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バイオハザードなんてクソくらえ!【未完】

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第5話

 
前書き
 アンブレラ社は感染を阻止したと考えていた。…だが甘かった。ラクーンシティは始まりに過ぎず、Tーウイルスは数週間でアメリカ全土に広がり、数ヶ月で世界中に…。

 人類の命を奪っただけで無く、湖や川を干上がらせ、森を砂漠へと変えて、全ての大陸を草木が簡単には生えることは無い、不毛の荒野と変えた。ゆっくりと確実に、地球は弱っていった…。

 私の名は、アリス。私は必ず、この世界を終末へと変えたアンブレラを…。 

 
 何台とあるカメラが”とある事”で全てを記録していた。

 今、映っているのは大都市のワンルームマンションのように広い真鍮と大理石からなる浴室だ。そこには、生まれたままの姿となって倒れている一人の若い女性が居た。

 彼女は意識が無いのか眠っていた。寝息をするたびに、ゆっくり上下する胸が現在も生きている印であると証明していた。

 彼女は目を覚まし、ゆっくりとその場を立つ。起きたばかりであるためか、かなりふらついている。青い瞳も少し眠そうであった。

 「此処はいったい…?」

 自分が何処に居るのか思い出せず、ほんの少し、混乱していた。

 彼女は今も出ているシャワーを止めて片手で曇った鏡を拭いて、自分の姿を眺めた。

 「左肩にあざ?それにナイフの傷跡のような…」
 
 彼女はじっと見つめて、思考する。何故、このようなものがあるのかと。

 「はぁ、駄目ね、分からないわ…」

 しかしどうやってその傷がついたのか全く見当もつかなかった。

 彼女は浴室から出て、広い寝室へと入る。浴室にあるカメラもその姿を追おうとするが、既に出てしまっている為、別のカメラが起動し始めた。

 「覚えてはいないけれど、何故、私のであると強く脳が訴えるのは何故かしら?」

 彼女は疑問に思いつつも、キングサイズのベッドの上にある赤いドレス、下着を着た。足元にあったブーツも履いた。

 「私にぴったりだわ。これは私のなのね…似合いすぎ」

 彼女は自身の姿を寝室にある鏡で、うっとりとしながら眺めていると、ふと気づいたことがあった。

 「あら?これは結婚指輪?なんで私の手に…」

 彼女は左手に、はまっている金の結婚指輪に気づくがやはり何も思い出せないようだ。ただ自身について思い出せてくれたきっかけが一つだけあった。自身の名前と思われるのがあったからだ。

 「私の名は、アリス」

 アリスはほんの少しであるが、自身の事に知ることが出来て嬉しくあった。

 ふと、アリスは気づく。時計には朝の8時とあるのに太陽から照らされる気持ち良い光が窓から全く無いのだ。

 どういことなのか、あまりに不自然と感じたアリスは奇妙な模様をする赤色のカーテンに近づいて、パッと横へ開けた。アリスが見た光景は…、

 「なんでコンクリートの壁が…ッ」

 朝日では無く、コンクリートの壁だった。アリスはよりいっそうに混乱した。あまりにも豪華な内装とはそぐわないからだ。

 気持ちを落ち着かせないようと深呼吸をし、一先ずの落ち着きを取り戻したアリスは寝室を出て、少し歩くとそこは食堂だった。

 食堂は無駄に広い。それはもう、縦に長い長いテーブルを除けば50人は優に入る程に。

 アリスは脇テーブルに置かれているチェスボードの隣にある一つの小型タブレットサイズの写真立てを手に取った。写真にはウェディングドレスを着るアリスと側に立つ、ハンサムな男が写っていた。

 「分かっていたけど、私って結婚していたのね…」

 見つめているとドスンという音が鳴り、同時にビニールが掛かっている彫像のところから風の音が立てていた。

 アリスはビクッとなって写真を手から落としそうになりながらも置かれていた場所に戻した。

 「誰か居るの?」

 アリスは彫像の所へと向かい近づき、隣にあった装飾が施された大きな扉を恐る恐ると扉の取っ手を掴んで、扉を開いた。

 扉の向こうはガラスの壁に囲まれた通路だった。通路は上下左右共に明るすぎる白いライトがされている。突き当りには銀行の金庫室にある鋼鉄のドアが見えた。

 ゆっくりと前を歩き出す。三分の一ほど進んだ時、アリスはガラスの壁に手を当てたその時、記憶が過り出す。

 『早くドアを開けてあげて!』
 『やってるよッ!でも防御システムが…ッ』

 「これは、私?」

 自分に無いこの記憶、経験しても無いこの記憶に対しアリスを混乱の渦の中へと落とすことは当然と言えた。

 その時だ。照明が一瞬とはいえ、暗くなった。それが2回。
 次はビューンと鳴る音が発する。

 何が起こっているのは分からないながらも、腰を落とし警戒しながら不足の事態に備える。

 すると鋼鉄の扉の直ぐ前に、くるぶしの高さの水平な光の青いビームが出現し、アリスへと速いスピードで近づいてきた。

 飛び越えようとするが急にビームの高さが胸くらいに上がった。アリスは身をかがめて天井へと飛び、排気口を掴み、両足を水平に上げて、ビームが通り過ぎるのを待つ。心の中で天井へビームが来ないことを祈りながら。

 ビームは通り過ぎ、先程に自身が出てきた木製扉の直ぐ前で止まり、消滅した。

 アリスは排気口から手を離し、膝を曲げて衝撃を吸収しながら床に着地した。

 「次はもう来ないわよ『ビューン』…次が来てしまった」

 今度のビームは格子状になって通路全てを覆うように広がってやってきた。逃げるどころか、飛び越えることすら出来ないがアリスの中で、一つだけ方法が生まれた。

 それは排気口の中に逃げることだ。結果的に成功し、排気口に逃れることは出来た。もしも、逃れることが出来ないでいたら、記憶の中にあったあの特殊部隊のようになっていたのかもしれない。そう考えたらアリスが身を震わせるのも無理は無いだろう。

 アリスは排気口を這いずり始め、前に進む。出口を見つける為に…。

 アリスは気がついていないが、今もカメラはアリスを追っている。現在は赤外線モードで追っていた。

 進みに進んだ先に光を発している箇所をアリスは見つけた。どうやら排気口の天井に当たるようだっとアリスは思った。

 排気口の格子蓋を落とし。アリスは排気口から出て床へと着地した。消毒液とストレッチャー等が有ることから此処は病院であることが伺えた。

 しかし、明かりは点いているのに一人も人が居る気配は全く感じない。排気口の蓋が床に落ちたことで大きな音が発したのにも関わず、様子は以前と不気味な静けさが続いている。

 唯一、飾りと呼べるのは壁に飾ってある数枚の絵画と、床にあるアンブレラ社のロゴ──赤と白の六角形──だけ。

 アリスは先程、通ってきたレーザー室もといガラス通路より注意深く、ゆっくり歩いていく。廊下の突き当りにあるのは鋼鉄の扉では無く、曇りガラス製の一対のドア。

 目を細めてよ〜く見てみると、うっすらではあるものの、ラクーンシティの通りが見えた。

 アリスはストレッチャーを掴んで病院の出口であるドアに向かって押し出す。歩むスピードを少しずつ上げて、廊下が二又に分かれているところに達しようとした瞬間、天井から刃が降ってきた。只の刃では無い。通路の幅と同等を誇る刃が天井から急に降ってきたのだ。

 刃はストレッチャーを切り裂いたが幸いにはアリスは無事のままだ。

 「ひっ」

 アリスはもしもコレが自身にやってきたら真っ二つ間違いなしの最悪すぎる未来を考えてしまい、尻込みしそうになるが、首を振って顔を正面に向けて歩みを続ける。

 ストレッチャーが切断された場所を、恐る恐るといった感じで歩むがどうやら先の刃は一回きりのようだ。

 「出口までもう少しね…」

 やっとこの可笑しな施設から出れる。アリスは一刻も早く出たい思いでいっぱいだった。だがそれは”最悪”の結果となって外に出れることになることを、アリスは知らない。

 突然、目の前でアンブレラのロゴから上へと飛翔物が飛び上がった。それは一瞬の内に銃のような銃身を形成し、銃弾は辺り一面に叩き込み、一部は壁に小さいながらも穴を作るまでにも至った。

 「…えっ?」

 その銃弾をアリスは不幸にも食らってしまい、唖然としながら床へと倒れ込む。彼女はピクピクと身を痙攣させて、数秒後には事切れた。

 数分が経過すると一人もいなかった筈の病院に足音が聞こえてきた。白いハズマット・スーツを身に包む三人の人間が、既に事切れているアリスの前に現れ、アリスを見下ろす。ハズマット・スーツの胸中心とおでこには、アンブレラ社のロゴがあった。

 その内の一人(3人の内の真ん中に立つ)が頭から首元の下まで被っている防護マスクを取り、抱えるように持った。

 その人物はアリスと同年代の…いや、アリスよりも年齢が下回る若い白髪の女性だった。彼女は光を失ったアリスの瞳を見つめるが、白髪の女性はうんざりといった表情をしながら首を振り、彼女に付き添う二人の男に命令する。

 命令を下せるということは何らかの役職に就いているか、もしくは位の高い立場にあるということ。

 「血液のサンプルを採って、死体を処分しろ」

 「「はい、ゼノビア博士」」

 ゼノビアは(きびす)を返し、その場を後にした。


 
 「意気地なしめ…」

 アンディ・ティムソンは既にこの場から距離が離れているゼノビアの後ろ姿を見て吐き捨てる。呟くようにではあるが。

 「もっと大きな声で言ったらどうだい?」 

 「ブレンダン、その挑戦はゴメンだな」

 「そうかい、では俺達は”コレ”に挑戦しようか」

 「だな」

 ブレンダンと呼ばれた男はアンディと共に仕事に取り掛かる。血液採取だ。

 数分から数十分が経過した頃、二人の男は血液採取を終えた。現在は冗談を交えた話をしていた。

 「ぺちゃくちゃうるさいな。二人とも口を閉じることは出来ないのか?」

 自分達以外の声が聞こえ、ブレンダンとアンディは喋りかけてきた人物を見る。全身を戦闘服に身を包み、ヘルメットを被っている為、表情は分からない。分かることは二点…声音が若い女性であることと警備員であることだ。

 「「無理だね」」

 二人はニヤリと口角を上げた。

 女性警備員の表情は分からないがそれは二人も同じことだ。だが同じく笑みを浮かべていることは、ブレンダンとアンディは良い意味で察した。どうやら女性警備員とは仲が良いようだ。

 かつては警備員と仲良くなるなんて考えもしなかったことだ。警備員は重要人物と施設に侵入しようとする輩から守る為に存在する。勿論、末端も含めて守ることも警備員の仕事だが、一番優先される順位は重要人物だ。

 技術者、研究者であるブレンダンとアンディも、お互いを必要とすることなど、ほとんど無かった。

 だが、それはもうとうの昔のことだ。今は同僚と仲良くやっていくしか無いのだ。何故なら恐らく、いや確実に死ぬまで一緒に暮らすことになるのだから…。

 だが普段は考えないようにしている。3人の内、アンディが一番そう。

 「さてと、コレを機械に掛けたら、どんな知恵を授けてくれるのかな」

 ブレンダンは先程、採取した血液が入った蓋付き試験管をかざした。

 「多分、81回目と同じ結果になるんじゃ無いかな?」
 
 「へぇ、アンディがゼノビアにそう言ってくれるのかい?意気地なしって罵った後にさ」

 アンディがブレンダンのツッコミに答える前に女性警備員は、間に入った。

 「さぁさぁ、早く片付けよう。必要以上に、外に長く留まるのは私はゴメンこうむるよ」

 アンディとブレンダンは苦い顔して応じた。

 「今度は脚を持つのか?」

 「いや、肩にするよ。アンディの貴重なハズマット・スーツが血で汚れるからな」

 「まぁ、少なくとも今度のクローンはレーザー通路室をクリアした」

 アンディはそう言った後、レーザーで切り刻れたクローンのことを思い出して、身震いした。その後の一週間はステーキを食べれていない。

 もっとも近頃はステーキを食べる機会など、あまり無い。アンブレラ社が蓄えている大量の食料品のおかげで、生き残った社員は飢えることは無かった。

 「ごちそう」にありつけることなど、下っ端から末端の者達には無理なこと。せいぜい、麦パンにミートローフの缶詰、ランチョンミートぐらいなものだ。後、カロリーメイト。

 とはいえ、少なくとも食べるものはある。これが給料代わりにはなるが、飢えるよりはずっとマシだ。

 アンディは脚を両手で持ち、ブレンダンは両肩を支えるように両手で持つ。持ち方としては人が仰向けになった状態で。

 女性警備員と共に2人は曇りガラス製の一対のドアの手前に辿りつくと、ドアは自動に開いた。ガラスに映されるラクーンシティの風景が左右に分かれた。中には地上に上がる為と思われるエレベーターの金属デッキが見える。

 アンディ、ブレンダンの2人は後ろ向きに乗り込み、女性警備員は追従するように2人の後に続き、床にある大きな赤いボタンを踏んだ。

 油圧式装置特有の「シュー」っという音と共に、エレベーターは上昇し始める。この施設は地下にある。それは1階2階という規模では無く、数百から1000m以上の規模だ。

 そしてこの施設には黙示録(アポカリプス)を生き延びたエレベーターに乗っている3人とゼノビア博士、その他数十人の社員の家であり職場であり、避難所でもあった。

 子供の頃、親から聞かされたことがある。長いこと人々は世界に終末が訪れるとすれば核爆弾によるものだと。それは信じる人も信じない人も共通いて思い浮かべた。子供の頃に読み、テレビで見たSFの大半は、強大な勢力に核爆弾を落とし、地球には僅かほんの一握りの生存者しか残らない未来を描いていた。

 だけど、”この状況”より核爆弾の方がずっとマシだったのでは無いか? 地上に運んでいくエレベーターの中でアンディはふと思った。

 それに自分達が所属するこの会社の極秘地下基地が死の(デスバレー)あるのは、なんとも相応しいし、都合が良い。──まるでアンブレラ創設時前より黙示録(アポカリプス)が訪れることを予期していたかのようだ…。
 
 微かに軋む音を発しながら頭上の床がパクリと、左右に開き空いた。間もなく地上に到達。エレベーターデッキは接続接触するかのようにして、次第に完全停止をし地上に到着した。

 内装は木造小屋で観測に使うと思われる物がある。此処は気象小屋であるが小屋はカモフラージュのようなものだ。

 まぁ、カモフラージュであろうが無かろうが、観測においては意味は無いだろう。何故ならば彼等が居る場所は砂漠であるからだ。

 「では私は、此処で待機する。何かあれば呼んでくれ。駆けつけるから」

 「「分かった」」

 アンディとブレンダンは開いているドアを出て、目的地まで歩く。時間はそう掛からなかった。

 「ふぅ、溝がある砂地に辿りついたぞ。…じゃあ、1、2の3の合図で投げるぞ」

 「それが1、2の3、はい!…なのか、3っで投げるのかどっちなんだ?」

 「1、2の3、はい!…だな」

 「OKだ、それでやろう」

 「「1、2の3、はい!」」

 2人は死体を大きな溝へと放り投げる。2人が放り投げた溝は石灰を敷き詰めた溝。

 溝には、アリスと同じ顔が沢山あり、たった今、放り投げれられた彼女と同様に、既に事切れている。

 「はは、慣れるって怖いね」

 「俺は慣れないぞ、ブレンダン。アレを見ろ。…アンデッド共だ」

 「あぁ〜」

 アンディが慣れないと言ったのは向こう側に居る存在、アンデッド。気象小屋は鋭い有刺鉄線が付いた高さ4〜5mくらいの鉄網フェンスに囲まれている。

 そのフェンスを文字通り何千というTーウイルスに感染したアンデッドが囲っている。

 当初はフェンスに高圧電流が流れていたが、ゼノビアが高圧電流の電源を切った。理由はアンデッドに対し、全く以って効果なんて無かったからだ。

 だがそれでも、フェンスの中に居る限りは安全。地下施設に居る限りは安全だ。今の所、アンデッド達がフェンスを突破する予兆は無い。

 「しかし、コイツ等はいったい何処からやって来たんだ?」

 「どういう意味だい?」

 「そのまんまだよ。此処は暑い砂漠のド真ん中だぞ。まぁ、自動温度調節機能のおかげで平気へっちゃらだけど。…話は戻るが、まさかラスベガスから歩いて来たのか?」

 「ゼノビアにアンデッドの移住パターンを聞けばよいんじゃないんかい?」

 「それも悪く無いな。じゃあ、下に戻ろうぜ」

 アンディは笑い、ブレンダンは喜んで賛成した。2人はエレベーターへと戻り始める。

 「はぁ、クローンを捨てるのはもう、うんざりだ。いい加減に本物、見つかんねぇかな〜」

 「本物って確か、サンフランシスコにあるデトロイドで捕縛したんじゃなかったのか?」

 「本物はとっっくにデトロイドから逃げたよ。我らがボス、ゼノビア様がヘマをしたのさ」

 そう話している2人は小屋に入り、エレベーターに乗る。女性警備員は再び赤いボタンを踏む。

 「…俺達はいったい、何を為そうとしているのかな。結果はいつも同じになる。血液分析も、常に標準値内だ」
 「…そうだな」

 女性警備員はヘルメットを取り、プロンドの長髪をはためかせた。アンディとブレンダンは、彼女の整った美貌に見惚れる中、彼女は肩を竦めて、2人に言った。

 「あのフェンスの外じゃなく、安全な地下に居られる限り、アンタ達が何をしようが、私には関係ないね」
 
 アンディとブレンダンは溜息をしながらも、思うところがあるのか、同意するところがあるのか、2人は彼女に強く頷くのであった。 
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