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エピローグ
彗星帝国ガトランティスとの戦いに勝利した地球は、戦後処理をしつつ復興の真っ最中だ。
地球本土への、直接攻撃は無かった。地球人類が知る土星は最早、記憶か写真ででしか見ることは叶わなくなってしまったが。
とはいえ、だ。
地球防衛艦隊の内の半数以上の戦闘艦が沈んでしまう。…それだけでと片付けるのは不謹慎ではあるが、それだけで済んでよかった。
よく考えてみて欲しい、そして思い返して欲しい。
本来、地球は一方的に蹂躙される側の筈だ。
宇宙戦艦〈ヤマト〉により持ち帰られた【コスモリバース】により、滅亡寸前であった地球は青い星へと戻り、復興を行ってきた。
敵であったガミラスとは同盟を組み、〈ヤマト〉航海中に地球人類と瓜二つのブリリアンス人と出会い、なんやかんやあってブリリアンスとの同盟を締結した。
当然、軍拡だって行った。磯風型駆逐艦、村雨型巡洋艦、金剛型宇宙戦艦といった旧式艦を改装し波動機関を搭載したことで、一般的なガミラス艦を撃沈可能圏内となった。
表向きはイスカンダルとの条約に則り、全ての戦闘艦に波動砲は搭載されていない。
…そう、”表向きは”。
ガミラス・ブリリアンス・地球による連合艦隊を結成し、第八浮遊大陸攻略の時である。
ガトランティス最新鋭戦艦であるカラクルム級の登場により、戦線は窮地に追い込まれ全滅するのも時間の問題!…にはならず、”とある地球の戦艦”により決着はついた。
とある地球の戦艦とは、アンドロメダ級宇宙戦艦である。
アンドロメダ級は地球防衛軍の最新鋭戦艦であり、波動砲を搭載した艦である。この艦の最大の特徴は、新兵装である拡散波動砲だ。
拡散波動砲は、多数の敵艦を同時に屠る事が容易に可能である兵装だ。
つまり、だ。
第八浮遊大陸戦での戦いに参加していた将兵は、勝利の喜びよりも戸惑いや憤りといった感情のほうが、勝利後の戦場を支配した。
当然だろう。
勝ったは勝ったが、自分達を捨て駒にしたのだ、怒らないほうがおかしいというもの。
一番はやはり、元〈ヤマト〉クルーら。特に古代進が、そうだった。
アンドロメダ級〈アンドロメダ〉が、古代進座乗の〈ゆうなぎ〉の横を通過した時は更に憤っていた程だ。
そして、なんやかんやあって古代進は、地球政府が秘匿し地球防衛軍高官でも限られた者達しか知らない、《時間断層》の存在と建造中含む戦闘艦を実際に目撃したのだ。
…では、《時間断層》について紹介しよう。
この《時間断層》は、内部では通常の空間と比べて、10倍もの時間が経過している。つまり、である。通常の空間で1日経てば、《時間断層》内では10日が経過するのだ。
この特殊空間の事を、「コスモリバースシステムの負の遺産」と呼ぶ他、「リバースシンドローム」とも呼ばれ、更には「蘇った地球が、美しい自然の中で密かに抱え込んだ闇」や「コスモリバースというブラックボックスが生み出した特異点」とも呼ばれる。
《時間断層》の存在に気づいた地球連邦政府は、この事実を公には公表せず、一部の政府関係者や軍高官にのみ断層の存在を発表。
同時に《時間断層》内部には、ガミロイドを利用して一大造船所が建設された。
その後、《時間断層》専用の制御艦として、ドレッドノート級〈プロメテウス〉が建造。〈プロメテウス〉はワープ用のシステムを応用して時間の流れの速さを適宜補正することで、艦内限定だが生身の人間が時間断層に長時間滞在が可能となった。
《時間断層》内の造船所はガミラスにも貸与されており、その見返りとしてガミラスが持て余していた幾つかの植民星を地球側に譲渡している。
この植民星から採掘される資源が、地球防衛艦隊やガミラス艦隊の建造に利用されている。ブリリアンスもその使用権はあるが、基本的には使用していない。
艦の資材・建築資材云々も、《時間断層》内にあるプラントで生産されており、地球表面にある都市の復興にも役立っている。
この《時間断層》の特性を、戦力増強のみに利用するだけでなく、軍事技術の発展にも利用。
10倍速く流れる時間を利用し、アンドロメダ級やドレッドノート級ら波動砲艦隊を開発・建造を開始し、しばらく時が経ち次はAIを軍事利用。
《時間断層》について長々となったが纏めよう、そして例えよう。《時間断層》内部では再建のみならず、技術発展のための実験場、と捉えて欲しい。
こうして、本来は一方的に蹂躙される筈の地球が、寧ろ地球暦2199では超強かったガミラスを蹂躙出来る程の戦力を保有するに至る。
ガトランティス軍第七艦隊機動艦隊を纏める某司令官は、土星沖に展開していたエンケラドゥス守備艦隊を過小評価し侮った。
最も波動砲艦隊の到着により、ガトランティス軍第七艦隊機動艦隊を纏める某司令官は、口を大きく開けて唖然とするしかない。
その反応は普通だ。たった三年でその戦力。本当に当然の反応だ。
そんな地球は救われた。《時間断層》は今も機能し、軍の再建を行っている。
内容は、だ。
・今日も建造!…よりも、時間断層では従来の戦闘艦の改装が優先。
・完全無人化!…よりも、有人であり乗る人間が少なく、AI自立型サブフレームを補佐とし人が動かす艦とすること。
・etc…
以上である。
そして…時間断層の存在を一切包み隠すことなく、全市民へ向けて公開し、政府ならびに数名の軍人が生中継で演説。
その後は、二つの選択肢の片方を選択する投票権が市民へ与えられた。
《時間断層》存続or《時間断層》放棄。
そのどちらを選択するのか、を。公開された事で《時間断層》の存在は、子供まで知るところだ。
地球はガミラスとガトランティスの両戦役を経て、人的資源が大きく失われた。
完全無人の艦隊で軍を機能する案もあり、その一部は実際に戦線へ投入された。人の命を消耗せず、機械化は感情を持たず合理や効率を重視するのは確かに素晴らしい。
しかし、機械化を完全に否定することは合理的ではない。かといって、合理や効率のみを考えてしまえば、いずれはその合理化の渦に食い潰されてしまう。
ブラックアンドロメダが、その合理化の代表だ。
合理化ばかりで人が考えることを止めてしまったら、その合理化は人類を食い潰してしまう程の悪魔的魅力に感じてしまう。
数字や便利さ、効率を求め惑わせる事なく、自分の心に従う。
そう、人は、生きているのだ。正真正銘、血肉の通う人間で、考えることが出来るのだ。
それに笑い、悲み、怒ることも、機械にはない感情を持つからこそ、人間としていられる。
それが、人間なのだ。
『投票の結果を発表します。結果は、…時間断層存続!』
投票の結果は、…時間断層存続。
しかし、投票の結果は時間断層存続が優勢であれど、それはAIが選んだのではなく人の意思により選択した未来。
ただ流れを身に任せて決めた未来ではない。それぞれ自分の頭の中で、未来を選択した結果だ。
間違いは誰だって必ずある。
人生とは正解ばかりを選べる訳ではないし、これが最善であるのかも分からない。
未来が見える訳でもない、間違える事は誰だってあるのだ。
それを糧にして、人間は生きていく。人間だからこそ、色んな可能性がある。
《時間断層》存続を選択した側も。
《時間断層》放棄を選択した側も。
何処か温かみのある顔を皆等しくしながら、地球は今日も復興していた。
「地球に笑顔が戻って、良かった良かった。そうは思わないか、我が娘スラクルよ」
「仕事に戻りますよ、ギルド長閣下」
後書き
ネオ・代表O5−1です。最終話までお付き合いいただいて、ありがとうございます!とある件でハーメルン様からの移転しましたが、無事に完結することが出来ました。
この小説を書くに至ったのは、自分の好きな宇宙戦艦ヤマトを二次創作したいという想いからでした。改めまして、無事に完結することが出来て良かったです。
この小説の完結を以って、私は投稿活動から引退する予定です。もしも引退する場合は、元々ハーメルン様で投稿していた作品を投稿してから、になります。未完と未完予定の連載小説を、ですね。
それで以って、本当の引退となります。
また、会えることを心待ちにしております。読書そのものは継続ですからね。それでは〜。
by ネオ・代表O5−1(旧名:代表O5−1)(旧名:サイト管理者)
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