ツバサ -DECADE CHRoNiCLE《ディケイドクロニクル》-
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第20話:繋がるオモイ
前書き
突如現れた魔化魍・オオアリに苦戦を強いられる。
だがそこへ現れるのはゴウラムだった。
トライゴウラムと歌舞鬼の活躍により見事二体のオオアリを撃破したディケイド一行。
オオアリを倒した後、一度警視庁へ戻った士達一同。
G3ユニットのGトレーラーやガードチェイサー、G3の装備を収容している待機室に案内された一同を待ち受けていたのは一条と北条、そして二人の制服を纏った男女。
一人は30代の年齢に近い黒髪の男性で、もう一人は長い髪をお団子状に纏めた若い女性。
男性の方が士達のユウスケへ話しかけてくる。
「君達がクウガの仲間達か」
「そうですがあなたは」
「俺は尾室隆弘、G3ユニットの主任だ」
男性……『尾室隆弘』はユウスケに握手の手を差し伸べる。
ユウスケは不思議がりながら、手を握って応じた。
その姿を見て尾室は笑いかけながら話しかけた。
「しっかし、あのクウガが君のような青年だったとは」
「あの、その、俺は貴方達の知ってるクウガじゃなくてですね」
「分かってる。例え君が俺達の知っている未確認生命体4号……クウガでなくても、かつて先人と共に戦ってくれたクウガと変わりなくてよかった」
笑顔でそう言う尾室に、ユウスケは笑顔で返す。
そんなチヤホヤされる様子を見て士は不貞腐れた態度を取る。
「なんだよ、クウガやら4号やらって特別扱いしやがって」
「そりゃまあ、第4号ことクウガは9年前のグロンギ事件で当時の未確認対策班の人達と共に戦った英雄だもの」
士の言葉にそう返してきたのは尾室の隣にいた女性。
彼女は士の前に出て、興味津々な様子で問いかけてきた。
「ところで君のその装甲服は?さっきの戦いぶり明らかにG3とは違うのは明白だ!」
「何だお前は」
「私は絵里衣、数奇屋橋絵里衣。G3ユニットで開発担当をしているわ」
「変な苗字だな……ディケイドの事がそんなに気になるのか」
士は制服姿の女性……『数奇屋橋絵里衣』に対して鬱陶しそうな表情を浮かべる。
だがそんな嫌そうな表情などお構いなしに彼女は質問をぶつけはじめる。
「そのディケイドの出力は一体何?その武装の変形機構は?製造元は?何故そんな奇抜なデザインを……」
「俺が知るかぁ!」
「ちょっと士君!急に怒鳴らないでください!」
絵里衣の質問攻めに怒鳴り声を上げる士。
夏海が士を宥める中、黒鋼が何処か遠い視線を絵里衣に向けている事に気づいたファイはこっそり尋ねた。
「どうしたの黒りん」
「アイツ、桜都国で出会った情報屋だ。あっちにいるG3の二人もその助手をやってた」
「へぇ、つまりこの世界でもそういうのはあるんだね」
黒鋼が首で指した方向を見て、ファイはその視線を向ける。
そこにはG3-01とG3-02を装着していた二人……『秋海洞威』と『東国丸健多朗』が自分達の装着していたG3のスーツを点検している所だった。
丁度終えた所だったのか、彼ら二人は黒鋼たちの視線に気づくとこちらへ近づいてきた。
「さっきの戦いはありがとうございます。俺は秋海洞威っていいます」
「俺はコイツの相棒で東国丸健多朗。おかげで未確認もデカブツのも倒せたし、いいことづくめだぜ!」
「へへっ、そりゃどうもー」
二人の褒め言葉に不愛想な黒鋼の代わりにファイが笑みを浮かべて受け止める。
威はあることに気づくと、健多朗に尋ねる。
「あれ、蒼真のヤツどこにいった?」
「そういや見かけないな。せっかく同じく戦った仲間なのに」
「蒼真?一体誰だ?」
黒鋼が聞きなれない名前を耳にして、二人に尋ねる。
それを聞いて威と健多朗の二人は答えた。
「雷堂 蒼真、俺達の仲間でG3-03の装着者です」
「この中じゃ一番の若手で、よく突っ込む俺達のサポートをしてくれるいいやつだ」
二人の説明を受けて、黒鋼は先程の戦闘の時、拘束されていたディケイドを解いたり、サガの補助をしてくれたG3の事を思い出す。
自分のような前線に出て戦うようなタイプではなく、冷静ながら物事に関して対処しているという印象を黒鋼は感じた。
そんな会話をしていた威と健多朗へ絵里衣が怒りの籠った口調で声をかけた。
「威、健多朗、お前達は雷堂を見習いなさい!」
「なんなんだよ!俺達が悪いってのか!?」
「いつもいつも無暗に前へ出て戦って!フォローしなくちゃいけない側になりなさい……雷堂の爪の垢飲ませてやりたいわ!」
「いやいやいや、俺達だって考えて行動しているから!」
今にも殴り掛かりそうな勢いで迫る絵里衣から逃げる様に威と健多朗は彼女から離れていく。
仮にも警察組織の人間でありながら騒がしい様子を見せる彼らに、北条はため息をつく。
「我々にとって頼もしいのは認めなければいけないところですが、彼らがいた昔以上にやかましいですね」
「ははは……あれでもG3の装着者としては正義感があって頼りがいがあるのですけどね」
北条の皮肉も聞く暇もなく慌ただしく駆け巡る三人……そんな彼らの姿を尾室は苦笑いで見ていた。
士達……特に士とユウスケはかつて巡った【アギトの世界】で見た"仲間の絆"とG3ユニットの仲の良さを感じ取り、生暖かく見守っていた。
その後、士が一条へと話しかける。
「ところで一条さんだったか?妙な羽根のようなものについて聞いたことないか?」
「羽根だって?」
「ああ、俺達の仲間のどうしても取り戻したいヤツがいてな。とりあえず当面の目的はその羽根探しだ。噂でもなんでもいい」
「なるほど。君達がそれを探しているのはわかった。一つ心当たりがある」
一条は士達にそう告げると、手帳を取り出してメモの内容を見せた。
一同が覗き見ると、驚きの表情を浮かべた。
―――その写真には【羽根を握りしめた仮面の戦士】の姿があった。
~~~~~~
同じ頃、警視庁内部の廊下で夏目はとある人物を探していた。
周囲を見回しても自分を探している『彼』の姿はなかった。
「あの人、雷堂さん……一体どこにいるんですか」
夏目の探している彼……雷堂蒼真。
自分も親しくしているわけではないが、彼の事は口伝で知っていた。
……G3ユニットに所属しているG3-03の装着者であるが、厳密には警察には所属していない。
元々は増発する未確認生命体による事件への対策として装着者の一般公募から採用された青年であり、年は今年で23になった自分より若い。
それなのに先輩達のフォローをこなしながらG3として未確認生命体と戦う彼はメンバー内でも評価が高い。
私生活についてはG3ユニットメンバーでの焼肉などの付き合いはあるものの、まだ謎が多い。
"十分に戦えない自分"にとって彼は羨望の対象だった。
(もう少し彼に、雷堂さんに近づければ……きっと私も……)
夏目はそんな淡い期待を宿しながら、蒼真を探していた。
すると携帯電話片手に話している一人の青年を見つける。
端整な顔立ちをし、鮮やかな金髪と青い瞳を持った若いその青年……『雷堂蒼真』は夏目の存在に気づくと、電話の相手に断りを入れた。
「じゃあな、ルメン。また電話はする……お待たせしてすいません、夏目さん」
「あの、誰かとご連絡中でしたか?」
「ええ、知り合いと。どうかなされたんですか?」
「士さん達がG3ユニットと皆さんと出会っている中、雷堂さんの姿がなかったので探していたんですよ」
「ああ、丁度知り合いから連絡が入って来てですね。少し抜け出していたんですよ」
蒼真は夏目の質問にそう返した後、G3ユニットの待機室へ向かおうとする。
そこへ夏目が蒼真へ恐る恐る声をかける。
「あの、雷堂さん。ちょっといいですか?」
「なんですか?」
「前々から思っていたんですけどあなたはその、怖くないのですか?未確認と戦うのは」
「……少なからずあるってところですね。誰だって怖いものはありますよ」
蒼真は夏目の方に振り向かないまま答えた。
彼は言葉を続けて彼女へ言った。
「でも、一番怖いのは何もできずに失うって事ですよ」
「何もできずに失う?」
「ええ……目の前で大切なものが失いそうって時に手を伸ばせないで助けられないってのは結構辛いし悲しいし、何より自分が許せなくなる」
悔しそうな声で呟くように話している蒼真を見ていた夏目は、彼が自分の拳を握りしめる所を目に入る。
自分の知らない所でつらい過去を背負ったのだろう、かつて未確認に父を殺された自分のように……そう思った夏目は自分の背負ったものを蒼真に話すことにした。
「確かにそうですよね……私も同じです。かつて父親を未確認に殺されて、自分のように誰かが悲しむ事が見ていられなくて、だからこの警察官の道を選びました。助けの手を伸ばすために」
「夏目さん……」
「それに昔、私を助けた人が言ってくれたんです。『君にもいつか、なんかやるときが来ると思う。お父さんもきっと、それを楽しみに見守ってくれてる』って」
「いいひとですね、その言葉を言った人は」
夏目の言葉を聞いて蒼真は横顔を彼女へ向ける。
口元に笑みを浮かばせて、夏目に聞こえるだけの声の大きさで呟いた。
「その優しさはきっと、貴方の強さになりますから忘れないでくださいね」
「えっ……それって」
蒼真の言葉の意味を尋ねようと声をかけようとするも、既に姿が消えていた。
不思議がる夏目は待機室へ戻ることにした。
~~~~~~
某所。
暗闇に覆われて静けさに包まれた場所……そこに足を踏み入れるのは一つの人影。
その人物がその場所の中心たどり着くと、周囲にいくつものモニターを模したホログラムが浮かび上がる。
どのホログラムにも人の姿が映っており、その中にいたゴーグルをかけた青年から話してきた。
『リーダー、関東のネオライダーの活動は日々激化している。特に頼打地区が被害を被っている』
「各地に分散している所はあるが、基本的には関東地方を中心に暴れているのか」
『まあな。名前付きは関東をメインで活動してるな。他は疑似ライダーのオルタナティブが指示役をしてやがる』
「京都の方はどうだ?『暗黒神』は見つかったか?」
『いえ、戦闘では何度か交戦するものの、正体までは未だ掴めません』
ゴーグルの青年から栗色の髪の少女の映るホログラムに変わり、リーダーと呼ばれた人物の質問に答える。
中心人物となっている『リーダー』は険しい表情で口元を抑える。
「どうしたものか、ネオライダーの一員の一部は今日本と【大陸】で活動している。未確認の情報によるがそちらに【例の彼ら】が大陸へ向かった」
『日本の守りが手薄になってるのか……なら俺達が離れるわけにはいかないな』
「ああ、俺達の目的はネオライダーの魔の手から人々を守るためにこの国を離れるわけにはいかない」
ゴーグルの男の言葉を聞いて、リーダーは重苦しく答える。
そこへ頭にバンダナを巻いた少年が声を張って手を上げる。
『だがよ、このままだとアイツらの言いようにされるぜ?』
『それについてだが、一つ報告がある』
「お前か、アギト」
リーダーから"アギト"と名前を呼ばれた人物はホログラムに映る。
フードを被っており、若い男の声を発しながらリーダーに申し出た。
『異世界からやってきたディケイドとその仲間のライダー達と遭遇した』
「……なんだと?」
"ディケイド"という名前を聞いて話に参加していたメンバー全員が騒然とする。
ゴーグルの青年が驚きの声を上げながら訊ねる。
『おいおい、それって本当なのか!?ディケイドって、あのディケイドか?』
『ディケイドと仲間のライダー達はG3ユニットと協力して大型の魔化魍二体を倒した。画像がこっちだ』
『へぇ、成長した魔化魍を二体も倒すってのは驚きだぜ』
バンダナの少年は嬉々とした声で言った。
噂ではディケイドは他のライダーでは倒せない怪人の特性を無視して倒すことができるという。
複数の怪人を使役するネオライダーと相手する自分達にとっては是非とも味方に引き入れたいライダーだ。
リーダーはアギトに対して仲間達の事を聞いた。
「ディケイドの仲間達についてわかっていることは?」
『今回ディケイドの他に現れたのはあのクウガと……銀色の鎧に蛇の意匠が入った鎧を纏う戦士と、赤と緑で左右非対称な鬼です』
そう言いながらリーダーはホログラムに映し出された情報を浮かび上がらせる。
ディケイドやクウガといった仮面ライダー達が映し出され、その光景の一つを見て、リーダーは名前を呟く。
「あっちの銀色は仮面ライダーサガ、緑と赤は仮面ライダー歌舞鬼か」
『知っているんですね』
「ああ、うちと縁のあるやつがちょいとネタを残していてな……一応覚えてはいるさ」
リーダーは目の前に浮かぶ映像の中からとある光景がふと目に留まる。
そこに映し出されていたのは仮面ライダーへと変身を遂げた小狼達三人の姿……彼らの姿を見て、リーダーは眉をひそめた。
「何故、彼が仮面ライダーナイトに?」
『リーダー、どうかされたのですか』
「……そうだな、今関東の頼打地区に近いのはガタックと斬鬼か」
リーダーが二人のコードネームらしき名前を呼ぶと、ゴーグルの青年とバンダナを巻いた少年のホログラムに切り替わる。
『俺達をお呼び出しとは』
『へへっ、お目が高いぜ!』
二人は自信満々な表情を浮かべて言葉を待っていた。
暫しの間、閉じていたリーダーの口が開く。
「二人に告げる。ディケイドとその仲間達に接触せよ」
後書き
ツバサ名物・異世界の同一人物。
今回は桜都国の情報屋としてでも登場した絵里衣&威&健多朗。
この世界での彼らの職業は『G3ユニットの隊員』ですね。
新キャラ・雷堂蒼真。
第三の仮面ライダーG3として活躍していた好青年。
まだまだ謎の多いキャラですが、一体何者か……彼を掘り下げるのは別の機会にしましょう。
蠢く謎の集団、【大陸】やら【例の彼ら】やら謎の単語が飛び交い、リーダーなる人物が仕切っている様子。
ネオライダーを敵視しているようだが果たして。
次回、アイツらが登場。
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