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ドリトル先生と奇麗な薔薇達

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第九幕その一

                第九幕  宝石と薔薇
 先生はエンベルグさんがブラウシュタインさんに贈る結婚記念のプレゼントについて他ならぬエンベルグさんとお話しました。
「僕は薔薇をです」
「薔薇ですか」
「はい、このお花をモチーフにしまして」
 そうしてというのです。
「造ったものをです」
「贈るのですね」
「そうしてはどうかとです」
「先生はお考えですね」
「はい、どうでしょうか」
「いいですね」
 エンベルグさんは笑顔で応えました。
「それは」
「そう思われますか」
「僕も」
「実は薔薇の騎士を観て」
「それで、ですね」
「いいと思いましたが」 
 それでもというのです。
「銀の薔薇自体はです」
「それはですね」
「あの作品では花嫁と花婿は結ばれないですから」
 エンベルグさんにもこのお話をしました。
「不倫もあって」
「結婚記念にはですね」
「銀の薔薇はです」 
 作品に出て来るそれはというのです。
「よくないので」
「他のものをですか」
「考えていまして」
 そうであってというのです。
「銀以外の」
「それがいいですか」
「はい、そして」
 さらに言うのでした。
「エンベルグさんはどういったものがいいでしょうか」
「プレゼントに」
「どうでしょうか」
「そうですね」
 エンベルグさんは腕を組んで考えはじめました、先生の研究室の中で先生と向かい合って座って紅茶を飲みながら思考に入りました。
「赤と白を思いつきました」
「色ですか」
「今ふと」
「赤と白、それは」
 先生はその色を聞いてこう返しました。
「薔薇戦争ですね」
「先生の母国の」
「はい、あの戦争ですね」
「赤薔薇と白薔薇ですね」
「ランカスター家とヨーク家の」
「王位を争った戦争でしたね」
「あの戦争を思い出したが」
 それと共にというのです。
「赤は女性、白は男性で」
「夫婦ですね」
「そうなりますね」
「そうですね」
 考えて言ったエンベルグさんも頷きました。
「いいですね」
「そう言われますか」
「ふと頭の中にです」
「赤と白の二色が浮かんで」
「それで、です」
 そうなってというのです。 
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