八条学園騒動記
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第七百六十六話 沙羅双樹の花その十
「叔父さんにです」
「殴ってやろうかですね」
「そんなことを言って」
「堕ちていって」
ベッキーは顔を顰めさせて言った。
「今もですね」
「そうです」
セーラはまた答えた。
「さらにです」
「堕ちていますか」
「餓鬼として」
「酷いですね」
「こうなるのがです」
それがというのだ。
「餓鬼です」
「堕ちるだけですね」
「上がることは相当にです」
その心がというのだ。
「難しいです」
「そうですか」
「一旦餓鬼になれば」
人の底を抜いてというのだ。
「そこからです」
「どんどんですね」
「堕ちます」
「人では救えないですか」
「どんな宗教や哲学でも」
「餓鬼は救えない」
「そうした存在です」
こう言うのだった。
「惨めですね」
「そうですね」
「地獄の亡者よりも」
獄卒達から様々な責め苦を受ける彼等よりもというのだ、仏教の地獄は実にその責め苦が多彩である。
「さらにです」
「惨めである」
「それが餓鬼ですか」
「そうも思います、亡者の姿は人です」
それだというのだ。
「確かに地獄もそうはです」
「堕ちれないですね」
「相当な悪事を犯さねば」
「そうした場所ですね」
「地獄というのは」
「そうです、ですが地獄はです」
こちらはというのだった。
「まだましではと思う時があります」
「お嬢様としては」
「餓鬼道よりは」
「餓鬼道の浅ましさ卑しさを観ますと」
「難しいところですね」
ラメダスは深く考える顔で述べた。
「実際に」
「左様ですね」
「はい、餓鬼道も地獄道も苦しみますが」
「苦しみの内容が違いますね」
「そうですし」
それにというのだ。
「地獄もかなり苦しみます」
「そうですね」
「それも事実で」
そうであってというのだ。
「どちらも常に苦しみます」
「そのことは変わらないですね」
「そして地獄に堕ちるなら」
「相当な悪人ですね」
「善悪を見て」
人間だった頃の行いのだ。
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