新オズのかかし
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第五幕その八
「お嬢様は何も思っておられません」
「ほんの一瞬のことでした」
セーラは微笑んで言いました。
「あの時のことは」
「そうなんだね」
「ですからもうです」
「忘れたんだね」
「忘れていませんがほんの一瞬のです」
そうしたというのです。
「出来事だったとです」
「思っているんだ」
「小さなことだと」
「大変だったのに」
臆病ライオンはセーラのお話を聞いて考えろお顔で言いました。
「そう言うなんてね」
「凄いね」
トトも言いました。
「本当にね」
「そうだよね」
「セーラは凄い人だよ」
「器が大きいね」
「まさにプリンセスだね」
「一国の主に相応しいよ」
「そのセーラと比べて」
ジャックも言いました。
「ミンチン先生っていう人は随分器が小さかったんだね」
「そしてどうもね」
かかしがここでこう言いました。
「先生と言うからには教師だね」
「学院っていうしね」
「それも立場ある」
「学院長さんかな」
「そうでした」
ベッキーが答えました。
「あの人は」
「やっぱりそうだったんだ」
「はい、ですが」
ベッキーはジャックに答えました。
「皆さんが仰る通りにです」
「器が小さかったんだ」
「そしてお嬢様はあの学院にはです」
「そこにはだね」
「おられるにはあまりにも賢過ぎました」
「そうだったんだ」
「少なくともミンチン先生にはです」
その人にはというのです。
「あまりにもです」
「賢過ぎたんだ」
「そうでした、ですから」
それでというのです。
「お嬢様は結果として学院を出られ」
「インドに戻ったんだね」
「そして再び幸せになりました」
「そうなんだね」
「全てはです」
まさにというのです、ラメダスは言いました。
「そうなるべくしてです」
「なったね」
かかしが応えました。
「まことに」
「はい、お嬢様の聡明さと人格を考えますと」
「ミンチン先生はどうしてもね」
「そのどちらもです」
「セーラ嬢には及ばないね」
「遥かにですね」
「だからね」
それでというのです。
「まさにそうなるべくしてね」
「お嬢様は幸せを取り戻せました」
「そうだね」
「そしてロンドンのことは一瞬で」
ドロシーも言いました。
ページ上へ戻る