星河の覇皇
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第八十七部第四章 首相官邸にてその八
「証拠をね」
「掴まれないことですね」
「そうした意味で知られないのよ」
「そういうことですね」
「ええ、そして」
伊東はさらに話した。
「知られないことはそれだけでね」
「大きな武器ですね」
「知るということは武器で」
「知られないこともですね」
「武器よ」
そうなるというのだ。
「それもまたね」
「左様ですね」
「だからね」
「総理はこれからもですね」
「知られない様にするわ」
「そうされますね」
「相手は知ってね」
逆にそうしてというのだ。
「そのうえでね」
「こちらは知られない様にして」
「相手を知るのよ」
「それが謀略に強くなる秘訣ですか」
「そう、そして知るのはもう一つあるわ」
「自分自身ですね」
秘書官はその目を鋭くさせて述べた。
「自分自身も知ることですね」
「敵を知りというわね」
「そして己を知る」
「そうすれば百戦危うからずというわね」
「まさに」
「孫子にある通りよ」
「敵も知ってですね」
秘書官も述べた。
「そのうえで自分を知り」
「自分を知られない様にするのよ」
「そうすれば謀略もですね」
「成功するわ、ただね」
「ただといいますと」
「上には上がいるわ」
伊東は目の光を強くさせてさらに言った。
「何でもね」
「謀略でもですね」
「そうよ、そのことも知っておくことよ」
「自分以上のものがいないと思えば」
「もうそこで成長はしないし」
それにというのだ。
「そして自惚れてね」
「自惚れますと」
秘書官はそこから先をあえて言った。
「足元を抄われますね」
「そうなるわ」
実際にとだ、伊東も答えた。
「何事もそうよ」
「謀略もですね」
「ええ、百点で最高か」
「百点以上もありますね」
「そして幾ら成功してもね」
「自惚れないことですね」
「毛利元就公は謀略の達人だったわ」
あまりにも謀略を使いそれが巧みであったので謀神とさえ呼ばれた、そしてその奸悪は無限とさえ言われた。
「あの人は」
「戦もしましたが」
「謀略でね」
「一大勢力となりましたね」
「けれどね」
そうだったがというのだ。
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