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ポケットモンスター対RPG

作者:モッチー7
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第19話:女装巨乳美男子の漢気!


「目が節穴な雑魚がボスモンスターを務めてるんじゃねえよ。この雑魚が!」
マドノ率いる勇者一行を解雇されたマシカルを散々扱き下ろしたプレートアーマーケンタウルスへの誹謗中傷を、プレートアーマーケンタウルスの眼前で言い放ったグートミューティヒ。
「ただでは殺さん……人間の女が最も忌み嫌う赤子を出産させてから殺してやる。そして、死んでからこの俺を雑魚扱いした事を後悔するが良い」
だが、そんな展開に対しマシカルは色々と不安だった。
「あのー、皆さんはこの私の事を仲間だと勘違いしている様ですが―――」
「でも、あそこにいるザコ糞上司を倒さないと、生きてこのダンジョンを出られないよ」
「雑魚雑魚五月蠅いぞ糞女!」
「それに、あんなに速いモンスター相手に上級魔法を当てる自信が―――」
「何で?」
「何でって、上級魔法の詠唱時間がどれだけ長いか―――」
その途端、グートミューティヒが自信満々にこう答えた。
「なら、時間を稼げは良いだけの話だろ!」
その途端、マシカルはグートミューティヒの背中が巨大で逞しく観えた。
何故なら、マドノ達がマシカルに向かって「詠唱時間は俺が稼ぐ」と言った事が1度も無いからだ。
寧ろ、ンレボウの攻撃回数を無駄に減らした戦犯として見られたのは1度や2度ではない。
それに、名声や手柄が欲しいが故の進言を何度行っても、全て却下されて逆に
「お前は馬鹿か!?功を焦って経験値稼ぎをサボるなんてアホな事を、この俺にさせるのか!?」
と説教を垂れられる始末だった。
「なあ、みんな!」
グートミューティヒ所有のポケモン達が一斉に賛同の鳴き声を上げた。
その光景を観たマシカルは、まるでモンスターがグートミューティヒの命令に従う事を楽しんでる様に視えた。
「喜んでる……モンスターがあの偽乳女装男に命令される事を……」
マシカルにとっては2つの意味で驚いた。
1つは、グートミューティヒがちゃんとチームを統率している事。
マドノの戦闘時に下す命令は単発かつ単純。しかも脳筋。
つまり、メンバーが各々考えて行動しなきゃいけなくなり、連携も最初の内は雑だった。
当然、相手が嫌がる属性で攻撃する事は稀で、結局、膨大な経験値が生み出した圧倒的な攻撃力で力押しがほとんどだった。
対するグートミューティヒは、所有するポケモンの能力をちゃんと理解した上で、自身の観察力に基づいたきめ細かい命令が出来るのだ。
だからこそ、グートミューティヒは常に相手が嫌がる属性で攻撃出来るのだ。
2つ目は、グートミューティヒとモンスターの意思疎通が完璧な事だ。
マシカルは長年、『モンスターは人間の敵』と教えられた。だから、モンスターと会話しよう考えた事は無く、モンスターを従えるなど夢にも思わなかった。
マドノ率いる勇者一行に加わった事で、『モンスターは人間の敵』と言う考えは更に悪化し、遂には経験値を稼ぐ為にモンスターを殺す事に何の罪悪感を抱かなくなった。
しかし、グートミューティヒは『モンスターは人間の敵』と言う常識に堂々と反発し、敵対以外の道を切り開こうとしているのだ。

グートミューティヒが魅せた勇者一行に無い物に魅入られて動けなかったマシカルは、グートミューティヒの叫びで正気に戻った。
「そこの!避けろ!」
ハッとするマシカルの目の前にプレートアーマーケンタウルスが落下し、着地すると同時に衝撃波が発生してマシカルを吹き飛ばした。
「ふん!やはりこの女は弱い。そして俺は雑魚じゃない―――」
ボーッとしていたマシカルを吹き飛ばした事でいい気になっていたプレートアーマーケンタウルスに対し、グートミューティヒは更にダメ押しの様な悪口を言った。
「糞上司より雑魚に敏感に反応するなんて、本当は自覚してるんじゃないの?」
「雑魚は俺ではなくあの女だ!俺は無敵!」
「お前、雑魚のクセに馬鹿か?魅力無いね?」
プレートアーマーケンタウルスは前足を高々と上げながら怒り狂った。
「馬鹿は貴様だぁー!雑魚の意味を知らぬ弱者がぁー!」
プレートアーマーケンタウルスは穂先からレーザーを照射した。
だが、グートミューティヒ達に簡単に躱され、ブビィははじけるほのおを放つが、
「炎が砕けた!?炎は効かないと言う事か!?」
今度はピカチュウにでんじはを放たせるが、これもプレートアーマーケンタウルスには通用しない様だ。
「これで解ったろう。俺は強く、お前達は弱い」
しかし、グートミューティヒはガバイトにすなじごくをやらせた。
「ぐおっ!?」
プレートアーマーケンタウルスにそれなりにダメージを与えた様だが、グートミューティヒは満足しなかった。
「これも違うなぁ……」
グートミューティヒの「違う」によって、マシカルはグートミューティヒの意図が読めた。
(違う?……まさか!こいつの苦手属性を探しているのか!?)
その途端、マシカルの行動は早かった。
「ブリザー」
「む!?」
プレートアーマーケンタウルスはマシカルからの予想外の攻撃に少し驚いたが、残念な事に氷もプレートアーマーケンタウルスにはあまり効果が無かった。
「残念だったな。そんな初歩的な攻撃魔法はこの俺には効かん」
だが、そんなプレートアーマーケンタウルスを更に馬鹿にするグートミューティヒ。
「初対面の敵に最初から上級魔法?お前は馬鹿か?」
が、さっきまでの怒りが嘘の様に鼻で笑うプレートアーマーケンタウルス。
「ふん。上級魔法が使えないの間違いではないのか?見え透いた言い訳は自分を―――」
「雑魚に魅せるとでも?馬鹿な雑魚らしい言い分だね?」
プレートアーマーケンタウルスは再び激怒した。
「雑魚は貴様だあぁーーーーー!」
「馬鹿より雑魚に反応するなんて、本当は自覚してるんじゃないの?」
「くびり殺してくれるわあぁーーーーー!」
プレートアーマーケンタウルスがスピアを5本投げ、それが扇状に広がった。
が、マシカルは何故か追い詰められた気になれなかった。
(敵が……冷静さを失っていく?マドノが魅せなかった芸当だ!)

マシカルは次に風属性の初歩魔法を放った。
「ウィンド」
プレートアーマーケンタウルスは予想外にもがき苦しんだ。
「ぐおおぉーーーーー!?」
どうやら、プレートアーマーケンタウルスの弱点は風の様である。
「ウィンドが効く!?なら―――」
ウィンドを連発しようとするマシカルだったが、グートミューティヒはそれを制止した。
「いや、ここはエクスカリバーだ」
エクスカリバーは風属性の上級魔法だ。だが、
「エクスカリバーの詠唱は少しかかるよ?」
マシカルの反発に対し、グートミューティヒは笑顔で反論する。
「大丈夫!それまでの時間は僕達が稼ぐ!」
そして、グートミューティヒはメタモンにマシカルに変身する事を命じた。
「ついでにウィンド10発とエクスカリバー2発、どっちが強力か試してみようか」
だが、プレートアーマーケンタウルスが慌ててマシカルを攻撃するので、マシカルは詠唱を躊躇してしまうが、
「ぐえぇ!?」
ゴルバットのエアカッターがプレートアーマーケンタウルスの突撃を妨害した。
「この裏切り者共がぁー!」
完全に冷静さを失ったプレートアーマーケンタウルスは、ゴルバットとポワルンに完全に翻弄されていた。
「今の内に詠唱を!」
グートミューティヒの指示を受け、慌ててエクスカリバーの詠唱を始めるマシカルとメタモン。
「退け!貴様ら!」
だが、ポワルンのみずてっぽうを受けたプレートアーマーケンタウルスが何故か大袈裟に苦しんだ。
「ぐおおぉーーーーー!?」
「風だけでなく水にも弱いのか!?」
そんな中、マシカルは涙ぐんだ。
ここまで安心して上級魔法を詠唱したのは、マドノ率いる勇者一行のメンバーだった頃には無かったからだ。
寧ろ、攻撃速度の遅さと攻撃回数の少なさを理由にマドノ達に叱咤説教される事がほとんどだった。
だから、マシカルは早口言葉の練習を繰り返して上級魔法の詠唱時間を短くしようと努力したり、詠唱時間が短い初歩魔法を連発したりして改善を試み、なんとかしてマドノ率いる勇者一行に残ろうとした……
が、残念な事にその努力は実らず、勇者一行での居場所を失い、逆にマシカルは魔法使いの持ち味を見失っていた。
そんなマシカルに魔法使いの持ち味を思い出させたのが、皮肉な事にマドノを敵に回したグートミューティヒだった。
そして、それを証明するかの様にマシカルとメタモンはグートミューティヒの背中に護られながら風属性の上級魔法であるエクスカリバーを放った。
「ぐおおぉーーーーー!」
2本の竜巻に挟まれたプレートアーマーケンタウルスは、バラバラになりながらもがく苦しんだ。
「そんな馬鹿な!この俺が……この俺があぁーーーーー!」
自分の敗死を全く理解出来ないプレートアーマーケンタウルスが敗北を否定する様に叫ぶが、グートミューティヒがまた誹謗中傷を口にする。
「無敵って言うのはな、敵が1人もいないから無敵なんだよ。だから、お前の様な四方八方敵だらけの馬鹿糞上司風情が無敵を名乗る事事態がおこがましいんだよ……この雑魚が」
プレートアーマーケンタウルスは敗死寸前にも拘らず、またしても激怒した。
「ぐおおぉーーーーー!殺してやるぞぉーーーーー!胸がデカいだけが取り柄の糞無能女があぁーーーーー!」
だが、最期の怒号も虚しく、プレートアーマーケンタウルスは粉々になってグートミューティヒ達の頭上に降り注いだ。
それを拾ったアムは、悲しそうに説教を垂れた。
「馬鹿な奴だ。手に余るプライドなんか捨てて、逃げる勇気を奮っていれば、この戦いの結果は変わっていた……筈なのに」
アムは、ダークマーメイドでありながら人間を見下しながら世界を侵略する魔王への憎しみを更に強めた。
プレートアーマーケンタウルスを倒したグートミューティヒは、近くにいたポルターガイスト系モンスターを優しく説得した。
「良いよ。逃げても」
すると、モンスター達は一目散に逃げた。
それを観ていたマシカルは呆れた。
「良いの?これで?」
その質問に対し、グートミューティヒは茶化す様に冗談を言った。
「あいつらが後で人間を襲うかもって?その時は、責任を持って僕が倒す!」
「私が言いたい事はそう言う事じゃなくて―――」
アムがマシカルの頭を掴んだ。
「それ、どう言う意味かなぁ?」
返答次第ではアムとマシカルが殺し合いになりそうだったので、グートミューティヒが説得に入る。
「やめなさい2人共。もう戦いは終わったんだから」
グートミューティヒの言葉に、アムは少々不満げに手を放した。
「解ったわよ」
こんなやり取りを観せられたマシカルは、グートミューティヒがプレートアーマーケンタウルスに勝った理由がますます解らなくなった。
「貴方達、いつもこんな感じなの?」
「そうだけど」
あっけらかんと答えるグートミューティヒに呆れるマシカル。
「経験値稼ぎはどうしてるのよ?」
「そこまで考えてない」
「考えてないって……」
グートミューティヒはふとある疑問を思い出した。
「考えてないと言えば、何で君は勇者一行から追い出されたの?」
「それはアンタが……」
と言いかけ、それは違うと感じたマシカル。
「は言い訳になっちゃうわね。そうよ、呪文詠唱が遅い私が悪いのよ。その欠点をちゃんと補っていれは、攻撃回数を減らさずに済んだというのに」
悲し気なマシカルを前に、グートミューティヒは首を傾げる。
「ますます解らないなぁ」
グートミューティヒの首を傾げながらの疑問の言葉に困惑するマシカル。
「解らない?だから―――」
「マドノ達は、呪文詠唱中の君を守らなかったの?」
「だから、そのせいでンレボウの攻撃回数を悪戯に減らして、その事をマドノは前々から嫌がっていたのよ」
グートミューティヒは、マドノ達の単純脳筋に呆れ果てた。
「何それ?盾役の重要さをまるで解ってないね?」
そんな事より、アムが気になる事が有った。
「そんな事より、これからどうすんの?」
今後の事を何も考えていないマシカルは、ただ残念そうに首を横に振るだけであった。
「何も無いわ。今のところ、勇者一行に戻る方法が無いしね」
「なら、僕と一緒に魔王軍と戦ったらどう?」
予想外の提案に混乱するマシカル。
「一緒にって……私があんた達と!?」
対し、グートミューティヒは笑顔で勧誘する。
「そう!どうせ、呪文詠唱が遅い内はマドノ達と一緒にいられないんでしょ?なら、その欠点が治る迄は僕達と一緒にいなよ。どうせ、1人は寂しいだろ?」
「1人は寂しい……」
グートミューティヒの言葉に、マシカルは取り敢えず決断する。
「マシカル……」
「……はい?」
「それが私の名前よ」
ツンデレ気味ながら、同行の意思を示すマシカル。
それに対し、グートミューティヒはマシカルに握手を求めた。
「なら……これからもよろしく。マシカル」
マシカルは、少し戸惑いながらグートミューティヒと握手した。
 
 

 
後書き
プレートアーマーケンタウルスLv37

HP:2800
EX:3000
耐性:炎、雷、氷
弱点:煽り、風、水
推奨レベル:25

ケンタウルス型プレートアーマー。一見するとケンタウルス系に見えるが、実際はポルターガイスト系。
性格は『誇り高いブラック上司』で人間を完全に見下しており、『人間よりモンスターの方が優れている』と言う魔王の言い分に何の疑いも持っていない。故に、マドノ達の非道さを知るアムに悲観的に馬鹿にされた。
その反面、煽り耐性は低く、雑魚扱いされる事を心底嫌い、実際に雑魚扱いされると怒り狂い冷静さを失ってしまう。
因みに、勇者マドノの予想推奨レベルは43。

攻撃手段

スピアアタック
手にしたスピアによる通常攻撃。

タックル
勢いをつけた体当たり攻撃。

スピアレーザー
穂先からレーザーを照射する。

踏みつけ
着地して相手を踏みつける。踏みつけを回避しても、着地後に衝撃波が発生する。

槍投げ
槍を投げつける。投げる方向や本数、炎の有無など数種類のパターンが有る。 
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