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金木犀の許嫁

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第三十六話 織田作之助の街その十二

「凄くて」
「天才って言われるわね」
「凄い逸話が多くて」 
 伝説の様なものまで含めてだ。
「それでね」
「まだ生きておられる」
「そうも言われていて」
 それでというのだ。
「俺もね」
「そう思ってるのね」
「そうなんだ」 
 こう夜空に話した。
「そうした場所に行って」
「お墓も」
「悪い印象はないよ。ここもね」
「そうなのね」
「むしろ織田作さんがここにおられて」 
 そうしてというのだ。
「ここから大阪のあちこちに行ってるってね」
「そう思ったら」
「いい場所だって」
 その様にというのだ。
「思うよ」
「そうなのね」
「またここにもね」
「来ましょう」
「二人でね」
「ええ、絶対にね」
 夜空は笑顔で約束した。
「そうしましょう」
「そうだね、あとね」
「あと?」
「これからだけれど」
 こうもだ、彼は言った。
「いよいよだね」
「難波ね」
「あそこに行くね」
「ええ」
 夜空はまた笑顔で答えた。
「そうしましょう」
「地下鉄を使って」
「そうして」
 そのうえでというのだ。
「すぐにね」
「あっちに行くね」
「そしてね」 
 そのうえでというのだ。
「カレーに善哉をね」
「食べるね」
「そしてね」
 夜空はさらに言った。
「よかったら鰻もね」
「食べるね」
「そうしましょう」
「鰻丼だね」
 その鰻についてだ、佐京は尋ねた。
「それを食べるんだね」
「そう、今もそうかはわからないけれど」
 夜空は尋ねてきた許嫁に微笑んで話した。
「鰻がご飯の中にある」
「あの鰻丼だね」
「それをね」
「食べるんだね」
「このやり方も」 
 極めて独特なそれもというのだ、何しろこの鰻丼は大阪の鰻丼の中でも特に話題になる程有名であったのだ。
「鰻が冷めない様にね」
「温かいご飯で覆ったんだ」
「それでお客さんに美味しく食べてもらう為に」
 このことを考えてというのだ。 
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