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ある程度の資質

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第三章

「今日行っていいかじゃなくて」
「今日行くだな」
「それでお邪魔しますも言わないで上がり込んで」
 そうしてというのだ。
「晩ご飯お腹一杯食べてお風呂に入って」
「いい布団に寝てだな」
「朝ご飯もお腹一杯食べて」
「あの人の分は用意していなくてもな」
「それでお金貰って帰るってね」
「ご実家にいる次男さん達が怒っているな」
「次男さんのご家族がね」 
 菊枝は困った様な顔で言っていた。
「次男さんの息子さん達がお話してるわ」
「そうだな」
「ここでもね」
「来る度に厚かましくなってきていて」
「本を課して欲しいっていうから貸したら」
 そうすればというのだ。
「偉そうに駄目出しして批評してね」
「感謝しないな」
「そして挙句にね」
 妻はさらに話した。
「人の部屋に勝手に入って」
「本を漁ったそうだな」
「家族でもないのにね」
「酷いものだな」
「ええ、宗派の中でもね」
「そんな有様だからな」
「皆嫌ってるわ」
 そうしているというのだ。
「宗派の悪口ばかり言うから」
「その癖自分は何もしなくてな」
「働きもしないで誰かの為に何かもしないから」
 だからだというのだ。
「もうね」
「宗派の中でもな」
「どの人もね」
「よく言わなくてな」
「嫌ってるわ」
「そうだな」
「そうであってね」
 夫にどうにもという顔で話した。
「自分はこの世で一番偉い」
「そう思っているな」
「誰よりもね」
「御仏よりもな」
「一体どうして偉いのか」
「わしにはわからない」
「私にもよ」 
 全くというのだった。
「本当にね」
「そうだな」
「誰かの為に何もしなくて」
「それでそんな有様でだ」
「何が偉いのか」
 それこそというのだ。
「全くね」
「わからないな」
「そんな人だから」
「ああ、もうな」
 僧衣の中で腕を組んだまま言った、表情も苦り切ったままだ。
「無理か」
「あの人をどうにかするには」
「あまりにもな」
 それこそというのだ。
「酷過ぎる」
「何もかもがね」
「だからな」
 その為にというのだ。 
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