リップクリームは
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第一章
リップクリームは
冬になった、それでだ。
「乾燥するわね」
「この季節はね」
こうした話が寒さの話と共に出ていた、それは高校生の佐藤日和も同じだった。長い黒髪をポニーテールにしていて面長で赤い唇と大きな二重の目と大きな耳を持っている。背は一六三位でスタイルはかなりいい。
「唇がね」
「乾くわね」
クラスメイトで同じバレー部の高橋真理子も言った、セミロングの黒髪できりっとした貌で目は小さい。背は一五八位で脚が奇麗で長い。
「どうしてもね」
「冬はね」
「だからね」
真理子はクラスで日和に言った。
「リップクリームがね」
「欠かせないわね」
「そうそう、付けないとね」
リップクリームをというのだ。
「どうしてもね」
「荒れてね」
「割れてね」
「痛い思いもするわ」
「そうよね」
「お洒落じゃなくて」
真理子ははっきりと言った。
「自分を守る」
「その為のものよね」
「リップクリームはね」
「本当にそうよね」
「何かね」
ここで真理子は嫌そうに話した。
「軟弱とかね」
「軟弱?」
「そう、リップクリーム付けるのはね」
今自分達が話していることはというのだ。
「軟弱ってね」
「何それ」
即座にだ、日和はこう返した。
「軟弱って」
「だから唇が割れるからってね」
「何だっていうの」
「そう、それでね」
そうした考えでというのだ。
「リップクリーム塗るなってね」
「言う人いるの」
「そうなのよ」
これがというのだ。
「どうもね」
「そうなのね」
「あんたはそんな考えないでしょ」
「ある訳ないじゃない」
「ほら、体育教師の喜代原」
真理子はその名前を出した。
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