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バイオハザードなんてクソくらえ!【未完】

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第8話「もしや彼女は…」「あ、しまった…」

 ゼノビアは鉄扉の右脇にあるタッチパネルに手をやり、暗証番号を入力し部屋へと入った。入った部屋には地上で捕らえたアンデッドがおり、捕らえる前の服装はジャージであったのが拘束衣となっていた。
 
 ゼノビアはアンデッドに歩み寄り、アンデッドの首の後ろ辺りに前以って準備していた装置に、螺旋状に試験管サイズの容器を埋め込んだ。

 その後、装置を使って3本針の注射を打つ。螺旋状にあった青い”何か”がほんの少しの時間で直ぐに中身が空となった。

 「よし、ワクチンを打ったぞ。暴れな…こ、こら暴れるな!」

 青いワクチンを打たれたアンデットは暴れてゼノビアに襲いかか…ることは無く、しっかりと拘束されている為、暴れようにも暴れることは出来ないでいた。

 「あぁ、良かった。死ぬかと思った」

 数十秒後、アンデッドはぴたっと静かとなり、真っ黒な瞳をゼノビアに向けた。

 「よし、では実験を始めようか」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 第3.5話 「もしや彼女は…」
 
 ガラス張りの部屋の中で、アンディ・ティムソンは椅子に座るアンデットを憂鬱な気持ちで見つめていた。

 ゼノビアが新しい研究の為に地上に出て、外に居るアンデットの群れの1体を連れ込んだのはアンディは知っている。そしてこのアンデットには名前が名付けられており、その名もグロッキーと名付けられたのも知っている。

 名付けたのはアンディの上司でありこの支部のボスでもあるゼノビア。アンディは理由を聞こうとしていたが現在ではすっかりと忘れていた。

 グロッキーの前にはテーブルがあり、デジタルカメラに携帯電話、正しい穴に正しいブロックを入れる玩具が置いてある。

 驚いた事にグロッキーは非情に大人しく、真っ黒に覆われた瞳をじっとテーブルの上に置かれている物を見つめていた。

 それはゼノビア、アンディ、ムンディの生きた人間が居るのに、だ。ただ静かに座り、置かれている物を見つめている。

 だが一応、念の為に手首には拘束具と鎖があり、繋がれた鎖はグロッキーが座る下の床に繋がっているが、ある程度の自由が出来るよう鎖は緩めになっていた。
 
 グロッキーは何か考えているような表情を浮かべているように感じられたが、グロッキーは3つある内のどれかを選ぶ仕草をし、ようやくグロッキーは腐りかけた手をテーブルに置かれている物の一つを取った。もっともその腐りかけた手には黒手袋が装着されている。

 グロッキーが取ったのは携帯電話であった。グロッキーは数秒眺めた後、携帯電話をパチっと開いてそれから3人に見せるように、顔を上げて耳に当てた。

 「驚いたな。何なのか分かってる…!」

 「あぁ、凄いな。きっと生きていた記憶が残っているに違いない…!」

 「…」
 
 アンディ、ムンディは驚きの声を隠せずいた。ゼノビアも声こそは出していなかったが表情においては、2人と同じ驚きのソレであり、次に笑みを静かに浮かべた。

 グロッキーは数十秒、耳に当てている携帯電話をテーブルに置いた。

 ゼノビアは頷き、テーブルに置いてある小型のデジタルカメラを手に取り、グロッキーに歩み寄る。

 「カメラだ。使ってみて」

 ゼノビアは笑みを崩さず、手渡す。グロッキーはゼノビアへ手を伸ばし、そっと受け取った。

 アンディとムンディはゼノビアよりももっと酷い…酷いなんて済まない程のボスをかつて持っていたことを今のボスである、容姿が整い過ぎている女性ゼノビアをチラッと見ながら思い出していた。

 自分達よりも二回りは下回るであろう年齢のこの女性科学者ゼノビアだが少なくとも、ゼノビアは変わっている環境に順応している。

 ゼノビアは規則を守ろうとしているが、同時に此処で暮らしている社員がストレス発散する必要性も理解していた。このような恐ろしい状況下では必要不可欠であることも。

 ゼノビアは彼等がお互いを冷やかししたりからかったり、大概の時は馬鹿げた振る舞いをしていても、仕事をこなしている限り、何も言わなかった。

 アンディとムンディはゼノビアの意を汲み、彼女の目の前では出来るだけ冗談は控えていた。それが彼等が出来るせめてもの心遣い。

 勿論、ゼノビアが実際のところどれほど気にかけているのか分かったことは一度も無い。ゼノビアは常に無関心であったからだ。それがこの世界を生きていく彼女の対処法なのかもしれない…。

 アンディとムンディは気持ちを切り替えて、グロッキーが今していることを見つめた。グロッキーは手に取ったカメラをゼノビア達に向けて構えようとするが勢いよくカメラを上げて向けていた為、アンディとムンディは驚き、そして恐怖へと変わった。

 彼等は一歩、後ずさる。ゼノビアはその様子を見て静かに叱った。

 ウィーンっという音と共にレンズのキャップが開き、写真を取ったであろう音が鳴った。グロッキーは撮った写真をゼノビア達に向けた。

 「なんてこった!」
 
 「信じられない…!」

 グロッキーはカメラを下ろし、テーブルに置いて戻す。

 「アンディ、その玩具をグロッキーへ」

 ゼノビアから言われたことにアンディは頷き、玩具を差し出しすようにグロッキーの前に移動させる。アンディはグロッキーが見つめている玩具を見てまた一つ思い出したことがあった。それはあの玩具は警備員であるハンバーグが持っていた物であり、…今は居ない亡き息子へのプレゼントでもあったことを。

 この地下施設にやってきた時も彼は肌身離さず持っていた。この実験の際、それが必要であるとアンディはハンバーグに言った。最初は諦めなかったが「役に立つなら…」と最後は承知した。

 (役に立つとも…これは治療薬への最初のステップなのだから)

 グロッキーは正しい穴に正しい形をブロックを1個入れ、次々と入れていく。それを見て、ムンディは「器用さ…記憶、推理能力。それから〜…」と呟きながらクリップボードに挟んでいる紙にボールペンを走らせた。

 「き、奇跡だ…。血清の効果が効いた…。やりましたねゼノビア博士。おめでとうございます!」

 クリップボードに書くことに熱中していたムンディも彼に続いて同じようにそう言った。

 アンディは上機嫌となってゼノビアに話しかけた。

 「…そのようだな」

 彼女は横目でアンディを見て同意した。しかし何やら声音が沈んでいるのは何故だろうとアンディは思った。

 アンディはゼノビアが沈んだ声音を出している理由が分かった。それは三角形のブロックを丸の中に入れようとしていたからだ。グロッキーは何やら苦戦しているようだ。

 だがゼノビアは何を思ったのか一歩、二歩と後ろに下がった。そのゼノビアの様子を2人は見ていないその時、異変は起きた…。

 「…ん?何だ?!」

 グロッキーは突然、三角形のブロックを土台に叩くように打ち始めた。力は増していき、やがてはその馬鹿力で土台を含む玩具は崩れた。

 アンディとムンディはたじろいだ。特にアンディは倍以上にたじろいだ。それは内心で彼の息子の形見には何も行らないと約束したことに…。

 グロッキーは拘束を解き、怒りの咆哮を放ちながら崩れた土台を放り投げた。グロッキーは自身の隣に居たムンディを襲い、首を噛み千切る。ムンディは悲鳴を上げ、少しして事切れた。

 アンディはまるで石になったような気がした。動くことも息をすることも出来ず、ただ其処に立って…。

 アンディは精いっぱいの努力をして、ゼノビアに振り向いた。ゼノビアはガラス製の一対のドアに歩み寄り──出て行って流れるように後ろ手でドアを閉めた。

 「…!?」

 アンディは駆け寄るが既に鍵が掛かっていた。

 「ゼノビア博士ッ。待ってくださいッ!。ドアを開けてッ!お願いします!!。どうか…!?」

 アンディは見た。彼が見たのは、震えることも慌てる素振りすら無く、冷静沈着に観察するゼノビアの顔だった。
 
 (クソ…ッ)
 
 ゼノビアは職員の大変さを理解して、際どい冗談を我慢していたのでは無い。アンディはグロッキーとはもはや呼びたくも無いアンデットに捕まる前に、それに気づいた。

 だがアンディにはもう、どうでも良かった…。

 第4.0話 「あ、しまった…」

 はぁ〜、この実験の為に必要とはいえ、アンデットと一緒の部屋にって心臓が怖いぐらいビクビクするぞ。もし、この部屋に一人だったらと思うともうヤバい。言葉に表すことが出来ないぐらいヤバい。

 ヤバいがこの部屋には私一人では無く、アンディとムンディ一緒ということを考えると本当に安心出来る。心の余裕も持てる。

 この部屋にはテーブルがあり、正しい穴に正しいデジタルカメラに携帯電話、正しい穴に正しいブロックを入れる玩具が置いてある。

 そして私達の向かい側にはグロッキーと名付けたアンデットが静かに椅子に座っている。名付けた理由としては捕獲した際、ホッケーのジャージを着ていたから。もっとも今は拘束衣を纏っているが。

 今回のこの実験は飼い慣らし計画の為のものだ。この実験が成功すればどんなに良いことが私にやってくることだろうか。フフっ、考えるだけでも楽しみになってくるが

 とはいえ、それは成功すればの話。ワクチンの効き目があれば、だ。襲ってこない保証は無い。一応、念の為に手首には拘束具と鎖があり、鎖はグロッキーが座る下の床に繋がっているが、ある程度の自由が出来るよう鎖は緩めになっている。

 ワクチンの効き目が無い場合は知性は人間と同等か又は其れ以下の知性を戻らない。逆の場合は戻る。

 おっ、ようやく3つ内のを取った。取ったのは携帯電話か。グロッキーは数秒眺めた後、携帯電話をパチっと開いてそれから私達に見せるように、顔を上げて耳に当てた。

 まぁ、その耳に当てても相手は居ないがな。居ようが居なかろうがこの世界では無理なことだ。携帯用電波塔でも無ければ出来ないがもう一つ…。

 この施設は地中深くにあるため、電波が入ってくることは無い。生きている携帯用電波塔が有れば、だが。

 グロッキーも分かったらしく、携帯電話を置いた。

 「驚いたな。何なのか分かってる…!」

 「あぁ、凄いな。きっと生きていた記憶が残っているに違いない…!」

 …間違い無くそうだろうな!(笑顔)。

 私はテーブルに置いてある小型のデジタルカメラを手に取って、グロッキーに歩み寄る。

 「カメラだ。使ってみて」

 私は笑みを崩さないように意識し、手渡す。グロッキーは私へ手を伸ばし、そっと受け取った。

 グロッキーは手に取ったカメラをよく見て確かめている。確かめが終わったのか私達に向けて構えようとするが勢いよくカメラを上げて向けていた為、私は驚き、次の瞬間には恐怖へと変わりつつあったが拘束してあったことを思い出したおかげで安堵の息を内心で出した。

 「おい、一々怯えるな」

 「「す、すいません」」

 全く男ともあろう者が怯えるとは情けない。怯えるならこの私が適任だろうが!内心でな。表で出したらどうなるか溜まったもんでは無いな。多分舐められる。

 ウィーンっという音と共にレンズのキャップが開き、写真を取ったであろう音が鳴った。

 「よく撮れているな」

 グロッキーは撮った写真を私達へ向けた。よかった。私は表情筋を保てられたか。

 よし、次はその玩具をグロッキーへ渡そう。アンディがな。

 アンディに指示を出し、彼は頷いた。玩具を差し出しすようにグロッキーの前に移動させる。

 グロッキーは少し見つめた後、正しい穴に正しい形をブロックを1個入れていく。1個のだけで無く次々と入れていく。おぉ〜もしやこれは…!。

 「き、奇跡だ…。血清の効果が効いた…。やりましたねゼノビア博士。おめでとうございます!」

 記憶から論理、推理的思考力まで戻った?…これは驚異的だ!やったぞ!私は成功したのだ!!。ありがとうありがとう。お礼に2人には「やったぞ」のドヤ顔と頷きをプレゼントしよう。おや?グロッキーは何やら苦戦しているようだがいったい……え?まさか効果の方が切れた?

 「…そうだな」
 
 思わず声音が震えてしまったのは悪く無いと思う。とりあえず一歩、二歩と後ろに下がった。2人も早くその場から立ち去る準備した方が良いと思うぞ。アレ?聞こえて無い?嫌な予感がするのに…。

 「UGARRRRー!!」(ウガァー!!)

 「何だ?!」「いったい何が!?」

 ほら見ろ。言わんこっちゃないな!私はお前達が出れやすいように部屋の外に行っているぞ。そしてドアの前で立っていつでもドアをロック出来るようにタッチパネルに手にやっているから急いで来いッ!。

 「嫌だー!?死にたく無〜い!!痛い痛い痛い!!。あ…」ブシャー

 ムンディー!?クソっ死んでしまったか!お前の事は忘れないぞ(黙祷)。そういえばアンディは未だ…アレ?何でドアが閉まって…、

 「ゼノビア博士ッ。待ってくださいッ!。ドアを開けてッ!」

 しまった!?閉じってしまっていたか!?何故…あ、そういえば流れるようにドアのロックをしていた気が…。

 いやでももう、開けように開けれない…っ。だって後ろには「ねぇ、アンディ?今貴方の後ろに居るの♪」って幻聴が聞こえるぐらいグロッキーが歯を見せびらかして獲物を頂く笑みを浮かべているのだから。

 「ドアを開けてッ!開けてください!!」

 あぁ、アンディがするその顔は心に来る。大丈夫だ。私も心に来ているよ。ガラス張りの関係でか自分の顔をうっすらと反射して写っている。内心では、とても出来ないような表情をしてるのに対して表の表情は冷静沈着なソレだ。こんな時ほど嬉しいことは無い。

 「お願いします!!。どうか…!?」

 …そうだっ。ドアを開ける前に早く懐に閉まってあるGLOCK17ハンドガンを取らない…そういえば持っていなかったな。

 「どうか…!?。ひ、やめ…ギャーッ!!」

 アンディー!?くっ。私はアンディとムンディを救うことが出来なかったとは…ッ。上司として恥じるばかりだ。お詫びとして襟元とネクタイを直しながら黙祷を捧げよう。

 黙祷後、部下に連絡を取って、後の事は任せよう。私は研究室に戻って寝ると心に決めた。 
 

 
後書き
一方その頃、地上は夜となっていた。 
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