神々の塔
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第八十六話 たらし達その八
「明るくて剽軽で気さくで」
「頭の回転早くて教養もあって」
「行動力の塊で人たらしで」
「しかも慎重って凄いね」
「ああ、ほんま痛快や」
伊藤博文という人物はというのだ。
「見ていて楽しいな」
「そんな人やね」
「その人と戦いと思うと」
それならというのだ。
「おもろいな」
「そやね」
綾乃も確かにと頷いた、それも笑顔で。
「ちょっと聞いただけやと襲われると思うけど」
「そんなことは絶対にせんかったわ」
「そんな人やね」
「そやから尚更魅力的なんや」
「個人的にお友達になりたい人やわ」
綾乃は自分の考えも話した。
「彼氏さんにはちょっと、やけど」
「浮気するからやな」
「というか浮気が」
それがというのだ。
「浮気やなかったからな」
「その頃は」
「それを言うてもな」
その桁外れの女好きをというのだ。
「しゃあないわ」
「そやね」
「山縣さんはそうした話ないけどな」
「女の人のお話ないね」
「確かにお妾さんはいてはった」
山縣にもというのだ。
「けどそれは当時やとな」
「普通やったね」
「ちょっと立場のある人は」
シェリルは何でもないといった口調で述べた。
「お妾さんいてはったな」
「そやったわ」
綾乃もその通りだと答えた。
「当時は」
「そやな」
「むしろそうせんと」
妾の存在を認めないと、というのだ。
「行かず後家の人が増えてはった」
「そやったな」
「当時が医学がまだ未熟で」
綾乃は当時の医学のことから話した。
「子供さんよお亡くなったわ」
「男の子の方がな」
「男の子の方が身体弱いから」
「よお死んでな」
「それは大人になってもで」
「必然的に女の人が多くなる」
「そうなるさかい」
だからだというのだ。
「お妾さんにならんと」
「行かずの人が多くなってた」
「当時それは絶対にあかんかったし」
「女の人の仕事も今よりずっと少なかったしな」
「そやから」
そのこともあってというのだ。
「お妾さんになって」
「そうして暮らして」
「お子さんもうけてたね」
「それがええか悪いか別にしてな」
「そうした状況やったってことやね」
「当時はな」
「そやね」
「日本だけやなくてな」
シェリルはさらに話した。
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