ポケットモンスター対RPG
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第18話:意外な拾い者
直接対決によって改めて星空の勇者マドノに魔王を倒させる訳にはいかないと確信したグートミューティヒとアム。
が、やれる事は魔王軍の横暴に苦しむ人達から魔王軍に占拠されたダンジョンの情報を訊き出すだけ。
一見地味だが、魔王軍に占拠されたダンジョンの奪還もまた、巡り巡ってちゃんと人助けとなるのだ。
現に、グートミューティヒは助けた。
薬草狩りの名所を奪われた青年を。
季節と場所を考えない吹雪に困惑する旅人を。
鉱山奪還を狙う商人を。
漁師が行方不明になる港町を。
山賊に化けたサイクロプスのメスに苦しむ国を。
そうやって人助けを繰り返せば、ポケモントレーナーの地位が向上してポケモンが生き易い世界がやって来ると信じて。
アムもまた、マドノとの直接対決を経て、魔王軍に占拠されたダンジョンの奪還の必要性を思い知った。
マドノ率いる勇者一行にとって、ダンジョンに暮らすモンスターは入手予定の経験値でしかなく、モンスターを生物として見ていないのだ。
だが、アムにとってモンスターも立派な生物なのだ。
それを利己的な私利私欲の為だけに皆殺しにされ虐殺される……
ダークマーメイドであるアムにとって、そんな惨劇は耐え難い屈辱である。
だからこそ、さっさとボスモンスターを倒してダンジョンにいるモンスターに逃走を選択させるのだ。
だが、2人の不倶戴天の敵であるマドノから見れば、2人の行動は経験値稼ぎをサボるお人好しにしか見えない。
だからマドノは油断した。
経験値稼ぎの必要性を知る自分達が、経験値稼ぎを怠りサボる馬鹿に敗ける理由が無いと。
だが、マドノはグートミューティヒを殺せなかった。
この敗北は、マドノに更なる判断ミスへと導き、グートミューティヒを更に有利にしてしまう。
でも……マドノ達は気付かない。
グートミューティヒに敗北した理由を、経験値不足と攻撃回数不足と決めつけている彼らは、ある者を捨てながら経験値稼ぎを目的とした雑魚狩りに没頭した。
戦術の大切さを忘れながら……
グートミューティヒ達と交戦するプレートアーマーケンタウルス(ケンタウルス型さまようよろい)は困惑した。
グートミューティヒに加担するアムの姿に。
「な、何故ダークマーメイドがこんな所に……しかも、何故攻撃されている!」
それに対し、アムは冷静かつ豪胆に言い放った。
「ダンジョンを捨ててここから立ち去れ!そうすれば殺さないし、アンタの手下も見逃してあげる」
プレートアーマーケンタウルスにとっては受け入れ難い内容だった。
「降伏しろだと?貴様には魔王軍に属するモンスターのプライドと言うモノが―――」
「プライドですって?」
星空の勇者マドノの経験値に関する非道かつ残虐な貪欲さを知るアムにとって、プライドなど命より軽かった。
「死体もプライドを持たなきゃいけないって言う心算?」
が、この言い方がかえってプレートアーマーケンタウルスのプライドを傷付けてしまう。
「死体だと……まさか、この俺を殺せるとでも?」
そんなプレートアーマーケンタウルスを視て、アムはもどかしかった。
「自分の口下手が腹立つわ。私がこの前遭った勇者マドノの危険性をちゃんと伝えない私の口下手が」
「危険性?それはまるで、この俺より勇者マドノの方が強いって言ってる様なモノじゃないか!」
グートミューティヒはアムの降伏要求に加担した。
「君も手下のザコモンスターを抱える身のボスモンスターなら、余計な無駄死にを避ける様工夫するのが筋じゃないのか?」
だが、命よりプライドを優先するプレートアーマーケンタウルスは、グートミューティヒの「無駄死」の意味を履き違えた。
「つまり、俺はもう直ぐ無駄死にをして、このダンジョンを人間共に明け渡すと?」
アムは残念そうな顔をしながら首を横に振った。
「そうじゃないそうじゃない。と言うか、牛乗りオーガの手下が皆殺しにされたって話を聴いてないの?」
「皆殺し?誰が?」
「勇者マドノが牛乗りオーガとその手下共を皆殺しにしたのよ。経験値欲しさにね」
が、プレートアーマーケンタウルスはマドノ率いる勇者一行に敗けた牛乗りオーガを鼻で笑った。
「はっ!敗けた?アイツ、そこまで貧弱だったのかよ!」
だが、アムは牛乗りオーガの敗死を笑わない。
事は既に勝敗と言う枠を大幅に越え、モンスターの存亡にまで発展しつつあるからだ。
「魔王とか言う選民詐欺野郎のモンスター過大評価発言なら、さっさと忘れなさい!今はただ、勇者マドノにこれ以上モンスターを殺させない様にする方法を捻り出す事が重要よ!」
が、プライド重視のプレートアーマーケンタウルスは、そんなアムの警告すら履き違えた。
「そんな事、この俺が勇者マドノを殺せば良いだけの話だろ」
アムは呆れ、グートミューティヒはプレートアーマーケンタウルスの過大なプライドにちょっと引いた。
「もし、マドノ達がレベル40を超えるまで君とは戦わない事を選んだら、それでも君は―――」
プレートアーマーケンタウルスはグートミューティヒの警告を最後まで聞かない。
「40!?人間如きが40の壁を超える!?寝惚けもいい加減にしろよ!」
「あんたこそ、その有り余ったプライドをいい加減にしてよ!」
その時、グートミューティヒの背後で物音がした。
「誰だ!?」
そこにいた女魔法使いを見て驚いた。
「お前は……勇者マドノと一緒にいた!」
そう……
マドノ率いる勇者一行のメンバーだったマシカルがここに到着してしまったのだ。
「君がここにいると言う事は……」
アムは最悪の事態を想定してしまった。
マドノ率いる勇者一行による経験値稼ぎを目的とした蹂躙と虐殺が、このダンジョン内でも行われてしまったのではないかと……
「あんたがここにいるって事は……このダンジョンにいるモンスターはどうした!?」
「あんた達まさか、このあたりでうろついているモンスター全員がマドノの経験値になったと思ってるの?」
マシカルの言い分にプレートアーマーケンタウルスは不機嫌になった。
「負けた?この俺の手下が?」
だが、アムの望む答えをプレートアーマーケンタウルスが口にする事は無かった。
「使えない奴らめ。この俺に恥を掻かせやがって」
その途端、グートミューティヒはプレートアーマーケンタウルスを敵と認定した。
「それがザコモンスターを率いるボスモンスターのする事か……糞上司!」
だが、マシカルの言い分は違った。
「何言ってるの?私1人であれを全部倒せる訳無いでしょ」
その言葉に、グートミューティヒは困惑した。
「え?1人?マドノはどうした?」
「萌えないゴミよ……」
「燃えないゴミ?マドノは経験値稼ぎを目的とした皆殺しに没頭し過ぎる所は有ったが、いやしくも星空の勇者だろ?」
その間、マシカルはどんどん涙目になった。
「萌えないゴミは……私の事よ……」
「え……とぉー……もっと……解り易く説明して貰えるかな?」
その途端、マシカルのグートミューティヒに対する怒りが爆発した。
「あんたのせいでしょ!アンタがマドノをおちょくり過ぎたから、この私がマドノ率いる勇者一行を解雇されたのよ!」
予想外過ぎる展開に対し、グートミューティヒは固まりながら無言になった。
「馬鹿!アホ!偽乳オカマ!なんとか言いなさいよ!『私が勇者一行を解雇される原因を作ってごめんなさい!』って言いなさいよ!さあ、早く!」
すると、プレートアーマーケンタウルスは何を勘違いしたのか、マシカルを嘲笑い始めた。
「ははは!自分の力不足を棚に上げてよく言うわ。貴様が強ければ、その勇者一行とやらから解雇される心配も、無かった筈では?」
プレートアーマーケンタウルスの勘違い満載の誹謗中傷に対し、既に勇者一行を解雇されたマシカルは悔しそうに舌打ちする事しか出来なかった。
だが、グートミューティヒがマシカルの代わりに反論した。
「自分の手下共を捨て駒程度にしか見ていない糞上司が偉そうな事を言うな」
グートミューティヒの予想外の怒りに戸惑うマシカル。
「え?」
「この女が弱いんじゃない。マドノのスカポンタンがこの女の本当の価値を知らな過ぎただけなんだよ……視る目が無い糞上司は黙ってろ!」
「私の……本当の価値……」
マシカルが戸惑う中、グートミューティヒがダメ押しの暴言をプレートアーマーケンタウルスに浴びせた。
「目が節穴な雑魚がボスモンスターを務めてるんじゃねえよ。この雑魚が!」
プレートアーマーケンタウルスの体が怒りで震えていた。
「雑魚……だと?この俺が雑魚だと?その言葉……死んでから後悔しろ糞女あぁーーーーー!」
後書き
マシカル
年齢:17歳
性別:女性
身長:158cm
体重:48.8㎏
体型:B70/W59/H83
胸囲:AAAA70
職業:勇者の従者→無職
兵種:ウォーロック
趣味:魔法研鑽、育乳
好物:豊乳に効果的な食材、美容品
嫌物:巨乳自慢、貧乳軽視
特技:魔法、貧乳化(本人は否定)
かつて勇者マドノの仲間だった女性魔導士。だが、超高等魔法を使うとどうしても詠唱時間が長くなってしまう欠点を克服する事が出来なかった事が仇となって勇者一行を解雇され、それをグートミューティヒに見られてしまい彼に渋々同行する。でも、マドノの性格を軽蔑するグートミューティヒと違って勇者一行への返り咲きを諦めていない。
性格は真面目で練習熱心だが、「貧乳」にコンプレックスがあるので文句や愚痴を叫んだり口論になったりする。そんな彼女もまた世間一般的な大衆同様にポケモンとそれ以外のモンスターの判別が出来ない人間だったが、グートミューティヒと旅を共にしていく内に、少しずつポケモンへの差別や偏見が改善されてきている。
名前の由来は、『マジカル-゛=』から。
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