| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

現実世界は理不尽に満ちている!

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第43話

 
前書き
ネオ・代表05−1です。第43話となります。
どうぞ、ご覧ください。
 

 
 「敵艦隊が後退し、浮遊大陸へと引き返していきます」

 「後退?」

 古代は問い返す。モニターの一つに視線をやると、ガトランティス艦隊は確かに後退している。この報告に違和感を感じた彼は、若いながらも激戦を潜り抜けた身であるからこそ感じた違和感だった。

 「このタイミングでの後退は妙だ」

 古代はキャプテン・シートから腰を上げ、艦橋の窓へも目を走らせる。反転し後退しているガトランティス艦隊からの砲火は、減少傾向にある。数に劣り被害も大きいガトランティス艦隊であるが、直感的に未だ戦闘士気は高い状態を維持しているよう感じる。何か、勝算でもあるのだろうか…。

 「ガミラス艦隊、追撃する模様」

 オペレーターの報告を聞いた古代は、追撃するガミラス艦隊に視線を向ける。改ゼルグート級装甲突入型〈ケルベロスⅠ〉を筆頭としたガミラス艦隊は、確かに追撃をしている。その艦隊の内の半分は防御兵装を消失したようで、小破以上の被害を受けていたが、足を止めることなく両舷の開口部を光らせていた。

 古代は追撃するガミラス艦隊を指差しつつ、その視線を相原に向けた。

 「ガミラス艦隊旗艦との直接回線を開け」

 了解、と声高に言った相原はコンソールを操作する。

 古代はキャプテン・シートへと腰を戻したと同時に、追撃するガミラス艦隊に再び視線を向けた。砲撃は止み、先程とは打って変わった静けさがこの戦場を包み込む。
 後退するガトランティス艦隊を睨みつけている中、古代は思う。ガミラス艦隊旗艦との直接回線が開かない。地球連邦艦隊の一艦長の進言など、第38辺境任務部隊司令官―――ルーゲンスは相手をするつもりがないのだろう。

 そう思っていた時だった。電探士が声を上げた。古代は電探士に顔を向けたと同時に、電探士の男は報告した。

 「敵ガトランティス艦隊の奥より、巨大な未確認物体!」

 「巨大な未確認物体?」

 その報告に、古代は食い入るように巨大な未確認物体を凝視する。古代だけではない、誰もがそれを凝視している。

 その未確認物体は岩塊で出来た十字のシルエットをする構造物で、全長800mは下らない。その十字のシルエットをする未確認物体は、後退するガトランティス艦隊の中央を逆進―――つまりは連合艦隊へ向けて前進して来ているのだ。

 しかも、だ。よく見れば戦闘機にも満たないであろう、赤色に光る小さば光点が複数、その未確認物体の周囲でリングを形成し回転している。
 
 「な、何だあれは…!?」

 古代は驚きのあまり、キャプテン・シートから身を乗り出してしまう。無理もないことだ。凝視しているそれは、訳の分からぬ物体なのだからだ。
 ガトランティス艦隊よりも前面に位置すると、変化が訪れた。岩塊の表面は突然とひびが入り、小さな岩が剥がれ始める。光点の動きに引っ張れるかのように、螺旋の軌道を描いて広がっていく。更に幾つも亀裂が走り、より大きな岩が剥がれる。十字の岩塊シルエットが崩れて始めているのだ。やがて完全に砕け散り、周囲へと飛び散った。

 まるで、内側から外へ向けて圧力が解放されたかのようだ。大小様々な岩石が周囲に向かって飛び散ったと同時、岩塊に擬態した人工物―――十字の岩塊シルエットそのままの宇宙船が姿を現した。

 これまで遭遇した敵軍のどの戦闘艦より大型なものが、艦首を上に向ける形で岩塊に収まっていたのだ。ガミラス艦と似た艦体色をするその敵艦は、艦首を前方に倒れる。艦艇本来の姿勢に戻ったのだ。
 
 十字のシルエットを特徴づけるのは艦の左右に延びる翼状の突起部で、潜水艦の安定翼のようにも見えた。一対の安定翼らしきものを備えている他、艦底部にはT字の構造物4つが一列に並ぶ。甲板には、聳え立つ独特な艦橋がある。独特なその艦橋は、固定の艦橋砲塔を三層からなる三連装が重なっていた。
 
 武装はそれだけではない。甲板に装備されているガトランティス特有の輪胴砲塔三基を主兵装にし、これまでのガトランティス艦よりも大型のものを装備している他、中小様々な速射輪胴砲塔が船体各所に装備されている。

 「機関波動パターンはガトランティス特有のものと一致。あれは、間違いなくガトランティスの戦艦です!」

 オペレーターが報告したほぼ同時に、南部は身震いしそうになりながらもその敵艦の威容に洩らす。

 「大戦艦…」

 口を突いて出た言葉だったが、まさにそうとしか形容のしようがない。大きいだけではない。ブリリアンスのエリス級l級Ⅱ型以上の全長と砲塔を持ち、ガミラスの改前のゼルグート級に匹敵する全長と火力を持っていることは明白だ。

 ガトランティスの大戦艦は、ガトランティスではこう呼ばれている。―――カラクルム級戦闘艦、と。

 だが、それでも追撃するガミラス艦隊の足は止まらない。〈ケルベロスⅠ〉を正面に押し立てながら、ガトランティスの大戦艦―――カラクルム級戦闘艦へと向かっていく。それは、恐るべきものは何も無いといわんばかりの進撃だった。

 蛮族、と吐き捨てたガミラス第38辺境任務部隊司令官―――ルーゲンスの声が、古代の脳裏に過ぎる。嫌な予感がする。その嫌な予感は、彼が思った通りとなった。赤い光点が、カラクルム級の艦首へ集まり始めていた。

 「何を、する気なんだ…?」

 赤い光点は異様な動きへと転ずる。艦首前方で3つの輪を描き、猛然と回転し始めた。明らかに、何らかの兵器を用いる前触れだった。
 
 古代は声高に命じた。

 「〈ケルベロスⅠ〉を呼び戻せ!」

 古代に、相原は応える。

 「先ほどからやってま…」

 続けようとした相原の言葉は、途切れてしまった。誰もが、”その光景”を目撃したからだ。猛烈な勢いで回転していた赤い光点から、ビームが噴き出した。エメラルドグリーン色の光がシャワーのように降り注ぎ、それは周囲に撒き散らす。

 いや、シャワーなどという生易しいものではない。暴風雨と雷撃が降り注ぐ嵐だ。防御兵装を装備しているとはいえ、ガミラス艦の多くはそれを消失し、ミゴヴェザーコーティングによる防御拡散も出来ず、その多くは船体を貫かれた。改ゼルグート級〈ケルベロスⅠ〉は防御兵装が健在なれど、この攻撃の前にいつまで保つか分からない。

 「先行していたガミラス艦隊、壊滅寸前です!」

 この事態に、流石のルーゲンスも艦隊への転進を命じていた。既に先行していたガミラス艦隊は、後退を開始している。
 
 エメラルドグリーン色のシャワービームは、こちらに届いていない。だが、カラクルム級の艦首から渦を描くように放射されるシャワービームは、爆発と閃光を生成しながら距離を詰めつつある。
 その後方では一旦退いたガトランティス艦隊が、踵を返し再び進攻を開始していた。砲撃を仕掛け、転進する友軍艦を狙い撃っているのだ。
 ガミラス、ブリリアンスに被害が生じ、地球連邦側にも被害が相次いでいた。

 このままでは全滅してしまう、古代がそう思っていた時だった。突然と、艦橋に警報が鳴り響いた。この警報は…。

 呼吸を整えたと同時に、相原は声を張り上げた。

 「司令部より緊急通達です。《プランA》発動。全艦隊、速やかに第三警戒ラインまで後退せよ」 
 

 
後書き
さてさていかがだったでしょうか。至らないところもあるかと思いますが、温かい目で観ていただけると嬉しいです。ご意見、ご感想お待ちしております。次回もお楽しみに!  
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧