九月のことについての反省
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第一章
九月のことについての反省
根室千佳はクライマックスファイナルで邪悪の権化読売ジャイアンツが横浜DENAベイスターズから正義の鉄槌を受けたのを観て言った。
「ベイスターズよくやったわね」
「そうだな」
一緒に観ていて兄の寿も言った。
「阪神にも勝ったしな」
「クライマックスあっさり勝ったわね」
「何もなく連敗したな」
「そうね」
妹は兄に冷めた声で応えた。
「本当に」
「いや、岡田さんの花道は日本一と思ったら」
「適わなかったわね」
「これも人生か」
「そうなるわね」
「ああ、しかしな」
兄は妹にさらに言った。
「僕は優勝カープと思っていたんだ」
「そうだったの」
「阪神じゃないとな」
「阪神連覇するつもりだったでしょ」
「それがな」
そう思っていたのがというのだ。
「二位でな」
「二位?いいじゃない」
妹の返事はこれまた冷めたものだった。
「うち四位よ」
「カープはな」
「全く。私は優勝間違いなしってね」
その様にというのだ。
「確信してたのよ」
「僕は八月までやられたと思っていたよ」
「今年のペナントはカープだって」
「危ないってな」
阪神の連覇はというのだ。
「思っていたよ」
「そうなのね」
「それがな」
「知っての通りよ」
これが妹の返事だった。
「もうね」
「八月が終わってな」
「九月になったらね」
「カープ失速したな」
「失速も失速で」
実に苦い顔で言い切った。
「歴史的なね」
「大失速だったな」
「五勝二十敗よ」
広島東洋カープの二〇二四年九月の成績はというのだ。
「首位のチームがここまで負けるなんてよ」
「前代未聞だよな」
「一ヶ月の敗戦数で」
それでというのだ。
「セリーグタイ記録だったのよ」
「壮絶だな」
「いや、私だってね」
千佳はさらに言った。
「ここまで負けるなんて」
「想像もしていなくて」
「ホークスとシリーズ戦うとか」
「考えていたんだな」
「そうよ、日本ハムかもとか思ったりもしたけれど」
シリーズで戦う相手はというのだ。
「それがよ」
「それだけ負けてな」
「何か統計を破壊したとか」
「そこまで負けたな」
「有り得ない位ね」
そう言っていいまでにというのだ。
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