金木犀の許嫁
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第四十一話 デートの後の夕食その一
第四十一話 デートの後の夕食
夕食のカレイの煮ものとほうれん草のバター炒め、それに茸と豆腐の味噌汁を楽しみながらだった。白華は兄と夜空の話を聞いて言った。
「織田作さんにお会いしましたか」
「そうなんだ」
「喫茶店でね」
二人は正直に答えた。
「まさかと思ったけれど」
「織田作さんだったわ」
「凄いですね、私もまさかと思いましたが」
白華は今は梅干しを食べている、それも食卓に置かれていて家族全員で食事の最初にそれを箸に取って食べているのだ。
「織田作さんは本当にですね」
「そう、大阪におられるんだ」
「今もね」
「幽霊になられてるけれど」
「生前と同じでね」
「そうですか、ただ」
それでもというのだった。
「お二人はそれだけですか」
「それだけ?」
「あの、難波に行かれましたね」
兄に対して言った。
「道頓堀の方にも」
「行ったよ」
佐京は正直に答えた。
「そうしたよ」
「それなら入らなくても」
それでもというのだ。
「新喜劇の前は」
「千日前の方の」
「行かれなかったのですね」
「傍は行ったよ」
新喜劇、それが行われているなんばグランド花月のというのだ。
「そうしたよ」
「そうですか」
「そしてね」
そのうえでというのだ。
「今度行くよ」
「そちらにはですか」
「そうするよ」
「そうですか」
「今回は織田作さん由縁の場所ばかり行ってたから」
「新喜劇まではですね」
「考えが及ばなかったよ」
「今気付いたわ」
夜空は言われて頷いた。
「確かに」
「そうだよね」
「新喜劇ね」
「悪くないね」
「大阪はお笑いの街でもあるし」
「今度行こう」
「そうしましょう」
こう二人で話した、しかし。
真昼は二人の話を聞いてだ、カレイの煮もの醤油と生姜で味付けされたそれを食べつつ残念そうに述べたのだった。
「最近のお笑いってね。八条芸能はいいけれど」
「面白くないとか?」
「昔のお笑い観たらね」
こう妹に話した。
「今よりもね」
「面白いのね」
「そうなの、けれど昔のお笑いを観て」
「今のお笑い観たら」
「どうもね」
これがというのだ。
「面白くないの」
「そうなのね」
「いや、全力で割らせようっていうのがないの」
「今のお笑いは」
「前はそうは思わなかったけれど」
それでもというのだ。
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