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宝がわからない者達

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第三章

 実際に天女にそちらに行く様に勧めた、天女としては他にどうすればいいのかわからずそれでだった。
 実際にその地に赴いた、すると。
 その社の神々は彼女を見てすぐに言った。
「話は知っておる」
「既にな」
「そなたの姉妹達から聞いておる」
「全く以て酷い話だ」
「だがこの奈具に来たなら大丈夫だ」
「もう心配はいらぬ」
「丁度我等は外宮の神がおらなかった」
 ここでこの話が為された。
「しかも酒の神がな」
「だからそなたは外宮に入るのだ」
「そしてこの地の酒の神となるのだ」
「そうなってくれるか」
「何と、私が神にですか。しかも」
 天女は神々の申し出に驚いて言った。
「宮に入るのですか」
「そうだ、いいか」
「これよりな」
「そなた程の者なら相応しい」
「素晴らしい酒を醸してくれるからな」
「これからも酒を醸してくれ」
「極上の酒をな」 
 こう言って天女を外宮に置いた、そして素晴らしい女神として崇めた。老夫婦に粗末に扱われ邪険にされた彼女はこの上なく感激し奈具の社そして社に来た者達に極上の酒を振る舞っていった。
 その話を聞いた比治の里の彼女を利用し尽くして悪どく儲け挙句追い出した老夫婦はその頃散々遊び散財し一文なしになったうえでその行いから里の者達に忌み嫌われ相手にされず困り果てていたがまた利用してやろうと奈具に向かったが。
 途中でその浅ましさに怒った高天原の神々が落とした雷に撃たれて無様に死んだ、嫌われ者の彼等を弔う者はおらず神々はのざらしの骨になった彼等を見て話した。
「天女の素晴らしさがわからず利用し尽くして追い出すとは」
「実に浅ましく愚かな者達だ」
「そんな者達には神罰こそ相応しい」
「そこで骨になっていることだ」
「宝を宝と思わず粗末にする輩には相応しい」
「そのまま朽ちておけ」
 冷たく言い捨てた、そして天女は社が徐々に立派になっていく中でさらに美酒を醸し続けていった。
 すると誰もが彼女を深く崇める様になりやがて奈具の社が伊勢神宮になるとその外宮に座し続け豊受姫という名になり偉大な女神として讃えられる様になった。伊勢神宮の豊受姫の話にはこうしたものもある。一人でも多くの方が読んで頂ければ幸いである。


宝がわからない者達   完


                  2014・5・13 
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