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第37話「来訪」
前書き
ネオ・代表05−1です。第37話「来訪」となります。
どうぞ、ご覧ください。
―――地球、新首都。
西暦2201年 某月某日。
この日、地球連邦政府が警戒していたと同時に、予測していた事態が発生した。
新首都が置かれている日本に存在する、地球連邦政府本庁・会議室。この部屋には、地球連邦の要人達が集っていた。彼らは着席しており、口を閉じている。そんな中、だ。1人のアメリカ人の男が口を開いた。
「…さて、状況を確認させてもらおうか」
地球連邦初代大統領を務めているアメリカ人の男―――ペネット・アントニックは、この場に集う面々へ告げる。
小さくもよく響く声音に、重厚な響きを持っているかのように錯覚してしまう地球連邦の要人達。危急の事態により集められた彼らはペネット大統領の言葉を聴くや、現在の地球連邦が置かれている事象を説明する姿勢を執った。
「では、私から説明させていただきます」
最初に口火を切ったのは、NASA長官を務めている壮年の男―――ルグナン・フェルメールだ。地球上のどの国と組織よりも早く宇宙艦隊を創設し、永らく宇宙に関する利権を独占していた。
10代目長官であるルグナンは、息を整えたと同時に続けた。
「本日未明、地球外から電波を受信しました。同電波は明らかに人工のものであり、それには地球の英語で用いられたメッセージが確認出来ました。内容を要約すると、『こちらは、ブリリアンス国。我々は戦いを望んでいない。本邦は貴国と国交関係を結びたい』で、二週間後に来訪するとのことです」
NASA長官ルグナンの説明と共に、ペネット大統領を含む要人の手元のタブレット端末に情報が提示される。
『……はぁ』
誰もが、端末上に映る情報を凝視しつつ嘆息した。約半年前ガミラスが接触し、かつての敵が同盟国となった。しかし、である。ガミラスだけで接触が終わるとは、考えていない。第二第三の異星人が接触するかもしれない。それは、地球連邦でも予測なされていた。
「英語とはな」
短くそう呟いたペネット大統領に、一同は頷く。短くも含みがある言葉の意味を、理解しての頷きだ。メッセージは英語で用いられているということは、ブリリアンスは地球文明の情報収集をしていたことになる。
実をいえば、だ。宇宙戦艦ヤマトからブリリアンスの艦隊と遭遇したという報告が、イスカンダル航海からの帰還と共にされた。
とはいえ、である。宇宙戦艦ヤマトのクルーが地球文明の情報を渡していないことは分かっているし、そのブリリアンス艦隊を指揮する白髪オッドアイの若い女性―――スヴェートと名乗る異星人から問われていないことも分かっている。
であれば、だ。…いつから、という疑問が強く生まれる。ガミラスとの戦争開始時からか、途中からか、もしくは……自分達が生を受ける前から情報収集をしていたのか。考えれば考えるほど疑問は生まれ、ある者は身震いしてしてしまう程だ。
ペネット大統領は、タブレット端末に映る情報を観つつ思う。
「外交団艦隊の艦艇数はどれ程か今一度確認させてもらうが、21隻とは少なくないかね」
約半年前やって来たガミラスの外交団は100隻の艦隊であり、構成は宇宙戦艦ヤマトが苦戦した【ゼルグート級一等航宙戦闘艦】を旗艦とし、僚艦には【ガイデロール級航宙戦艦】と宇宙戦艦ヤマトが唯一砲火を交えていない【ハイゼラード級航宙戦艦】で、外交団艦隊の大多数は【メルトリア級航宙巡洋戦艦】と【ケルカピア級巡洋艦】だった。
一方で、だ。ブリリアンスの外交団艦隊は21隻で編成されている。数においてはガミラスの外交団が上で、ブリリアンスの外交団はそれを下回っている。
しかし、だ。必ずしも数が全てではないのは、歴史が証明している。
「ペネット大統領。ブリリアンスの艦艇はどれも大型で、ガミラスの標準艦を上回っております。21隻なのも、”例の艦”が含まれている関係かと」
そう口にしたのは、地球連邦防衛軍の統括副司令長官を務める男―――芹沢虎鉄だ。特徴的なカイゼル髭と堅物で強面な容姿は、厳格な人柄だと感じさせる。藤堂統括司令長官のサポートを行っている立場であり、”ある計画”を推進している。
芹沢虎鉄は手元の端末を操作し、”例の艦”をスクリーンに映した。誰かの唾を飲み込む音が、この部屋に行き渡った。
全長752m、全幅460m、全高183mである”例の艦”は楔型の船体を持ち、船体中央後部から突き出したタワーが特徴的だ。沢山の武装を装備するその艦は、ブリリアンスではこう呼ばれている―――アクラメータ級改 戦闘航宙艦。シャンブロウで遭遇した艦隊旗艦だ。
「……」
なるほど、とペネット大統領は理解する。確かにこの艦艇が含まれているならば、ブリリアンスの外交団艦隊が21隻なのは頷ける。となると、だ。今回のこの全長700m級の楔型艦は旗艦のみか、旗艦を守る全長700m級の楔型艦が多数なのか、それは分からない。
「芹沢統括副司令長官」
「はっ」
「最悪の事態を想定した準備、よろしく頼む」
「はっ!」
無論、攻撃するつもりなど微塵もない。しかしだ。最悪の事態を想定しなくてはならない。友好と見せ掛けて実は「侵略しちゃうぞ♪」なんてことだってあり得る話。
…まぁブリリアンスから送られたメッセージはあまりにも友好的過ぎる為、ペネット大統領を含む要人は「うわぁ…」と少し引いてしまう程の内容だった。つまりは、侵略するという意図を感じさせないのだ。
ペネットは席を立ち上がり、柔らかい笑みを浮かべながら口を開く。
「諸君、友人を歓迎する準備を始めよう」
……
…
―――地球。
そして、2週間が経過した。
「重力波を確認しました!…これは、ワープアウト反応です!」
遂に、この時が…。
ワープアウト反応が確認された直後、ブリリアンスの外交団艦隊は現れた。
20隻のアクラメータ級改 戦闘航宙艦が、周囲に重力波と輝く青色の粒子を撒き散らしながら出現する。主を守るよう展開しているのだ。
地球連邦は中央に佇むブリリアンス外交団旗艦―――白銀の戦艦を注視した。美麗なフォルムを持つ外交団旗艦に、将兵と要人はあまりの美しさに魅了されてしまい、思わず感嘆の息を漏らした。
全長1000mを超えるその艦艇は流線形の形状を持ち、艦種部分は剣のような鋭さを持つ。船体後部は白鳥の翼を思わせる推進機群と最新にして一対の試作機関―――ハイブリッド式重力ブリリアンス・ドライブが装備され、艦尾部上面には1基の重力ブリリアンス・ドライブ、逆三角形を構成するように搭載されている。艦橋は後部船体下面の最前部にある全面ガラス張りの風防状構造物内部にゴンドラ式に釣り下げられており、地球は知らないが、ワープや戦闘の際には艦橋のみ上昇し内部に収納される。
船首部分に金色の紋章があしらわれいる白銀の戦艦は、ブリリアンスではこう呼ばれている。―――ブリュンヒルト級一番艦〈ブリュンヒルト〉、と。
ブリュンヒルト級一番艦〈ブリュンヒルト〉は、燦然と輝いていた。
―――ブリリアンス外交団旗艦〈ブリュンヒルト〉。
「ああっ…ああっ…!…なんてことだ、涙が止まらん」
「ハンカチをどうぞ、ギルド長閣下」
「ありがとう」
懐かしき青い星、地球!あぁ、なんて綺麗なんだ。
かつて地球にいた頃は、宇宙からその姿を見る事になるとは思ってもみなかった。地球の姿は、写真やテレビで見るよりもずっと綺麗だ。
さて、地球よ。
実に何年ぶりかな、77年ぶりだったかな。
「ただいま」
地球よ、私は帰ってきた。艦隊による歓迎、心より嬉しいよ。あ、また涙が…。心が踊るスヴェートであった。
後書き
地球連邦大統領の名前、もし間違っていたら、教えていただけると幸いです。そういえば地球連邦大統領の名前って劇中で出てたかなぁ、と思うこの頃。
ーーー
さてさていかがだったでしょうか。至らないところもあるかと思いますが、温かい目で観ていただけると嬉しいです。ご意見、ご感想お待ちしております。次回もお楽しみに!
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