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ドラゴンボールZ~孫悟空の娘~

作者:setuna
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並行世界の悟林

 
前書き
セルゲーム前に未来悟林のことを尋ねる双子。 

 
セルゲームを控えて休息を取っていた未来悟飯は過去の幼い自分の言葉に驚いた。

「俺の時代の姉さんのことが知りたい?」

「はい、僕…未来のお姉ちゃんのことが知りたいんです」

この時代の姉や父が外出している間、過去の自分が未来の姉について聞きたがったのだ。

トランクスからある程度は聞いているが、未来悟林に関して一番詳しいのは未来悟飯しかいない。

「そうだなぁ、やっぱり歳を重ねていたのもあるんだろうけど…俺達の時代の姉さんの方が迫力はあったかな…」

「やっぱり修行の時は怖かったですよね」

「それはそうさ、姉さんの怖さは下手をしたらフリーザや人造人間より上だしな…でも、あの時の俺は姉さんが何とかしてくれるんだと思っていたのかもな…姉さんが死んで、トランクスの修行相手をするようになってからようやく姉さんの苦労が分かったよ。特に俺は甘ったれだから鍛えるのに苦労したろうなぁ」

もう戻らない自分の時代の過去を思い出しながら未来悟飯は自分の手を見つめる。

見た目は父親と同じくらいの大きさだが、力強さには雲泥の差がある。

「…後悔してるんですか?」

「…姉さんが死んでから後悔ばかりだよ。どうしてナメック星から帰ってきた時から修行しなかったのか、そして超サイヤ人になろうとしなかったのか…父さんが心臓病で死んでから姉さんは俺が塞ぎ込んでいても修行もやっていた。あの時の俺は父さんのことを悲しまない姉さんが薄情に見えてたけど、姉さんはこれからのことを誰よりも分かってたんだ。」

父が死んだと言うことは誰よりも強く頼りになった存在に頼ることが出来なくなった。

つまり地球に何かあった時は自分達だけで勝利をもぎ取らなければならないのに目の前の辛い現実に頭がいっぱいになってそんなことに気付けなかった自分が情けなくて仕方ない。

「そして、父さんが死んで半年後に人造人間が現れて、姉さん以外は手も足も出なかった。俺は逃がされてドラゴンボールで人造人間をどうにかしようと思ったけど間に合わなかった。願いの現場に駆けつけた時にピッコロさんは殺されてしまった。帰ってきたのはボロボロの姉さんだけだったよ」

「………」

「ボロボロの姉さんを連れてパオズ山にブルマさんと一緒に避難させて貰ったんだけど、母さんはボロボロの俺達を見て慌てていたよ。」

「そうですか…」

別の時代の自分達がボロボロになって慌てるのはこっちの時代でも見てきたので納得する。

「あの日から人造人間は街を襲い、人々を楽しむように殺していた。あいつらは街を優先的に狙っていたからパオズ山のような田舎はそれほどじゃなかったけど、俺はそれが許せなくてピッコロさん達の仇を取るために行こうとしたな」

目を閉じれば思い出せる。

ピッコロ達に託されたことも果たせず、無駄死にさせてしまったことが悔しく、そして罪もない人々を笑いながら殺す人造人間に無謀にも超サイヤ人にもなれず、全く修行していない自分が向かおうとした時のことを。

“あ、あいつら…もう許せない!ピッコロさん達の仇を取ってやる!!”

“ま、待つだよ悟飯ちゃん!悟飯ちゃんが闘う必要なんかねえ!!おめえは小せえ子供だ!子供らしくしてりゃあええっ!!悟林ちゃんもピッコロもベジータさんも勝てねえような相手におめえが勝てるわけねえっ!!”

“そうだよ、悟飯ちゃんはパオズ山でお留守番してたら?散々修行サボっていたお前が勝てるわけないでしょ”

未来チチの自分を案じる言葉と未来悟林の冷めた言葉にカッとなった未来悟飯は八つ当たりのように叫んだ。

“僕は…僕はお姉ちゃんみたいにお父さんやみんなが死んでも平気な薄情者じゃないんだっ!!”

“はあ?”

“ご、悟飯ちゃん!何てことをっ!!”

いくら未来悟飯を溺愛していた未来チチもこの暴言には声が荒らんだ。

どれだけ平然を装っていても悟空の死や仲間の死に悲しんでいるのは母親の自分には分かるからだ。

しかし、幼い悟飯にそれを理解しろと言うのは無理がある。

“僕は人造人間を止めに…あうっ!?”

未来悟飯は勢い良く殴り飛ばされ、胸倉を超サイヤ人にもなっていない通常状態の未来悟林に掴まれて抵抗も出来ずに地面に叩き付けられた。

“超サイヤ人にもなっていない。全然本調子でもない私に手も足も出ない癖に思い上がるんじゃないよ!!闘うにしてもそれなりの力をつけてから闘えこの馬鹿!!”

それだけ言うと未来悟林は未来ブルマに歩み寄る。

“ブルマさん、町は危ないからここでしばらく身を隠してると良いよ。せめてトランクス君が大きくなるまでは”

人造人間と闘って分かったのだが、人造人間は気の感知は出来ないが聴覚が常人よりも遥かに強化されているらしく、僅かな物音にすら反応する。

トランクスが泣いてしまうと人造人間に居場所を教えるような物だ。

“分かったわ…しばらくお世話になるわね…”

色々なことがあって疲れたように言うブルマ。

そして泣き始めるトランクスにチチがあやし始めるとすぐに泣き止んだ。

伊達に2人の母親ではないと言うことだ。

“取り敢えず私は修行するよ。人造人間を…あれ?悟飯?まさか…!”

未来悟飯がいなくなっており、未来悟林は急いでニュースで知った人造人間の出現場所に向かった。

“人造人間!もう許さないぞ!ピッコロさんやみんなの仇を取ってやる!!”

2人の人造人間の前に立ち塞がる未来悟飯だが、返ってきたのは人造人間からの嘲笑である。

“ん?おい見ろよ18号、誰かと思えばピッコロと孫悟林に守られていたおチビじゃないか”

“仇?あんたみたいな雑魚に取れるわけないだろ?お姉ちゃんの後ろでビクビクしてたらどうだい?それとも、お仲間の所に送ってあげようか?”

“まあ、そう言うな18号。せっかく遊びに来てくれたんだ。遊んでやろうぜ?そうだなぁ、お前サッカーは知ってるか?ボールを蹴る遊びなんだが、当然…ボール役はお前だ”

“ごっ!?”

次の瞬間、未来悟飯の腹に17号の蹴りが入り、18号に向けて吹き飛ばされる。

“18号、行ったぞ”

“17号、あんたガキだね。さっさと殺っちゃえばいいのに”

“そう言うなよ。頑丈な玩具があるうちは楽しもうぜ、あっさり殺したら暇潰しも出来なくなるんだぞ”

18号が蹴り返した未来悟飯を17号が足で止め、パスを繰り返して未来悟飯は瞬く間にボロ雑巾のようになる。

“く、くそお…っ!”

抵抗らしい抵抗も出来ずに人造人間の暇潰しの玩具にされている未来悟飯は悔しそうに17号に蹴り飛ばされる。

“おいおい、これならピッコロの方が全然強かったぞ?弟子なんだろ?ならもっと頑張れよ、ピッコロもあの世で残念がってるんだろうな”

“…っ!お、お前達がピッコロさんやみんなを殺したんだーーーっ!!”

ぶちギレた未来悟飯が今までと比べ物にならない気を放出して体勢を立て直して18号に殴り掛かる。

顔面に悟飯の拳が入るが、18号は余裕の笑みを浮かべている。

“なーに?もしかしてこれがパンチのつもり?これじゃあマッサージにもなりゃしない。弱いねぇ…弱すぎるよっ!!”

未来悟飯の腹に18号の手のひらが置かれ、気功波で腹を貫く。

“おいおい、大人げないな18号。これじゃあ遊べないぞ?”

“別に良いだろ、こんな奴と遊ぶくらいならゲームの方がマシさ。さっさと殺して他の町に行こう”

“太陽拳!!!”

人造人間に目眩ましをして、死にかけの未来悟飯を引っ張って離脱した。

仙豆を取り出したが、未来悟飯に反省させるためにギリギリまで与えることはせず、死ぬ直前に押し込んでやるとサイヤ人の特性が発動して少しはマシな戦闘力になって復活した。

“やあ、愚弟”

“お、お姉ちゃん…”

“お前のせいで貴重な仙豆が1つ無駄になった。弱い癖に飛び出さないでくれる?”

姉の辛辣な言葉に未来悟飯は俯く。

“あいつらと闘うには超サイヤ人になるしかない。”

“ス、超サイヤ人……?僕には無理だよ…”

“お前ねぇ!勝手に飛び出して迷惑かけておきながら諦めるんじゃないよ!!ピッコロさん達の仇を取りたくないの!?”

“取りたいに決まってるじゃないか!でも僕はお姉ちゃんみたいに特別じゃないんだ!!”

“だったらお前を特別にしてやる!ピッコロさんの扱きが生易しく感じるようにね!!二度と甘ったれたことを口に出来ないようにまずお前を半殺しにして最低限のレベルにしてやる!!”

未来悟林は未来悟飯を何度か半殺しにして仙豆を与えてパワーアップさせてから地獄の特訓をした。

超サイヤ人に変身した未来悟林のサンドバッグにされて耐久力の確保や超サイヤ人になれるように地力の向上。

トランクスが弟子になるまでは何度も地獄を見たが、ピッコロ達を殺された怒りと町の人々を殺す人造人間への怒りでようやく超サイヤ人になることが出来た。

それでも未来の姉には遠く及ばなかったが、トランクスが弟子入りしてから空気が変わる。

“トランクスも今日から修行に加わることになった。私はトランクスを鍛えるからお前は好きにしろ”

“よ、よろしくお願いします。悟飯さん”

最初は心配だったが、未来の姉もトランクスに最初は無理をさせるつもりはないようで最初は武術を基礎を教えていくつもりのようだが、まるでスポンジが水を吸収するようにトランクスは未来悟林の技術を吸収していき、未来悟林の教えにも熱が入っていく。

“いやあ、これは将来が楽しみだ。どっかのウジウジしている甘ったれの馬鹿と違ってな、期待してないがお前も精々頑張れよ。この調子だとお前すぐに追い越されるぞ”

“ぐう…っ!”

流石に年下のトランクスに抜かされるのは情けないと思った未来悟飯は必死に修行をした。

そして未来の姉の扱きを何とか耐えていたが、遂に未来の姉も五体満足でいられなくなってしまい、状況は悪くなっていく一方だったが、時間も足りず、環境も劣悪なこともあって人造人間を超えることは出来ずに未来の姉は最後の闘いに向かって死んでしまった。

話を聞いていた悟飯は複雑な表情を浮かべてしまう。

実際にフリーザが地球に来るまでは共通していた歴史なので、それまでの悟飯は修行の必要性は感じておらず勉強しかしていなかった。

「俺の時代の姉さんは全てを1人で背負って闘って死んだ。俺達が全然頼りにならないから仕方なかったのかもしれないけど、君もこの闘いが終わってからも修行を続けることを考えた方がいい…期待もされず、頼りにされないと言うのは想像以上に辛いものだから」

「は、はあ…」

この時点の悟飯には未来悟飯の寂しさを理解することは出来ず、この時代の未来で大いに失望されてしまうのは別の話。

そして別の場所では西の都のカプセルコーポレーションの庭で悟林もトランクスに聞いていた。

「え?悟林さんですか?」

「うん、トランクスさんは未来の私の弟子だったんでしょ?未来の私ってどんな風だったのかしりたくってさ」

「うーん、そうですね…俺にとって悟林さんは師匠や姉さんや先生や母さんを引っくるめたような存在…ですかね?」

勿論それ以上の感情は今でもある。

しかし、それは幼い過去の師匠に聞かせるような話ではない。

「へえ、ブルマさん。タイムマシンとかで忙しかったから私が親代わりにもなってたんだ」

「ええ、悟林さんからは武術だけじゃなくてたくさんのことも教わりました。薬草や食べられる野草とかは悟飯さんと一緒に悟空さんから教えてもらったと聞きました。」

「そうだよー、そして狩りをしたことがない悟飯ちゃんはもしそれを知らなかったら…」

「「ピッコロさんに荒野に置き去りにされた時に飢え死にしてた」」

悟林とトランクスの言葉が被り、互いに吹き出して朗らかに笑った。

2人の悟飯からすれば洒落になっていないわけだが。

「俺達があの未来で比較的食べ物に困らないでいられたのは悟林さんのおかげが大きいんです。大きい湖に連れていかれて狩りや素潜りと魚を捕獲する方法も教えてもらったし」

その際、未来悟林は服を脱いで湖に飛び込んだので環境故に免疫がないトランクスには刺激が強すぎたのだが。

「今の俺達があるのは悟林さんのおかげです。父さんには悟林さんを目標にするのは止めろと言われても俺にとって悟林さんが一番凄い人だから、今でもあの人に及ばない部分もたくさんあるから」

「そうなの?」

「はい、あの人はどんな時も強かったんです。悟林さんは…あんな酷い時代なのに小さい時からずっと俺達を守ってくれてたんです…あなたも悟空さんも父さんも…強さなら俺の時代の悟林さんよりずっと強い…でも、俺にとって…一番強い人は……悟林さんなんですよ」

「そっか…分かるなぁ、それ。私も未来の私みたいになれるかな?」

「無理して俺達の時代の悟林さんにならなくて良いんですよ。この時代の悟林さんは悟林さんなんですから」

「うん、トランクスさん。セルゲーム…頑張ろうね」

「はい」

悟林とトランクスは空を見上げ、セルゲームの開催まで出来ることをするのであった。 
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