金木犀の許嫁
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第三十二話 大阪の野球その十四
「実家に帰られるのに」
「いや、お家はね」
夜空は戸惑いを見せつつ答えた。
「このお家だから」
「今は、ですか」
「それでよく実家に帰ることは」
それはというのだ。
「間違いじゃないかって」
「そんな法律ないですよね」
白華は何でもないといった顔で返した。
「実家に帰るなとか」
「ないけれど」
「それならいいじゃないですか」
「よく実家に帰っても」
「お一人で」
「時間があったら」
佐京は微笑んで言った。
「日帰りでもね」
「帰っていいの」
「いいよ」
微笑んだまま答えた。
「本当にね」
「そうなの」
「何も問題ないから」
「佐京君にしてもなのね」
「そう、だからね」
「帰っていいのね」
「休日にでも」
佐京はさらに言った。
「一人でもね」
「帰っていいのね」
「そうしたらおじさんおばさんも喜んでくれるよ」
夜空達の両親もというのだ。
「だからね」
「帰っていいのね」
「うん」
まさにというのだ。
「夜空さん達がそうしたいなら」
「そうなのね」
「何時でも実家に帰ってくつろいだらいいよ」
「何か実家に帰るって怒って別居とか」
「それはまたその時だし俺そうならない様に努力するから」
夜空がそうしたことをしない様にというのだ。
「安心して」
「喧嘩して、とかもないのね」
「そうしていくから」
「私も喧嘩は嫌いだし」
「お互い穏やかに仲良くね」
「一緒にいる様にしたいわね」
「そうだね、それで本当にね」
「一人で実家帰ってもいいのね」
「夜空さんがそうしたい時にね」
「じゃあその時は。ただ」
それでもとだ、夜空は佐京に返した。
「出来る限りね」
「二人で帰りたいんだ」
「お姉ちゃんとじゃなくて」
真昼を一瞬だけ見てからまた佐京を見て言った。
「佐京君とね」
「俺とだね」
「いいかしら」
「夜空さんがいいって言うなら」
佐京はこう返した。
「一緒にね」
「出来る限りそうしていきましょう」
「そうしようね」
二人で微笑んで話した。真昼達はそう話す二人を温かい目で見ていた。
第三十二話 完
2024・7・1
ページ上へ戻る