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第17話「初めまして、諸君」
前書き
ネオ・代表O5−1です。第17話「初めまして、諸君」となります。
どうぞ、ご覧ください
日本海軍の沈没戦艦―――大和は、森林の中で静かに佇んでいた。……だからどいうことだ?不思議でいっぱいなんだが?
BXコマンド・バトルドロイド部隊に守れながら甲板上を歩くスヴェートは、頭を巡らせるがどうやっても答えが出ない。
周辺に海は無く、沈没戦艦大和が遮ったと思われる河川も無く、突如として此処に出現したかようにジャングルの真ん中に存在している。
かつて此処は海であったが、地殻変動などによって運ばれ、その後周囲の水が干上がってしまいこのような地形になった………というかなり無理のある仮説も検討してみたスヴェート。
しかし、だ。
それにしてはこの沈没戦艦、風化はあまり進んでいないようにも見える。此処に来て、半年にも満たないくらいの経過具合だろう。
上部構造物各所には草木が絡みつつあったが、艦全体が覆われてはいる程ではなかった。タラップは腐っておらず、木製で出来た甲板も腐っていないどころか、新しいと錯覚してしまう程にしっかりとしていた。
「救助に来たぞー!誰かいないかー!……反応は無いか」
人っ子一人いない。どうやら、周囲に人気は無いようだ。
人気は全く無いが乗組員を揃え燃料である重油を入れて海に浮かべれば、今にも動き出しそうな雰囲気は保っていた。此処は海ではないから動こうにも動くことなんぞ、そもそも無理なのだが。
「大和の艦橋か、映像ぶりだな」
スヴェートは艦橋を見上げる。
艦橋はツタが絡まっていたが、あまり絡まってはいないようだ。
「スヴェート様」
少し遠くから声が聞こえたスヴェート。
彼女は艦橋から視線を外し、声が聞こえた方向に切り替えた。
「此処カラ入レソウデス」
入口を探していたBXコマンド・バトルドロイドの1体が、E−5ブラスターライフルを片手で構えつつ、スヴェートに手を振っていた。
「よくやった」
声が聞こえた方向に切り替えたスヴェートは、入口―――ハッチを見つけたBXコマンド・バトルドロイドに労いの言葉を掛けた。…片手で銃を持ちながら手を振ってきたBXコマンド・バトルドロイドの姿を見た私は、思わずビクッと震えそうになってしまったのは内緒だ。
「部隊を此処甲板に集まり次第、突入を敢行する。キャプテン、指示を」
「ラジャー、ラジャー」
BXコマンド・バトルドロイドのキャプテンは、集結の指示を出した。少しして、上部構造物直下に位置するハッチ前に全てのBXコマンド・バトルドロイドが集まった。
「これより突入を敢行する。扉を開けろ」
突入の指示がスヴェートより下された。
突入が始まるが、先ずは扉を開けてからだ。扉のハンドルを1体のBXコマンド・バトルドロイドが回した。ロックされていなかったのか、あっさりと扉は開かれた。
「突入!」
直後、BXコマンド・バトルドロイド部隊は、Eー5ブラスターライフルの銃身下部にあるフラッシュライトを点けて突入していった。スヴェートもフラッシュライトを点け、彼らに続いた。
「誰かが待ち構えている、という訳ではないようだな」
独り言のように呟いたスヴェート。
彼女の言う通り、待ち構えられていることは無く、入れば中には薄暗く細い通路があるだけで、障害物は無い。ただ通路を照らす電球があり、電球から放たれる照明は赤い。通路の一番奥には、長方形の水密扉が見える。
通路の一番奥に到達したBXコマンド・バトルドロイド2体は水密扉の両側に立つ。水密扉の前には、BXコマンド・バトルドロイドのキャプテンがおり、Eー5ブラスターライフルを構えていた。
「突入ダ」
キャプテンが指示を出したと同時に、水密扉の両側に立っていた2体のBXコマンド・バトルドロイドは扉を開き、中へと突入した。2体のBXコマンド・バトルドロイドが突入した直後、キャプテンはブラスターライフルを構えつつ後に続いた。
3体のBXコマンド・バトルドロイドが警戒しながら上と左右に銃を振り、クリアリングする。彼ら3体がクリアリングしている間、残り6体のBXコマンド・バトルドロイドが続いて突入し、最初に突入したBXコマンド・バトルドロイド3体と同様にクリアリングしていく。
「クリア」
そして最後にスヴェートが突入した瞬間、クリアリングは終わり、安全は確保された。スヴェートはフラッシュライトを消し、彼女に続く形でBXコマンド・バトルドロイド部隊もフラッシュライトを消した。
「あぁ、どうやら私の瞳は幻覚を映しているようだ。何故戦艦の中にホテルがある?」
スヴェートは4階までありそうな吹き抜け―――天井を見上げた。天井はガラス張りとなっており、そこから見える景色では気持ち良さそうな雲が浮かんでいた。
「…はぁ??」
思わず目が白黒してしまうスヴェート。
無理もない。軍艦の内部が、高級感が溢れるホテルのロビーだったのだから。
大理石で作られた床には短めの毛のカーペットが中央に敷かれ、年を重ねたダークブラウンの柱が光を柔らかく反射していた。エントランスの真ん中に立つと、景観を考慮して作られているのがよく分かる。
石造りの壁には、高さ約1mの絵画が掲げられていた。
スヴェートはエレベーターに近づく。
上層階に行く為にはジャバラの二重扉がついたエレベーターを使用するか、エレベーターを使用しない場合は幅が広い階段を使用するようだ。もっとも、スヴェートはエレベーターが使える筈がないと信じて疑わない。
エレベーターに近づいたスヴェートはエレベーターが使えるか確認したが、やはりといった感じで使用出来ず、扉を開けることすら出来なかった。
その後、何階まであるのか見た彼女は声を上げる。
「11階まであるだと?」
スヴェートは不思議で、そして違和感を感じた。
天井の高さからして、11階まであるとは到底思えないからだ。
「…他も見よう」
エレベーター扉より離れたスヴェート。
微塵も人気はないホテルのロビーだが、カウンターにもフロアにもゴミ一つすら無いどころかホコリすら無く、廃墟という訳ではなかった。フロントにある呼び出しベルを鳴らせば、今にもスーツを着こなしたフロントマンが応対にやってきそうな雰囲気だ。
「…いや、これはどう見ても母なる地球のホテル」
スヴェートは頭を抱えたくなった。
いやだって、おかしいじゃないか。何故この星に地球のホテルがあるんだ。ましてや、このホテルは私が行った事があるホテルだ。
はぁ、と深い溜め息を吐きつつ頭を片手で抱えるスヴェート。このホテル、記憶と一致し過ぎている。展示台もそうだが、どうなっていることやら。
「スヴェート様」
端末を持ったBXコマンド・バトルドロイドが、スヴェートに小さくない声を上げた。
「何だ?」
スヴェートは頭を抱えるのを止め、声を掛けてきたBXコマンド・バトルドロイドに振り向いた。
「遭難シグナルガ消エマシタ」
「…は?」
何を馬鹿な、とスヴェートは駆け寄り、端末の画面を覗き込む。先程まで表示されていたであろうシグナルは、消えてしまっていた。
「どういうことだ?」
腕を組み、深刻な顔つきとなるスヴェート。
報告によれば、シグナルはロビーに入ってから弱まっていたようだが、シグナルが消えたのはつい先程との事。つまり、シグナルが意図的とも思えるタイミングで切れたということになる。
「…ん?」
ふと、思考の最中であったスヴェートは、自分に向けられている視線を感じた。彼女は振り向くがそこに人影はなく、長髪の女性が描かれた絵画が壁に掛けられているだけ。1体のBXコマンド・バトルドロイドがその絵画の隣に居た。
スヴェートは長髪の女性が描かれた絵画に近づいた。
間近で見てみると、長髪の女性は素晴らしい美貌の持ち主だ。女性は黒のドレスを着用し、白銀の髪を腰まで伸ばしていた。
視線はこの絵画から向けられたのか?
なんて、と馬鹿らしい事を考えてしまったなと思うスヴェートは笑みを浮かべる。そう、馬鹿らしいと思えば両開きの木製扉が消え、壁となり横3mある絵画がある………ん?
「いやいや、そんな馬鹿な」
スヴェートは瞼を閉じ、目を擦る。擦った後、彼女は瞼を開ける。そしたらあら不思議、両開きの木製扉は無くなり、変わりに横3mある絵画があるではありませんか………??
「はぁぁぁー!?」
スヴェートは叫んだ。
どういったトリックかはチンプンカンプンだが、どうやらこのホテルに閉じ込められたようだ。……異常だこれは!
「パイロット、聞こえるか?スヴェートだ、応答しろ!」
携帯用通信機【C1パーソナル・コムリンク】で呼び出すスヴェートだが、残念なことに反応が無い。ザーっという雑音しか聞こえなかった。
かつて木製扉があった場所―――壁に掛けられた横3mある絵画の前までスヴェートは駆けた。彼女は飛びつき、右手で拳を作ったと同時に叩きつけた。
「クソが!」
続けて何度も力強く絵画を叩くがそれは無意味に終わり、コンクリートのような感覚が感じただけだ。
やがて業を煮やしたスヴェートは距離を取り、ホルスターから純白基調のブラスターピストルを抜き取り、銃口を絵画に向けた。
「部隊、撃ち方用意!」
それと同時にBXコマンド・バトルドロイド部隊は、スヴェートと同じくE−5ブラスターライフルの銃口を絵画に向けた。
「撃て!」
ブラスターピストル・ブラスターライフルから、銃声音と共に赤い光弾が放たれる。
放たれた光弾は命中するが、…損傷は無かった。
「そ、そんな馬鹿な…」
スヴェートはよろよろとよろめき、床にヘタりそうになった。しかし彼女は諦めの色を出さなかった。何か他に方法はないか、脱出してやるという思いを胸に考える。ホテル内をくまなく探索していくしか、ここを出る術はないだろう。
「…何だ?」
ふと、スヴェートは音が聞こえた気がした。銃声ではないのは間違いない。彼女は耳を澄ます。
「…会話か?」
会話に加えて、ピアノが聞こえた。
確証はない。だが音が聞こえたのだ。もしかすると、そこには救難信号を出した人達が居るかもしれない。
「行くぞ」
女性が描かれた絵画の前を通り、スヴェートは奥へと向かう。BXコマンド・バトルドロイド部隊は彼女の後ろに続いた。
「この部屋か」
スヴェートは扉の前に立つ。
ピアノの音は扉の前に立った時には消えたが、会話の音は確かと聞こえた。間違いない、此処に居る。
「私が先頭に立つ。お前達は後から続け。いいか、絶対に武器を使用するな、武器を向けるな。相手から攻撃されてもだ。分かったな?」
『ラジャー、ラジャー』
ふぅ、と息を整えたスヴェートは、ブラスターピストルをホルスターに戻し扉を開ける。扉を開けた直後、彼女は入室する。後から続くBXコマンド・バトルドロイド部隊。
部屋の中はホールのようになっており、壁沿いにある通路を歩くと、その先は折れ曲がって階下へ続く階段となっていた。内装は古いヨーロッパ風の内装で丁寧な作りの木製の手すりが左に並び、幅の広い赤色の絨毯が下まで続いていた。
スヴェートが歩いていた時だ。
『〜〜〜〜〜〜』
『〜〜〜〜〜〜』
会話が聞こえた。先よりかは大きくなっているが、それでも何を話しているのか分からない。
ゆっくりと手すりに近づき、通路から階下に広がるラウンジを確認したスヴェート。奥には暖炉があり沢山の薪が入れられ、赤々とした炎が燃えていた。茶色の高級そうな大型ソファーと黒いグランドピアノがある。
そして、2つの人種が向かい合っていた。
一つは地球人と同じ肌を持つ人種。一つは青い肌を持つ人種。
片方は地球人であり彼らの構成は、10代後半から20代の計5人。もう片方の青い肌を彼らの構成は、階段に居る美女が1人、男が2人その内は青年、老兵が1人。
どちらも軍人であるのは明らかだ。
そんな軍人達は何やら話し合っていた。
話に混ざる為スヴェートは片手で手すりを掴んだ後、微笑みを浮かべながら小さくもよく響く声音が部屋に響いた。
「初めまして、諸君」
後書き
現状公開可能な情報:AC721重量級支援型駆逐艦Ⅱ型
全長560m
最高速度(大気中)800km
ハイパードライブクラス1.5
装甲:対ビーム複合装甲
防御:シールド
武装
・カスタム二連装330mm重粒子砲x3
・近接対空砲塔x4
・近接対空防御CIWSx3
概要
統合的な艦砲システムと巨大な物資貨物倉庫を備えている。その為、多用途作戦や長距離輸送に適している。理想的な拡張性を備えているが故に、ミサイル型と艦載型の派生モデルがある。
本級は275mm砲から330m砲に換装、更には重粒子砲とシールドを装備した事で、火力・防御は飛躍的に向上した。
*インフィットラグランジュと呼ばれるゲームの艦船です。
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さてさていかがだったでしょうか。至らないところもあるかと思いますが、温かい目で観ていただけると嬉しいです。ご意見、ご感想お待ちしております。次回もお楽しみに!
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