同志諸君に告げる。これが理不尽だ!
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第17話
前書き
サイト管理者です。第17話「アンドロメダ就役式典」になります。
どうぞ、ご覧ください。
雲一つない青く晴れ渡った空に花火が十数発打ち上げられる中、開会の挨拶に地球連邦大統領のスピーチが始まった。
『全世界の皆さん…私は、地球連邦政府初代大統領として、今日此処に最新鋭艦アンドロメダ級の完成を、報告する者であります!。宇宙の平和、それをもたらし、それを守る力となるのは我が地球とガミラス、ミドガルドの同盟であります!その重責を担うシンボルとして、既に一番艦であるアンドロメダは―――』
まさに壮観である。地球としては初の大型戦艦の進宙式であり――2番艦〜5番艦のアンドロメダ級4隻。これ以上ない華々しくも晴れやかな祭典は、地球連邦の影響力を及ぼす範囲全てに渡り生中継されている。
誰もが気持ちを高揚させ、嬉しくなってしまう。時折、カメラは貴賓席の様子にもクローズアップをし、居並ぶお歴々──いわゆるVIPの姿が画面いっぱいに映し出される。ちなみにこの式典、地球勢力圏の外れ、太陽系外縁部・地球防衛の最前線にいる者達もまた食い入るように見ている。
大統領が立つ演説台から一段下(数m下)の段に貴賓席があり、そこは軍需産業部門オブザーバーがおり、現在はカメラで映されている。
オブザーバーは地球、ガミラス、ミドガルド数人がおり皆、歴を重ねている風貌だが、ミドガルドオブザーバーは誰よりも若かった。
ヘッドギアが特徴的である銀髪の女性は20代ちょうどであるが、能力に置いては他オブザーバーはおろか、特に地球政府は一目置いている存在であることは、ミドガルド側を除き上層部でも一部のみしか知らないことだ。
まぁ、若さという点に関しては彼女だけでは無く、ミドガルド全員にも言えることだろう。
カメラは次にオブザーバーからー個下の段に位置する貴賓席に座る者達を映す。
中央の席には軍部を代表する芹沢虎鉄が座り、左には地球連邦防衛軍統括司令長官の藤堂平九郎が座る。芹沢側にはガミラス大使であるローレン・バレル大使が座り、藤堂側にはミドガルド大使のイザベラ・ファレストが座っている。
ガミラス、ミドガルド大使の隣にはガミラス特有の蒼き肌を持つ青年と地球人と同じ肌を持つ黒髪の若い女性が控えるように座っている。
対外的には無名だが、あの席に座を占めるのだ。両名は美貌だけでなく、何かしらの重責を担っているのだろう。 イザベラ大使も美貌の持ち主。
藤堂、芹沢、両大使は何やら言葉を交わしているように見える。まぁ、真正面を向いてであるが。いったい何を話しているのだろうか…。
「何故、生存者が居ることを教えてくれなかったのですか?ガトランティスの兵士は、肉体に所定の処置を施さねば自爆する。そのように創られているのです。我々に一報してくだされば…」
バレル大使は芹沢と藤堂を横目で見た後、イザベラ大使と上に居るミドガルドオブザーバーにもチラッと見るが、直ぐ真正面に戻る。
「お言葉ですが、今更、重要な情報を開示されるのはどうも…」
「…芹沢副長。それは我々ガミラスの落ち度であると?」
「せめて共同作戦の実施前に…」「過去に不幸な行き違いはありましたが、今では地球とガミラスは同盟国。対等なパートナーであると信じております」
昨日の敵は、今日の友とは言うもののまだ三年。いや、もう三年であろうか?だがそれでも複雑な気持ちは両者ともある。…ミドガルドを除いて。
大統領のスピーチが終わったのか、観客からの拍手喝采が会場を広がりを見せて、やがて紐で吊るされたシャンパンが新造艦の左舷にある波動砲の発射口にぶつけられ、瓶が割れたと同時に久寿玉が割られた。
「今の地球の人口は当時の三分の一にも満たない。デスラー体制の崩壊により、国が乱れていようと、ガミラスがその気になれば、侵略するのは容易です。無論、もうそのようなことは起きないでしょうが…」
「藤堂長官、疑心暗鬼という言葉は我々ガミラスにもありますよ。危険な火遊びであると、忠告させていただきます。恩人であるイスカンダルの約束を反故にしてまで…」
「そう、あれは一宇宙戦艦艦長の沖田十三がした口約束です。条約でも無いし、地球の意思でもありません」
バレル大使が言ったことを芹沢は一蹴する。
藤堂は顔をそむけた。思うところが無い訳じゃない。分かっているのだ。だがそれは地球の為に必要なことなのだ。
「その通りです。今の地球には必要なこと。ガミラスを退けたとはいえ、未だ地球は脅威の渦の中に居ます。数多の脅威から身を守る為にも、地球政府が推し進めるこの政策は必要不可欠なことなのです」
今まで口を閉ざしていたミドガルド大使であるイザベラの声に藤堂、芹沢、バレル大使と金髪の青年は耳を傾けた。容姿はうら若い銀髪の女性であるが、真っ直ぐな眼差し、表情、雰囲気、態度は歴戦の猛者のように力強く感じられた。
(必要なこと、か)
バレル大使は心の中でそう呟きながら、真下に居るアンドロメダ級に視線を向ける。ガントリーロックが外された新造艦アンドロメダ級4隻はレールにそって急速に進み、やがては直角90度のレールに沿って空へと舞い上がってあった。
一同が再び凝視する中、空高く昇って行くアンドロメダ級2番〜5番艦の4隻は市民の大歓声の中、式典上空にワームホールを形成させて、式典を後にした。
こうして様々な思惑が入り乱れる中、進宙式は終了した。
〜〜ミドガルド 駐地球大使館〜〜
〈イザベラSIDE〉
「いや〜、やはり未来の地球は凄いよ。宇宙戦艦アンドロメダは迫力満載だったね!」
「えぇ、そうね。でも私はやっぱり、ヤマトの方が良いかしら?ヤマト級は至福…」
私達は進宙式から我がミドガルドの大使館に戻り、向かい合うようにして執務室のソファーに座り、団欒を楽しんでいる。ちなみに大使館は、日本に置く地球連邦防衛軍総司令部から割と近い場所だ。
そして今ユリアが「未来の地球」っと言ったけど理由としては私達が元居た世界と同じの歴史を辿っていたから。だからこそ私達はこの地球を未来の世界だと確信をしている。でも不思議なことに、WSOゲーム無かったけど…。
そんな現在居る未来の世界はガミラスによって「サヨナラ♪」(意味深)寸前だったけど、それは3年前の事。現在地球暦2202は復興真っ最中。だからこそか、WSOゲームが歴史から消えたのも仕方が無いのかもしれないわね。
う〜んでも、太陽系に第11番惑星なんて私の記憶が確かなら無かった筈なのだけれど。まぁ、その事は一先ず頭の片隅に置いて起きましょう。
「そういえばイザベラ。確か進宙したアンドロメダ級達って木星から離れた宙域で演習するんだったよね?アンドロメダ級アンドロメダも一緒に。後は、え〜と何だったかな?」
「初期生産された14隻のドレッドノート級前衛航宙戦艦、よ」
「それだよ、それ!いやぁ、あのスペックで量産型って言うのは色々と凄いよね」
「そうね、貴女が身震いしているのも面白いわ。ちょっと引くけど…」
全くね。ガミラスのガイデロール級二等航宙戦艦をベースに造られているのと、なおかつヤマトの戦闘データなどを反映したことから、姿形は異なれどもヤマトの簡易版とも言うべき戦闘艦。
新開発された収束圧縮型衝撃波砲を30.5㎝口径9門装備する他、数多くの兵器をその艦体に装備している為、見た目以上に重武装。なおかつ波動砲が標準装備されているのにも関わらず、量産型とは…末恐ろしいわね。流石母なる地球。
「突然だけど、ガトランティス兵って人造人間だそうね」
「本当に突然だね。まぁ、そうみたいだね。まさか自分達ミドガルド以外にも人造人間を創り出せているとは…」
強靭な肉体も持ち、自分の意思で自爆させることも出来るなんて、私達にはとても無理だわ。技術面での意味では無いけどね。
「…話は変わるのだけれど、地球に特攻したカラクルム級事件の際に起きた通信障害の件があったのどうなっているの?」
ユリアはチャラけた態度から一瞬に真面目な表情へと切り替わった。
「…未だ分かっていないよ。ただ、白色彗星からほぼ同方向から地球に向けられたってことしか分かっていないんだから」
「白色彗星?」
「未知のクエーサーとも言うね。白色彗星は地球に向けて限り無く光速で向かっているけど計算では何万年も先の話…。まぁ、それより、コレを見て貰いたい」
ユリアはタブレット端末を私に渡してきた。それを受け取り、画面を見る。
「これは…」
「オリビアと同じ似姿をしたNPCが乗ったヤマトだ。そして今見てもらっているのは、元ヤマトの乗組員達」
何故、元ヤマトの乗組員だけなのかしら?
「疑問に思っている顔だね。その元ヤマトの乗組員だけが幻影を…太陽系全域に通信障害が発せられた最中に幻影を見た。知人、あるいは親しかった家族を、ね。そして幻影はこう言ったそうだよ。…ヤマトに乗れっとね」
なんでヤマトに乗る必要があるのかしら?それにこの事は…、
「…この事は私達の故郷、地球の政府は知っているの?」
「正解だ。寧ろ勘づいてもいるよ。そしてそれは我がミドガルドの七大ギルド統治者と最高指導者、いやギルド長も知っている。そもそもこの件の調査が始まったのはギルド長直々の指示だよ?はぁ、ギルド長直々ってそれってさ…」
セブンス・デイビターズ…通称、七大ギルド統治者は名前の通り、ミドガルドギルドを統治する存在。彼女等はミドガルドギルドで最も貢献している者達の集まりであり、そしてギルド長から統治者の称号を下賜されている。
その内の2人はステラとオリビアだ。
最高指導者=ギルド長はWSOプレイヤーのギルドにとっても最上官に当たり、ミドガルドギルドの創始者である人物。彼女は謎を呼ぶ存在であり、素性は謎に包まれていて分からない。
クローン軍団の創設に関しても、七大ギルド統治者主導によるものってなっているけれど、それ自体に間違いは無い。…が、実際のところはギルド長が案を出して、七大ギルド統治者へ案を渡したとも言われている。
七大ギルド統治者はギルド長の代理人…。
そのような存在の統治者達でさえ、ギルド長の素性を知るのは統治者達の中でも限られている。
事は重大、なのね…。
「まぁ、何がどうあれ、調査は継続する。変更しないし決定事項でもある」
そうね。はぁ、胃がキリキリするのは何故なの?まさかこの地球に向けられたエネルギー波は「危機が迫っています。頼りなのです」とメッセージを地球に向けているもので…。
一方の白色彗星は「滅ぼすから♪」の合図で、地球の危機に直面して関係しているってことは考え過ぎだわね。はぁ〜、でも考えると何故か胃が痛い。もの凄〜いキリキリする。
私はユリアとの団欒が終わった後、大使としての仕事をやっていくのであった。胃薬を忘れず飲んで…。
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