| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

八条学園騒動記

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第七百六十五話 感謝されずともその八

「人の底をです」
「抜いてしまって」
「そしてです」
 そうなっていてというのだ。
「人でなくなっているので」
「人の力ではですね」
「人が救えるのは」
 セーラは遠い目になって話した。
「生きものまでなのでしょう」
「畜生と呼ばれる」
「彼等までで」
 そうであってとだ、セーラはラメダスに話していった。その話はラメダスだけでなくベッキーも聞いている。
「餓鬼まではです」
「救う力がないのですね」
「人は万能ではないので」
 だからだというのだ。
「やはりです」
「餓鬼まではですね」
「救えないです」
「餓鬼を救えるのは」
「仏教では仏であり」
 そうなりというのだ。
「ヒンズー教ではです」
「神ですね」
「はい」 
 まさにというのだ。
「そうした存在です」
「そうなりますか」
「ですから」
 それ故にというのだ。
「人が餓鬼を救えないことはです」
「仕方ないですか」
「むしろ人は生きものを救えるならば」
 セーラはこうも言った。
「修羅もです」
「救えますね」
「そうなりますね」
「はい」
 ベッキーはセーラに強い声で答えた。
「生きものは畜生道ですので」
「畜生道の上に修羅道がありますね」
「その上が人道です」
「その三つの路を救えるのなら」
「人間は凄いですね」
「そうですね、ですが」 
 セーラはベッキーにそれでもと話した。
「人と修羅、生きものの違いは凄いですが」
「餓鬼よりはですね」
「餓鬼は遥かにです」
 それこそというのだ。
「生きものから遥かにです」
「低い世界にいますね」
「人の底を抜いて」
 極めて分厚いそれをというのだ。
「そしてです」
「さらにですね」
「はい、堕ちるところまで堕ちて」
「生きものよりもですね」
「遥かにです」
 それこそというのだ。
「低い世界にです」
「存在しているのが餓鬼ですね」
「畜生道と餓鬼道の間には途方もない間があります」
「その間がですね」
「人ではです」
「力が及ばないですか」
「はい」  
 そうだというのだ。
「残念ですが」
「そこまで人と餓鬼は遠く」
「生きものと餓鬼もです」
「遠く離れていますね」
「そしてです」
 そうであってというのだ。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧