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金木犀の許嫁

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第三十七話 織田作好みのカレーその九

「元々ね」
「二つなんだ」
「そうだからね」 
 それ故にというのだ。
「一人で行っても」
「夫婦だね」
「あのお店はね」
「それは面白いね」 
 佐京はそう言われて微笑んで応えた。
「それはまた」
「そうよね、けれど今はね」
「二人で行くね」
「まだ夫婦じゃないけれどね」
「夫婦善哉だね」
「そうなるわ」
 こう言うのだった。
「私達はね」
「面白いね。それじゃあ」
「ええ、鰻の次はね」
「善哉よ」
「デザートになるね」
「そうね、和風のね」
「素敵なデザートだね」
「これ以上はないものだと思うわ」
 二人で話してそうしてだった。
 いづも屋での勘定を終えると次は法善寺横丁に向かった、今も大阪の街を歩いているがここでだった。
 佐京は夜空に顔を向けてだ、彼女に言った。
「そう言えば夫婦善哉の主人公って」
「柳吉さんね」
 夜空は彼に顔を向けて応えた。
「あの人ね」
「うん、結構だらしない人だよね」
「頼りなくてね」
 夜空はこの要素も言い加えた。
「元々浮気だしね」
「ヒロインの人とは」
「蝶子さんともね」
「それで一緒になって」
「むしろ奥さんがしっかりしていて」
 蝶子の方がというのだ。
「柳吉さんはね」
「頼りないんだ」
「遊んでね」 
 作中のことも話した。
「散在して奥さんに掴みかかられたり」
「そんなこともあったんだ」
「商売をしてもね」
 何度も店を替えてやっていっているのだ。
「奥さんが頑張って」
「旦那さんは頼りないんだ」
「そうなのよ」
「そうなんだね」
「どうも奥さんは織田作さんのお姉さんで」
 彼の二番目の姉がモデルだったと言われている。
「柳吉さんはね」
「織田作さんかな」
「そんな風なのよね」
「そうなんだ」
「織田作さんそのお姉さんに大事にされていて」
 そうであってというのだ。
「慕っていたそうだから」
「それでヒロインにしたんだ」
「他の作品でもモデルになっているみたいだし」
 それでというのだ。 
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