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第86話「荒らし殲滅プロトコル発動」前半
前書き
ネオ・代表O5−1です。第86話「荒らし殲滅プロトコル発動」前半となります。
どうぞ、ご覧ください。
―――地球連邦防衛軍・統括司令部。
「おぉ……〈ヤマト〉が、やってくれたか」
《滅びの方舟》が崩壊してゆく姿を、連合軍将兵達は歓喜の声を挙げていた。最悪の時間が嘘のようだった。
これで、地球のみならず、ガミラス人、ブリリアンス人、全宇宙の生命が脅威から解放された瞬間だった。
「これで、我々も安心ですな」
だがしかし、そんな空気を打ち壊すのが、平然とする軍需産業のオブサーバー達である。
「だが、この戦争で失われた戦力の規模は、計り知れない」
地球人オブサーバーが吐露する。
「なに、我々には時間断層がある。人材に困ったら、クローン兵の製造に着手すればよい。時間断層ある限り、戦力は直ぐに整うのだから」
ガミラス人オブサーバーが、命を軽んじた発言を口にする。自身は、気にもしていなかった。
「そうですな。此方側の3年が、時間断層では30年の月日が経過しますし」
「そうだとも。我々の軍事力に抗える勢力など、存在しなくなったも同然。我々の優位を覆すことは、絶対に無い」
「それもそうですな」
「「「「はっはっは!!」」」」
そんな会話を直ぐ傍でされる藤堂の表情には、露骨な嫌悪感が浮かんでいた。隣の席に座るペネット大統領も露骨な嫌悪感を浮かべている。あの芹沢ですら、嫌悪のそれである。
機械の補充は良いが、人間はどうするのだ。人間は自然に生み出され、人生を生きていくのだ。失われた人材は簡単に戻らない。
「(…所詮は、金儲けしか頭にないオブザーバーか)」
これはアレか、お説教を垂れても馬の耳に念仏、というやつか。
ふと、藤堂は思う。 そういえば、ブリリアンスのオブザーバーである彼女は、一言も地球・ガミラスオブザーバーに同調してはいなかった。
「(ブリリアンスは、我が地球の復興支援を行っている。ガミラスも復興支援してくれているが、ブリリアンスはそれ以上だ。自国の利益が黒字だろうが赤字だろうが、だ)」
藤堂は感謝の念を抱いた。そして、である。軍需産業オブサーバーの支援や協力を受けている野心溢れる芹沢は、勘違いされやすい男だと藤堂は思う。
「(…本当に、勘違いされやすい男だな。『子供達の明日の為に!』、か。…いったいどこが、野心溢れる男なのか)」
芹沢という男は、誰よりも地球を想い愛し、そして子供達を愛しているのだ。彼らに同調するような姿勢や発言はあるにはあったが、内心では呑気な会話をするオブザーバーへ怒っていることは、藤堂は誰よりも知っている。
芹沢はスクリーンを睨み付けて、その目線を外そうとは決してしなかった。
「連合艦隊はどうしている?」藤堂が聞く。
「両大使の指示により、月軌道上にまで後退が完了。現在は、態勢を立て直している最中です」
「ふむ……」
《滅びの方舟》…。
このまま沈黙してくれればよいのだが…。
変わらず崩壊が続く《滅びの方舟》であったが……異変が起きる。崩壊していくと誰しもが思っていたのだが、崩壊という言葉が不適切だと悟らざるを得なくなったのだ。
「…ん?、こ、これは?!」
「どうした?」
不意に声を上げるオペレーターに、芹沢が尋ねる。
「彗星都市中核から観測される、異常に上昇していたエネルギーなのですが…」
「? それが、どうしたのだ?」
「一向に止む気配がありません!」
『!?!?』
まさか、とスクリーンを見つめた誰もが絶句した。
彼らは見た。
《滅びの方舟》の形が変化するのを。
彼らは見た。
《滅びの方舟》が悪魔と呼称してもおかしくはない姿へと変貌し、悪魔となったのを。
《滅びの方舟》のコアは確かに破壊した筈だ、何故…。
誰もが見えない手で心臓を、鷲付かみにされるかのような心境だった。
「新たな報告です!」
「今度は何だ?!」
「そ、それが…《滅びの方舟》後方に重力波を確認!」
「ガトランティスか!?」
「違います!ガミラスでもありません!これは、このワープアウト反応は…」
―――ブリリアンスです!
オペレーターの報告の直後、…”彼ら”はやって来た。人々は知ることになる。…ブリリアンスの本気を。
「ワープアウトします!」
その言葉と共に複数の青く輝くワープゲートが展開され、通常空間に姿を現した。
第二十四機動艦隊、第十五、第十六、第二十機動艦隊がワープアウトした。艦種はスヴェート砲を搭載したアクラメータ級戦闘航宙艦、そして同じくそれを搭載するクワオアー級改。更に、ヴェネター級スター・デストロイヤーの姿もあった。
ワープアウトした艦艇数は、実に千隻を越えた。
「ワープアウト更に続くっ!」
「巨大なワープアウト反応です!?」
巨大なワープアウト反応が確認された直後、青く輝く○字状のワープゲートが少数展開され、ズズズっと出てくる。
そこから出て来たのは、灰色の天体兵器だった。直径200kmのその正体は、惑星破壊兵器だった。数は一つではなく、3つ。
直後、惑星破壊兵器に続く形で艦隊が姿を現す。エターナルストーム級200隻と、漆黒塗装された艦隊旗艦―――エターナルストーム級Ⅱ型改〈シエラ〉の到着である。
「月軌道にもワープアウト反応っ!?」
だが、まだだ。まだ、終わらない。月軌道にワープアウトしたのは、第三艦隊。3つの惑星破壊兵器、スヴェート砲を搭載した多数のアクラメータ級、同クワオアー級改、同ヴェネター級、そしてエターナルストーム級で構成されている。
第3艦隊は、月と地球の盾となる布陣を執る。
…そして、
「《滅びの方舟》後方、出現した艦隊中央に超巨大ワープアウト反応ッ!?」
オペレーターからの悲鳴にも似た言葉の直後、それは現れた。超巨大ワープゲートが展開され、ズズズッと出てくる。
そこから出現したのは、スターダスト計画の頂点に君臨する存在だ。
…デカいなんて済まない。月に匹敵する大きさだ。宇宙に溶け込む漆黒で青く輝く線が至るところにあり、中央には巨大な砲身が特徴である球体状の天体兵器。
ブリリアンスではこう呼称されている。―――惑星破壊兵器〈スターダスト〉、と。スターダスト計画の頂点に君臨し、完成形の惑星破壊兵器の周囲に、艦隊が現れた。
300隻のエターナルストーム級で構成される、護衛艦隊である。
以上が、ブリリアンス軍戦力の内、実に9割以上を投入した「絶対破壊してやるぞ」の全力艦隊運用である。
同時に統括司令部、そして戦場にいる全勢力に音声通信が響き渡る。
『伝達!伝達! ブリリアンス本部より緊急伝達!【荒らし殲滅プロトコル】発動!【荒らし殲滅プロトコル】が発動された! 繰り返す! 』
『【荒らし殲滅プロトコル】発動!【荒らし殲滅プロトコル】発動!目標、《滅びの方舟》! その一切を破壊せよ!!』
総司令部内にいる一同は唖然とし、そして絶句した。こんなものを作れるのか、こんな巨大なものを、幾つも…。
ブリリアンス軍を除く全ての連合軍将兵は思う。―――味方でよかった、と。連合軍将兵は勿論、命を軽んじていたオブザーバーすら心が一つとなった瞬間であった。
『撃ち方用意! 目標、《滅びの方舟》!!』
その言葉と同時に、全ての惑星破壊兵器とブリリアンス艦隊はカウントダウンを開始する。超兵器による総攻撃が、今まさに始まろうとしていた。
後書き
【荒らし殲滅プロトコル】
簡単に纏めるならば、害ある超文明を殲滅する為のプロトコルである。発動された際、全てのスヴェート砲搭載艦と、惑星破壊兵器を投入する。
【惑星破壊兵器〈スターダスト〉】
荒らし殲滅プロトコルのために、建造された。建造期間、30年。
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