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金木犀の許嫁

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第三十六話 織田作之助の街その十三

「考えて」
「お店に出したんだ」
「そうらしいのよ」
「そうなんだ」
「自由軒のカレーも同じだけれど」
「冷えない様にだね」
「考えられてね」
 そうしてというのだ。
「出されたらしいのよ」
「そうなんだ」
「そう、そしてね」
 夜空は微笑んで話を続けた。
「ずっとあの辺りの名物の一つで」
「千日前の方の」
「今は船場の方で」
 そちらでというのだ。
「お店があるから」
「そちらに行くんだね」
「最初はね」
 夜空は今度は店を巡る順番の話をした。
「千日前に行きましょう」
「自由軒だね」
「あちらに行って」
 そうしてというのだ。
「カレーを食べて」
「その後船場に行って」
「今度は鰻丼食べて」 
「最後に法善寺横丁に行って」
「善哉食べましょう」
「そうしようね」
「問題は食べられるかどうかね」
「カレーに鰻丼に善哉に」
「三つになるとね」
 食べるものがというのだ。
「相当な量だからね」
「そこは心配だね」
「ええ、けれどまずはね」
「行こうね」
「難波にね」 
 ここでは千日前も船場も法善寺横丁も一纏めにして難波と言った、そうして二人は楞厳寺を後にして難波に向かうが。
 地下鉄に再び乗ってだ、佐京は言った。
「戦争前は地下鉄あったね」
「昭和八年開通だから」
「じゃあ織田作さんの頃にはあったね」
「御堂筋線が開通してね」 
 それからというのだ。
「どんどんね」
「開通していったね」
「そうなのよ」
「地下鉄の歴史も長いね」
「そうよね、それで結構路線がね」
 夜空はこちらの話をした。
「八つもあってね」
「複雑だよね」
「そうなのよね、けれど東京から来た子に聞いたら」
「東京は遥かに凄いんだよね」
「もう迷路みたいだってね」
 路線の状況がというのだ。
「言ってたわ」
「あそこは遥かにだね」
「日本は鉄道が発達しているので世界的に有名だけれど」
「東京は特にだよね」
「山手線があってね」
 そうしてというのだ。 
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