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ツバサ -DECADE CHRoNiCLE《ディケイドクロニクル》-

作者:地水
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第16話:誇りあるケイジタチ

 
前書き
 レジェンドライダー・ギャレンとレンゲルに遭遇した小狼達一行。
彼らとの友情を深め、新しい手かがりを手に入れた。
その一方では、サクラは友人となったハルに言われて自身の恋心を自覚する。
そして、ここに新たなる出会いがあった。 

 
 ―――それは、ユウスケと小狼とファイが白井虎太郎の元へ向かっていた頃の出来事。
士と黒鋼は今日の修業を終えて、帰路についていた。

「しかし忍者ってのは、もっとこう忍ぶものかと思っていたんだがな」

「なんだ?何が言いたい?」

「忍者ってのはこう、分身の術とか五遁の術とか忍術を使ったり、手裏剣を飛ばしたりしているものかと思っていたが」

「生憎、忍者って言っても色々いる。俺の日本国にも忍術使ったり忍具使うやつもいれば、俺のような腕っぷし一つで敵を倒すヤツがいるんだよ」

二人は他愛ない話を繰り広げながら、道を歩いていた。
そんな中、突然誰かの悲鳴が聞こえる。
見てみると、ひとりの老婆が道に倒れており、その先では怪しい恰好の男が手提げ袋を持って逃げていた。
それを見て士は呟く。

「穏やかじゃないな」

「ほう、修業の成果を確かめるには丁度いいなぁ」

「やれやれ、素早いのは忍者もどこも同じだな」

拳を鳴らしながら黒鋼は走り出し、その後を追って士も走って向かった。
老婆の荷物を奪ったひったくり犯の男は、自分を追いかけてくる二人に気づき、急いで逃げていく。
……その様子に気づいたスーツ姿を纏った一人の男性が、倒れている老婆に近寄った。

「大丈夫ですか」

「ええ、はい。大丈夫です」

「あなたはここにいてください。すぐに取り返してきます」

一人のスーツ姿の男性は老婆を助け起こしてそういうと、泥棒を追いかける黒鋼達の後を追って男性も走っていく。

一方その頃、犯人は後ろから追いかけてくる士をなんとか振り切ろうと逃げ足を速めていた。
士は逃げる犯人を追い詰めながら声をかける。

「待ちやがれ!」

「な、なんで追いかけてくるんだよ!」

「恨むなら目の前で盗んだ自分を恨むんだな!」

「じょ、冗談じゃねえぞこの野郎!」

犯人は駆け足を速めながら、士から逃れようとする。
なんとか曲がり角を回って、逃げようとするが……。
そこには先程から見えなかった黒鋼の姿があった。

「よぉ」

「ひぃ!?ど、どうして!?」

「あん?木々を飛び乗って先回りしてたっていえば納得するのか?あぁ?」

鋭い視線を向けながら、距離を狭めてくる黒鋼。
龍に睨まれたような強張った顔で怯えながらひったくり犯は後ろへ逃げようとする。
だがそこには、追いついた士の姿があった。

「悪いがここは通行止めだ」

「ちくしょう!どけどけ!!」

ひったくり犯は、奪った荷物を捨てて、殴り掛かろうとする。
だが、二人が繰り出す方が早かった。

「「―――ハッ!」」

士の横蹴りと、黒鋼の突き出した拳。
どちらも顔に当たる寸前の所で止まり、ひったくり犯に風圧が襲い掛かる。
目を見開いたまま、ひったくり犯は恐怖におののいて、その場にへたり込んだ。
その後、スーツの男が一同の元へ駆けつけると、戦意喪失した犯人を取り押さえる。

「ひったくり犯、現行犯で逮捕、と」

「なんだ?アンタ警察か?」

「ああ、刑事をやっているものだ」

「そうか、あとは任せるぞ。いくぞ黒鋼」

士は刑事の男に対してそういうと、ひったくり犯を任せて黒鋼と共にこの場から去ろうとする。
だが、刑事の男が二人の顔を見て驚いたような表情を浮かべると、声をかけてきた。

「待ってくれ。君は、君達は、もしや……」

「「……?」」


―――――


その翌日の事。
士、ユウスケ、夏海、ファイ、黒鋼の5人はとある場所へ向かっていた。
ちなみに小狼とサクラは遊園地にて遊びに行っており、この場にはいない。
ユウスケは自分達まで連れてこられた事について士に尋ねた。

「士、一体どういうことだ?」

「どうにもこうにも、お前達も連れて行った方が話が早いと思ってな」

「えっ、俺達も?」

士の言った言葉にユウスケは疑問を持つ。
小狼とサクラの二人は……察する所、想い人同士だった様子で、たまには二人っきりにさせるのもいいだろうと、この場には呼ばれていない。
だが夏海はともかく、自分とファイも呼ばれるのには何か理由があるのだろうか。
そう思ったユウスケは士に尋ねた。

「なぁ、俺達に何か用でもあるのか」

「ある意味な。特にユウスケ、お前は驚くと思うぞ」

「へ?俺?」

ユウスケは士の言葉に眉を顰める。自分が驚くほどの何かが待ち受けているのか?
そう思いながら、士達一同はとある場所にたどり着いた。
―――そこは警視庁であった。
夏海とユウスケは辿り着いた場所に驚き、黒鋼は士達に尋ねる。

「おい、なんなんだここは?」

「なんていえばいいんでしょう、警察……悪い人を取り締まっている人達がいる所ですね」

「つまり、黒りんみたいな悪い顏の人が御用になるところってことだね」

夏海の説明を聞いてファイの茶化しに黒鋼は睨みつける。
一同は警備中の警察官に挨拶をしながら、中へと入っていく。
受付の方では、案内役の警察官が士達の姿を見つけると、駆け寄ってきた。

「お待ちしておりました。案内します」

「ああ、よろしく」

士が軽い言葉でそう返すと、一同は案内役の警察官についていく。
やがてたどり着いたのは、とある会議室。
中に入ると、そこには幾人にも及ぶスーツ姿の人物。
その中には、先日ひったくり犯を取り抑えたあの男の姿もあった。

「随分とまあ、揃いも揃って、何の集まりだこれは?」

「開口一番に失礼ですね。キミ……」

神経質そうな一人の男が、士の言動に眉を顰める。
士はその男を見て鼻で笑って返すが、夏海が親指を立てて突き出すと黙り込む。
神経質そうな男はため息をついて士達の事を訊ね始めた。

「一条さん、この人達がそうなんでしょうか」

「北条さん、あなたも監視映像で何度も確認したでしょう」

「そうですが……」

士と黒鋼が出会った男――『一条薫』は、神経質そうな男――『北条透』にそう言い返すと、士達に向き直る。
自分の名前を明かしながら、自己紹介をした。

「私は一条薫、警部補だ」

「で、警察のアンタが俺達を呼び出してまで何か用か?」

黒鋼は一条に対して何故警視庁まで呼び出してまでの用について聞き始めた。



「単刀直入に言わせてもらう。君達が未確認生命体第四号……クウガの仲間なんだろう」



それを聞いて、士達は騒然とする。
特にユウスケに至っては驚いた声を上げる。

「えっ!?」

「おい、クウガって、確か」

「確か、ユウスケ君の変身する……」

黒鋼とファイはクウガの名前を聞いて、ユウスケの方へ見やる。
ユウスケが変身する、仮面ライダークウガ……自分達が知る限りで心当たりがあるとすれば、彼しかいない。
"ユウスケ"という名前を聞いて反応があったのは一条もだった。

「ユウスケ?君、ユウスケっていうのか」

「はい、俺、小野寺ユウスケっていいます」

「そうか。―――奇しくも同じ名前か」

「えっ……それって一体……」

一条はユウスケの名を聞いて、"とある男"の事を思い出す。
ユウスケはそこに聞こうとするが、そこで北条がわざとらしく咳ばらいをする。

「ごほん……話を戻してもよろしいですか?」

「す、すまない」

「ごめんなさい」

「……で、君達の反応からすると、クウガの仲間なのは確かのようですね」

北条は黒鋼とファイの言葉を聞いて、クウガの仲間だと判断しながら訊ねてくる。
それを答えたのは士だった。

「ああ。仮面ライダークウガ……ユウスケは俺達の旅の仲間だ」

「なるほど、しかし解せないですね。本当にあのクウガなんですか?」

「あのクウガ?」

士の答えを聞いて北条はさらに訊ねる。
疑問符を浮かべる士と他の一同の反応を見て察して北条は補足を説明する。

「2000年、かつて長野県の九郎ヶ岳遺跡にて発見され、それ以降は出現して多くの犠牲者を出させた未確認生命体……グロンギ。そのグロンギと戦ったのが、第四号ことクウガです」

「なるほど、大体わかった。あんたらの言いたいことは分かった」

「あれ、ちょっと待ってください士君。ユウスケは私達と一緒に旅してきたんですよ?この世界にやってきたのってつい最近なのにおかしいじゃないですか」

士はクウガの事を聞いて察し、夏海の指摘をする。
確かに士達はこの世界に来たばかりだ。
だが北条達の言葉を信じるなら、少なくとも過去にこの世界でクウガが現れていることになる。
一体どういうことだ、と他の刑事達がささやく中、士がその答えを告げる。

「この世界にはユウスケとは別のもう一人の仮面ライダークウガがいるってことだ」

「俺の他にクウガが!?」

「要するに本来なら一人しかいないはずのクウガが何故もう一人いるのか、そしてその正体が何者なのか我々は知りたかったのだ」

一条が士の説明を補足するために付け加えた。
ユウスケが変身するクウガと、この世界にいるクウガ。
今現在、この世界には"二人のクウガ"が存在する……士達はその事実を知ると、顔を見合わせる。
ユウスケが士にどう説明するか尋ねる。

「どうする?士?」

「どうするもこうするも……少なくとも、俺達の事知りたいってなら、一応自己紹介しておく必要があるな」

「とりあえずオレ達のことは士君達の仲間ってことでいいよね」

「ああ、それで行こう」

ファイの言葉に士はそう答えると、一条達に自分達の事を話した。
小狼達の事はまた事情が違うため、今回は『士達と同じ仲間』として扱った。
自分達は"仮面ライダー"であり、次元を超えて世界を旅をしていると……。
その話を聞いて他の人々はざわつき、その中でも北条が難色な顔色を示す。

「別の世界から来たって……そんなSFでありそうな話、信じられるとでも」

「確かに信じられないでしょうね。でも北条さん、現状を見てください」

「何が言いたいのですか? 一条さん」

「クウガという現代とは逸脱した存在が過去にいた上、今はグロンギ以外にも人々を脅かす脅威は存在する。警察には対処しきれない大きな存在が……だから今更異世界や別の世界だってあるとしても、我々は信じるしかない」

一条の言葉を聞いて、北条は苦い顏をしながら黙り込む。
どうやら士達の言う事を世迷言と決めつけてない辺り、一条という事は信頼できる。
そう思った士はふと浮かんだ疑問を一条に質問として投げかける。

「その様子だと、他の未確認生命体……グロンギの他にも怪人達のことは知ってるようだな」

「ああ、表向きは未確認と同じものとして扱っているが、確認してはいる」

士の質問に対して一条は答えた後、部屋は暗くなってプロジェクターにとある映像が映し出される。
そこに映し出されていたのは、……ワーム・ファンガイア・アンノウン・ミラーモンスター・オルフェノクといったいくつもの怪人達。
そして次に映し出されたのは、怪人達と戦う仮面ライダー達の姿……その中にはクウガの姿もあった。

「我々警察組織が確認している未確認達と戦う戦士達、通称仮面ライダーは味方と明確に判明しているのは8人……その中にはクウガもいる」

「その他に、アギト、龍騎、ファイズ、ブレイド、響鬼、カブト、キバ、の7人か」

士は怪人達と戦うライダー達の名前を口にする。
この中に電王や士の変身するディケイドがいないのは、時間や世界にて活動しているライダーのため確認できなかったのだろうと勝手に片づける。
北条が士が口にした"アギト"という単語に反応を示す。

「やはり、アギトもその仮面ライダーというものに入るのですね」

「そうですけど、それがどうか?」

「いえ……失言でした、流してください」

ユウスケの問いにうっかりしてしまったという表情をしながら北条は一条の人へ話を促した。
一条は士達へ向けてあることを告げる。

「君達の事情はある程度分かった。だが、ネオライダーとは極力関わらないほうがいい」

「どういうことだ、それは」

一条の言い放った言葉に反応したのは黒鋼だった。
黒鋼に対して、一条は話を続ける。

「未確認生命体と結託し、さらには我々の見たこともない武装で暴れまわっている……はっきり言って、我々警察では対処しきれない」

「確かにねぇ、あちらさんも仮面ライダーに変身しているし……」

「だから俺達をこっちへ引き入れる、もしくはアイツらに抱きこまれて先を越されない様に釘を刺しに言いに来たってわけか?」

ファイと黒鋼の言葉を聞いて、スーツ姿の男たちは口を閉じる。
一触即発の剣呑な雰囲気が漂い始めた中、一人の人物が慌ただしく入ってくる。
一見すれば中学生にも見える女性警官……夏目と呼ばれた彼女は一条に対して焦った様子で要件を言い始めた。

「一条さん、大変です!頼打地区にてまた未確認です!!」

「なんだと!?夏目、準備を!」

一条をはじめとしたスーツの男たちは椅子から立ち上がり、あわただしい様子で出ていく。
未確認……恐らくは怪人が出たのだと判断した士達は自分達も向かおうとする。
その際に北条に呼び止められる。

「待ちなさい。もしかしなくても貴方達も行くんですよね?」

「そりゃまあ、聞いた以上は見過ごしておけないからな」

「はぁ……なんでこんな人たちがアギトのような人達なんでしょうね。ついてきなさい、警察車両で現場まで送ります」

士の言葉を聞いて、渋い顔をしながら五人を案内する。
何故彼があんな顔をしたのか不思議がる一同は彼についていった。

 
 

 
後書き
 書いていたら溜まっていた、大体5000字前後の目安で書いてます。地水です。

士と黒鋼が出会ったのは、とある警察官。
そう、ライダーでなくても戦ったあのレジェンド。
クウガ/五代雄介と共に戦った一条薫!満を持して登場!
さらには警視庁にてクウガの夏目実加ちゃん、アギトの北条透も登場!
怒涛のレジェンド登場で我ながら凄いですわ。


今回の話の主題は「警察におけるライダー達の立ち位置」。
ただでさえ怪人で手一杯なのに、怪人と結託する仮面ライダー達ネオライダーがいるため、警察は大変でしょう。
そんな中現れたのはディケクロ組一行。ネオライダーと敵対する彼らは警察勢力にとってどう目に映るのか。

次回、一条さん共闘するの巻 
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