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宝がわからない者達

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第二章

「衣はわし等が預かった」
「返して欲しかったらわし等の娘になるんだよ」
「そしてわし等の為に働け」
「酒を醸すんだよ」
 衣を隠したうえで天女に無理強いした、高天原に帰ることが出来ない天女は頷くしかなかった。そうしてだった。 
 老夫婦の養女となり酒を醸した、するとその酒は。
「美味いな」
「こんな美味い酒があるのか」
「これはいい」
「幾ら出してもいい」
「それでも飲みたいものだ」
 こう言ってだった、日本中からこぞってだった。
 天女が醸した酒を飲む為に買いに来た、中には荷車一台分の銭を持って来る者もいた。欲深な老夫婦は銭をこれ以上はないまでに釣り上げて売った。
 そうして国が買えるだけの銭を蓄えた、すると夫婦でこう話した。
「これだけ貰ったらいいな」
「そうね、もう商いをしなくてもね」
「わし等は楽に暮らせるぞ」
「そうだね」
「だからな」 
 それでというのだった。
「もうあの娘はいらない」
「充分儲けたからね」
「もう価値はないからな」
「追い出すわね」
「そうしような」
「それじゃあね」 
 二人で頷き合ってだった。
 そうして実際に天女を追い出した、その時衣を返さなかった。
「これも売ればいいな」
「高く売れるわ」
「捨てる娘の衣も売ってしまえ」
「売れるものは全部売って儲けるのよ」 
 こう話してだった。
 そして実際に売った、追い出された天女は嘆き悲しんだがどうにもならず里を後にするしかなかった。それを見てだった。
 里の者達は顔を顰めさせてだ、こう話した。
「前から底意地が悪くケチで欲が深くてな」
「図々しくて卑しい連中だったが」
「ああしたことをするか」
「本当に碌でもない夫婦だ」
「利用し尽くしたら捨てるか」
「儲けてな」
「天女殿があまりにも気の毒だ」
 こう話した、そしてだった。
 診かねた里の者達は追い出された天女に同情して話した。
「天女様はどうなるのだ」
「追い出されたが」
「高天原に戻られるにも衣を売られた」
「今着ておられるのは普通の衣だ」
「それでは戻れぬ」
「空も飛べずな」
「いや、高天原の方なら」 
 ここで一人の者が言ってきた。
「行かれるといい場所ある」
「そうなのか」
「いい場所があるのか」
「そうなのか」
「奈具だ」
 その地だというのだ。
「そこに行けばな」
「何とかなるか」
「そうなのか」
「その場に行けば」
「だからな」
 そうであるからだというのだ。
「天女様にはだ」
「奈具に行ってもらうか」
「そうして頂くか」
「これから」
「そうして頂こう」
 こう話してだった。 
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