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第57話「〈ヤマト〉が反乱したのか」

 
前書き
ネオ・代表05−1です。第57話「〈ヤマト〉が反乱したのか」となります。
どうぞ、ご覧ください。 

 
 ―――ブリリアンス・ギルド駐地球大使館。

 「〈ヤマト〉が反乱したのか」

 黒サングラスを常に掛けている女性―――リンガルフォーネットこと2号は、コーヒを飲みながら映像を観ていた。

 元〈ヤマト〉クルーが宇宙戦艦ヤマトに集結し、兵士の手より逃れ、地球から旅立った。
 木星付近の宙域で演習していた30隻あまりの波動砲艦隊に上層部より「〈ヤマト〉攻撃命令」が下り、山南が座乗するアンドロメダ級一番艦〈アンドロメダ〉は〈ヤマト〉を追った。
 演習中の波動砲艦隊から発艦した【山本玲】以下の戦闘機乗りが追撃隊を突破し、ガミラス大使館の駐在武官クラウスと共に〈ヤマト〉へ合流。
 〈アンドロメダ〉は主砲を斉射するも、〈ヤマト〉はアステロイドリングで攻撃を防いだ。
 〈ヤマト〉と〈アンドロメダ〉は至近距離で擦れ違うも、〈アンドロメダ〉は後部砲塔の三連装ショックカノンを撃つことなく主砲を向けていたのみ。
 地球の司令部より〈ヤマト〉の追跡を止めろと太陽系全域の艦隊へ命令が下され、〈ヤマト〉に対する嫌疑が晴れたと藤堂より告げられた。
 〈ヤマト〉では航空隊の隊長を務めた【加藤三郎】が、〈ヤマト〉へ合流。

 〈ヤマト〉に集結した者達は、幻を見た。その幻はメッセンジャーであり、それはテレサが啓示の際に近しい故人をメッセンジャーにするのだ。

 「テレサか」

 2号は改めて、テレサについて思い起こした。テレサのその正体は、文明の極致として精神力を物理的な力に変換可能になったテレザート人が肉体を捨て去り一つに結集した精神体のみの集合知的な存在で、自分達が住まう通常世界よりも更に高次元の世界にいる。

 「〈ヤマト〉を呼んだのは何故だろうか」

 おそらくテレサは、高次元世界に身を置いているが故に未来をも見通せる存在。彼女自身が動かないのは、歴史改変を避けるため過度な干渉を避けている為と見てよいだろう。〈ヤマト〉を呼んだのも、あくまで自らが視たこの宇宙の未来に従った結果か。

 「となると、本部はどうするのか」

 1号―――ギルド長スヴェートには、既に〈ヤマト〉反乱の理由―――テレサについて報せてある。ギルド長はテレサをこの目で見たいの一心で艦隊を動かすだろう。自分もその気持ちではあるが、駐在大使がそんな事をするのは流石にどうかと思う。

 「まぁ、1号はやらないだろう。間違いなく」

 ブリリアンス・ギルドの絶対的な頂点に君臨するギルド長だが、ホムンクルスであるスラクルが誕生して以降は彼女がブリリアンス・ギルドを実質的に統括している。つまりは、ブリリアンスの運営や統治そのものには関わることは無いのだ。とはいえ、基本的には全ての行動に対し、最終としてギルド長スヴェートの許可を必要とする為、全く関わらないということはない。

 今回のこのテレサの件はどうするかだが、ギルド長の権限で関わることは先ず無いだろう。そもそもテレサの件に関しては、既にギルド長も知るところ。介入でもすれば、未来は変わってしまうから。もしも介入する事があるとするならば、ガトランティスが地球へ攻め込んで来た時だ。

 「白色彗星がガトランティスの本拠地、なんて笑える話だ」

 2号は笑い声を上げた。テレサが放ったエネルギー波の他に、白色彗星が地球へ一直線に向かって来ているが、それがガトランティスの本拠地なんてあり得ない。そもそも白色彗星は地球に到達するのに、1万年も先の話なのだ。地球を侵略するつもりなら、ワープする筈だ。つまり、それがないということは、本拠地は別の場所にあるということである。

 「仮にやって来たら、1人も残らず殲滅するだけだ」
 
 地球が波動防壁を標準装備し、ガミラスも防御兵装―――ゲシュタム・フィールドを標準装備しつつあるのに対し、一方のガトランティスにはそれが無い。物量で攻め込んで来るならば、地球には波動砲艦隊がある。更には、ブリリアンスには惑星破壊兵器が存在するのだ。こちらが圧倒的な優勢で、ガトランティスが大きく劣勢。

 「負ける気がしないな」

 もしも白色彗星が移動型の人工要塞であっても、ガトランティスの敗北は必須だ。仮にそうだとしても、波動砲艦隊がそれを宇宙の藻屑へと変えてくれる。その瞬間こそが、波動砲艦隊の前には無力であると証明される記念すべき日となる。その際は赤ワインでも飲んで、「ガトランティスの滅亡に乾杯!」でもして眺めよう。最高に美味しいだろうな。

 「そう思ってしまうと、ガトランティス人が可哀想になるな。その時は、石化かカーボン冷凍でもして本部に展示するのも…」

 いやいや、と首を横に振るう2号。

 「人体実験でもするのもよし、生体研究するのも捨てがたい。そもそも相手は人造人間だ、問題ないだろう。他文明を圧し根絶する存在なのだから、なんら問題は無い」

 人体の神秘について知識の理解を深め、色々と勉強が出来るのは実に素晴らしいことではないだろうか。クロインが人間と知ったギルド長は収容していたクロイン人を開放し、軍人ではなく死刑囚を収容して実験すればよかった、と落ちこんでいた。それは、自分の記憶にコピーされている。

 「考えれば考えるほど止まらない」

 ウキウキとなった2号はペンを持ち、紙に次々とアイデアを書き記していく。やがて書き終えた2号はペンを置くと、数々のアイデアが書き記された紙を茶封筒に入れた後、漆黒のアタッシュケースへ入れて指紋認証と暗証番号を行った。

 「私だ、直ぐに来てくれ」

 通信ボタンが押されると、生体アンドロイドとB1バトルドロイドが2号のもとへとやって来た。真面目な顔で、彼女は告げる。

 「この最高機密の文書を、直ぐに《ブリリアンス星》本部へ届けて欲しい」

 「了解しました、直ちに」

 アタッシュケースを受け取った生体アンドロイドはB1を引き連れ、足早でこの場を後にした。その後ろ姿を見ていた2号は、ニコリと笑みを浮かべていた。

 そして、改アクラメータ級と護衛艦―――4隻のAC721重量級Ⅱ型駆逐艦が飛翔し、大使館を後にする。向かう先は、《ブリリアンス星》だ。 
 

 
後書き
さてさていかがだったでしょうか。至らないところもあるかと思いますが、温かい目で観ていただけると嬉しいです。ご意見、ご感想お待ちしております。次回もお楽しみに!  
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