけ凄いな」
「うん」
実際にというのだ。
「本当に、ブライアントだって」
「近鉄に来てすぐにな」
「ホームランガンガン打ってるのに」
「何処が駄目なんだってなるな」
「マイケル=ジャクソンだっているし」
この歌手の名前も出した。
「何処が駄目なのかな」
「勝手にそう思い込んでるだけだ」
輝夫は息子に自分が思う差別のことを話した。
「差別する人達がな」
「勝手になんだ」
「数が少なくて肌の色が違ってな」
「それだけでなんだ」
「駄目だってな」
「それだけのことなんだ」
「しかし見ろ、ブーマーもブライアントも駄目か」
息子にそのブーマーを観つつ言った。
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