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オート三輪と白黒テレビ

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第二章

「とてもね」
「何であんなの乗ってたか」
「それしかなかったにしても」
「ちょっとね」
 こう言うのだった、そしてだった。
 白黒テレビについてもだ、否定的だった。
「ちょっとね」
「今は観られないわ」
「昔はそれだけしかなかったにしても」
「やっぱりカラーじゃないと」
「スマホだってそうだし」
「白黒なんてね」
 それこそというのだ。
「真空管だから観られるまで時間がかかるし」
「しかも画面小さいし」
「おまけに重いし」
「今はないわ」
 白黒テレビもというのだ。
「とてもね」
「そもそも今テレビあまり観ないし」
「番組面白くないから」
「そのこともあるし」
 それでというのだ。
「テレビ自体あまりないし」
「白黒はもっと」
 こうしたことを言うのだった、兎角だった。
 孫達にとってはオート三輪も白黒テレビも昔のもので今は有り得ない載ることも見ることもだった、彼等から直接言われてだ。
 それでだ、幸一も雅之も言った。二人で飲みながら話した。
「やっぱり言ったな、有り得ないって」
「今の子達から見ればそうだな」
「わし等の頃は嬉しかったけどな」
「オート三輪に乗れてな」
「そして白黒テレビを見れて」
「親父がコツコツ貯金して何とか買って」
「それでだったしな」
 どちらもというのだ。
「冷蔵庫も洗濯機もなくて」
「今はどの家にあってもな」
「そんな時代だったからな」
「わし等が子供の頃は」
「時代は変わったよ」
「そもそも親父戦争に行ってたしな」
 二次大戦にというのだ。
「あの頃は戦争から帰った人も多くて」
「お袋だって防空壕に入ってた」
「そうだったしな」
「その戦争も終わってな」
「あの戦争を実際に知らない人ばかりだ」
「わし等だって知らないしな」
 そもそも自分達もというのだ。
「そう考えるとな」
「時代は変わったしな」
「オート三輪も白黒テレビもな」
「今の若い子達にしてみるとな」
「有り得ないな」
「電気自動車とか水素自動車とか言ってて」
 乗るものはというのだ。
「テレビどころかスマホだ」
「そうした時代になった」
「じゃあもうな」
「オーと三輪も白黒テレビもな」
「化石みたいなものだな」
 二人は今は紅茶を飲みながら話した、マカロンも食べて。その時は家にはなかったものを楽しんでいた。そうして過去のことを話していた。その顔は懐かしさを感じる笑顔であった。


オート三輪と白黒テレビ   完


                  2024・7・11 
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