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第58話「へるぷみ〜」

 
前書き
ネオ・代表05−1です。第58話「へるぷみ〜」となります。
どうぞ、ご覧ください。
 

 
 ―――太陽系、第十一番惑星。

 ここは、太陽系最果ての星―――第十一番惑星。ガミラスが設置し修復された人工太陽が輝き、緑色に彩られた地表を今も照らしている。
 星の大部分が氷に覆われている海洋が存在する他、赤道を走る裂け目のような巨大渓谷が特徴的だ。

 ガミラスが戦時中に開拓した星である第十一番惑星はガミラス製の人工太陽によって生存可能な環境が整えられており、ガミラス人以外に地球人も生存可能な環境となっている。
 地球連邦とガミラスの和平後、この星は地球連邦の管理下となった。そのため元々ガミラス軍の警備艦隊が駐留していたのが、現在では地球連邦軍の守備隊が警備の任に就いている。
 そして、この星が地球連邦の管理下となった今では、地球人とガミラス人が一緒に日々の生活を送っているのだ。

 さて、そんな日々の生活を送っている地球人とガミラス人ではあるが、今日はあるイベント―――クリスマスのためにスタジアムの広場中央へ集まっていた。
 その広場には綺羅びやかな飾りつけが施されたクリスマス・ツリーを何本も並べられており、薄橙色や白色、青い肌をした人々が行き交い、談笑したり、露店で何か買ったりなどをしている。その中には、地球連邦に属する軍人―――空間騎兵隊の第7連隊の面々もあった。

 「これが、クリスマスか。オリジナル1号の記憶では知っているとはいえ、実際に目の当たりしているとこれは凄いな」

 そんな様子を、片隅から見渡す黒髪赤眼の女性がいた。外見容姿から察するに20代で、黒スーツに黒ズボンといった会社員がよくするような服装であった。彼女の名前はラウラ、ブリリアンス・ギルドの者で「3号」と呼ばれている女性だ。彼女はブリリアンス大使2号とは違い、容姿は黒髪赤眼を除いて似ていない。ちなみに、仕事を持っていないため自由人である。
 2号と同じく、ブリリアンスでは「コピーアンドロイド」と分類されている。それは、オリジナルであるスヴェートの何もかもがコピーされているからだ。

 ふと、見渡している3号の視線がとある集まりへ目につく。広場の中央に一際大きなクリスマス・ツリーが飾られている辺りで、地球人とガミラス人の子供達の集まりが出来ていることに気づいたからだ。その集まりの中心には車椅子に乗っている、赤い服と帽子に身を包んだ老人の姿があった。

 「あれは確か、サンタクロース。宗教伝承に出てくる聖人が、一般に定着したものだったか」

 伝説上の人物であるサンタクロースは赤と白2色基調のコスチュームを着て、某魔法学校の校長の如く白い髯を生やした老人の姿で知られる。トナカイの引く空飛ぶソリに乗り、クリスマス・イヴに子供たちへプレゼントを配って回るとされるが、時代や地域によりサンタクロース像は異なる。子供が贈りものを貰う時は、靴下を吊るすという習慣があるようだ。

 その集まりの中心で、サンタクロースがガミラス人の兄妹に何やら玩具を与えているようだった。なるほど、このサンタクロースは直接プレゼントを渡すのか。

 妹であろう長い緑髪の幼い少女はこの星の動物を模したぬいぐるみを貰い、彼女の兄と思われる少年は宇宙戦艦ヤマトの模型を手にしている。そうして、地球人、ガミラス人問わず子供たちに玩具を渡していた。貰った子供はキャッキャと嬉しく、貰うのは待っている子供は待ち遠しい様子ではしゃいでいる。

 なるほど、これがサンタクロースか。にしても、と3号は思う。あのサンタクロース、車椅子なのは何故だろうか。足が悪いのだろうか、それとも歳だからか。どちらもだろうなぁ、とソフトクリームを一口食べた3号はそう思った。

 「歳といえば、1号は年齢を気にしていたな」

 御年80歳となるギルド長だが、未だに見た目は20代と若い女性のまま。ギルド長は、「老衰で死ぬのは、いつになるか」と嘆いていた。確かに、老いず衰えないのは異常だ。設定で、そのようなことは一切していないからだ。彼女の外見はリアル―――つまり現実世界そのまんまとなっているが、まさかそれだけでこの異常は起こり得ないだろう。生来からとかなら分かるが。

 そういえば、と3号は思い出した。最近、ギルド長は事故ったのだ。何がって、戦闘機を操縦していたギルド長は誤って脱出ボタンを押してしまい、宇宙空間を漂ったのだ。しかも、生身でだ。そう、パイロットスーツを着用していなかったのだ。そのまんま死ぬかと思いきや、平然としていたと聞く。そんなギルド長は宇宙遊泳していたようだが、「漂うことしか出来なかった」とのこと。どうやら彼女は、宇宙空間を生身で存在出来るようになったようだ。

 確かに異常だなぁ、と3号は今でも思っている。ギルド長はそのうち宇宙遊泳とかだったり、バトル世界のように思うがまま空や宇宙空間を飛翔出来るようになるのではないだろうか。自分もそれ出来ないかな、と不思議と3号は羨ましくなってしまう。

 「…?」

 3号は、その視線をとある軍のビルへと向ける共に見上げる。そのビルから、視線を自分へ向けられている訳ではない。ただ、自分がたまたま視線を向けただけだ。
 そのビルの高い階に存在するベランダには、私服姿である長い黒髪の女性がいた。ベージュ色の上着を着ている、若い女性だ。考古学者、なのだろうか。にしても何故、大きく両手を広げ空を見ているのだろうか。
 あぁ、と彼女は理解した。天上に御わす神へ、祈っているのだ。信仰の自由だからな、好きにやるといい。

 その時だった。賑わう広場の喧騒を覆い被さるように、突然と警報音が鳴り響いたのだ。

 「…ん?」

 いったいなんだろうかと、ソフトクリームをたったいま完食した3号。どうせ誤報だろうと笑う3号は見渡すと、首を小さく傾げた。
 軍人が、避難誘導をしているからだ。何故に避難誘導をしているのだろうか、今日は訓練だったか。疑問に思う3号に、ポニーテルヘアが特徴的な女の軍人から声が掛かる。

 「アンタ何してんだ、さっさと逃げるよ!」

 逃げるって何に、と問おうとした3号は視線を空へ向けた。空気を裂けるような音が、聞こえたからだ。そして、”それ”を目視する彼女は、フッと諦めの笑みを浮かべた。どうやら私、死ぬかもしれない。守備隊はどうした守備隊は…あ、そういえば現在パトロールしてるからいないんだった……。

 3号は目視している”それ”を見て、棒読みで助けを乞う。

 「へるぷみ〜」
 
 目視した”それ”は、カブトガニに似たガトランティスの攻撃機―――〈デスバテーター〉であった。それは1機2機ではなく、多数の〈デスバテーター〉がスタジアムの上方を我が物顔で空を飛んでいる。そして、続々と降下しミサイルを放とうとしていた。

 「あぁもうっ、アンタ行くよ!」

 「へるぷみ〜」

 「今助けてるでしょうが!?」

 女の軍人に手を引かれた3号は、3回目の「へるぷみ〜」を口から出したのだった。

 

 ―――ブリリアンス・ギルド駐地球大使館。

 「最高機密文書、早く本部に届かないかなぁ」

 本日の仕事を終えたブリリアンス大使―――2号は笑みを浮かべ、1人でチェスをしながら口にした。



 ―――《ブリリアンス星》。

 「星は青かった」

 宇宙服を着用していない白髪オッドアイの女性―――ギルド長スヴェートは、はいチ〜ズ!、と自撮り写真をしていた。なお、その直後に突如と自然落下したギルド長を救うため、救助隊が即座に派遣された。

 「し、死ぬかと思った…」

 そして無事に、真っ青な顔をするギルド長は助かった。その後、集中治療室へ運ばれた。彼女は本当、何をしたいんだろうと呆れた想いでいっぱいなスラクルであった。 
 

 
後書き
さてさていかがだったでしょうか。至らないところもあるかと思いますが、温かい目で観ていただけると嬉しいです。ご意見、ご感想お待ちしております。次回もお楽しみに!  
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