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シャンブロウ編
  第13話「何年の月日が経っただろうか?」

 
前書き
ネオ・代表05−1です。第13話「何年の月日が経っただろうか?」となります。
どうぞ、ご覧ください。 

 
 ―――サニー星系 第三惑星〈地球瓜二つ惑星〉

 あれから、何年の月日が経っただろうか?

 宇宙人クロインとのファーストコンタクト。ファーストコンタクト直後にクロインと交戦。サニー星系の隣にある隣星系の某惑星に建設された基地から、幾らかのクロイン人を収容した。

 不思議と戦争状態となり、我がギルドvsクロイン以下の連合、数年が経過した後は降伏が届き、アルポ銀河は我がギルドの勢力図に組み込まれた。

 そして、平和を謳歌していた真っ最中、元地球人スノウが現れた。

 これだけの出来事が、果たして数年の間に起きたとは思えない。絶対に、数年以上どころか10年以上は経っているだろう。

 とういうことで、だ。早速、容姿を確認してみよう。
 リフレッシュの為に使用しているガーデンテーブルの丸いテーブル前の椅子に座るギルド長は、テーブルの上に置いてある手持ち型の鏡を手に持ち、自分の姿を見つめた。

 艶かで美しく、きめ細かな黒髪だった髪は、白髪へと変わっていた。
 真っ直ぐ整った鼻、変化なし。
 切れ長の美しい赤い瞳はオッドアイとなっており、右目は赤眼と変わっていないが、左目は赤眼から金の瞳へと変わっていた。
 強い意思を感じさせる唇、変化なし。

 最後に肌であるが、変化なし。美しい私のままだ。おかしいな、体感では数十年は経過している筈なのだが。ギルド長は手持ち型の鏡をテーブルに置き、タブレット端末を使って時間を確かめる。

 WOS世界から転移した初日より、時間をリセットし、転移日を『0年』とし時間をスタートさせたのだ。時間を確かめ終えたギルド長。―――ふむ、0076年の某月某日、夜8時か。

 「いやいや、だとしたらこの容姿はおかしい」

 ギルド長はフっと笑みを浮かべた直後、はぁ〜っと溜め息を吐いた。どう納得すればいい。自分は70代。つまりはお婆様と呼ばれる年代となってしまった。しかしながら容姿は全く変わっておらず、先程手持ち型の鏡に映っていた自分の姿は20代前半のままだった。

 WSOを初プレイする際、アバターの設定に不老としたか?
 不老とは歳をとらないことを指すが、そもそも不老は設定に入れていない。

 う〜ん、分からない。全く以って分からない。ただ、分かることは1つ、それは、自分は歳をとらないという異常性があること。嬉しいような、嬉しくないような、反応が困るなぁ。

 「―――私は異常だ、そうは思わないか、スノウ?」

 「何度、このやり取りを繰り返せば気が済むんだ?」

 どうにか落ち着くために淹れたての紅茶をギルド長は口にする。うむ、良い香りだ。
 夜風が吹く、木々に囲まれた冷涼なテラス。足元に洒落たテラコッタタイルが敷き詰められ、丁寧に剪定された植木に囲まれた中で飲む紅茶は良いものだ。

 「だってそうだろう。アバター設定の際に何度も確かめたんだぞ、プレイする際に最も不要な不老を。それが今ではどうだ?おかげさまで私はいつまでも若く、そして歳をとらないでいる。ふっ、この気持ちが分かるか、スノウ」

 「あぁ、分かる。世の女性に喧嘩を売っていることがよく分かった」

 「そうなのか?……」

 「自覚がないと来た……」

 目の前の正対する存在は、ギルド長に呆れていた。

 腰まである黒い肩掛けマントを背負い、黒い装甲服と素顔を一切晒さない黒ヘルメットに身を包んだ一人の女性―――スノウ。そのマスクから発せられる合成音声は、呆れのそれであった。

 スノウは、足を組み座っていた。

 「喧嘩を売っている訳がないだろう」

 ギルド長は続ける。真剣な顔つきとなって。

 「私は異常だが、スノウは違う。確か、不老だろう?」

 スノウは直ぐ返答した。

 「私は特別だが、皆がそうではない。地球人と違い基本的には緩やかに歳をとる種族だが、いずれ寿命を迎える」

 「そうだったか。今更だが、現世に兄弟とか姉妹は居るのか?勿論、地球人ではないぞ」

 「…あぁ、姉妹だ。前世と同じく、私は姉だ。妹も特別で、不老だ。…私は、現世の妹を赤の他人だと思っている。…私の妹は前世の…地球人の妹なのだから」

 「ほぅ、まぁ、姉妹喧嘩にだけは巻き込むなよ。私はその宇宙人の妹に会うことは、一生ないだろうが。しかしだ、スノウよ。私より遥かに歳をとっているが外見はうら若き女性、しかし実際の年齢はお婆さんの中のお婆さん。…ふふっ」

 「貴様、殴られたいか?」

 「ふふっ、怒ることはないだろうに。寧ろ誇っていいと思う、誇れ誇れ」

 「動くなよ、殴ってやるから」

 「陛下が御乱心だ!?」

 「誰が陛下だ」

 ギルド長は謝罪した、いっぱい謝罪した。何とかスノウの機嫌を回復したその後、他愛もない会話をしている中、ふとスノウは「そういえば」っと語り出した。

 「シャンブロウを探して欲しい」

 「シャンブロウ?」

 あぁ、とスノウはポツリと語り出す。
 ギルド長はスノウが語った内容を纏めた。曰く、シャンブロウは伝説の惑星で、シャンブロウそのものが宝のような存在とのことで、力やら遺跡やら、とにかく凄いそうだ。

 場所を聞いてみたところ、大マゼラン銀河と呼ばれる銀河系の外縁部にあるそうだ。大マゼラン銀河、確かリアルでは大マゼラン雲と呼ばれていた、あの大マゼランか。

 「シャンブロウを探すのは構わないが、何故私に?」

 「暇だろう」

 当然だ、ギルド長は即座に頷いたが、「暇」と言われてしまい、繊細な心が軽く傷ついた。暇で悪かったな。

 だがまぁ、事実、暇である。であれば、発見してやろう。
 WOSでは基本的に軍拡を中心にプレイし、時折ストレス発散を兼ねて宣戦していたギルド長だが、探検はあまりしていなかった。リアルではどうかと聞かれれば、旅行こそあれど、冒険家のような探検は無かった。

 折角だ、この現実世界に転移した私は、伝説の惑星シャンブロウを発見してやろうじゃないか。是非とも探検してみたいというもの。

 ギルド長は了承した。そして、自分が直接行く旨を伝えた。

 「良い返事を貰えて何よりだ。しかし、自ら行くとは。艦隊を派遣するだけでいいのではないか?」

 「馬鹿だな。未知を発見し探索する、…直接行くんことで価値があるんだ…ロマンだとは思わないか?」

 「悪いな、ロマンとは思えない」

 「…ぅ」

 「…わ、悪かった。か、からかっただけだ。確かに探検はロマン感じるな」

 ハンカチをポケットから取り出し、一筋の涙を拭いたギルド長。涙を拭いたギルド長はシャンブロウ星の特徴について聞いたが、分からないそうだ。…特徴が分からないって。

 だが、それだけの価値があるということか、シャンブロウという星は。

 「発見し次第、直接この私に連絡を」

 「了解した。吉報を待っていろ」

 「あぁ、吉報を待っているぞ―――ブリリアンス・ギルド長、スヴェート」

 話のケリがつき、白髪オッドアイの女性スヴェートは、残りの紅茶を飲み干した。

 翌日、20隻の艦隊を編成したスヴェートは、地球人瓜二つ惑星から出撃した。目指すは、大マゼラン銀河外縁部にある伝説の惑星―――シャンブロウだ。

 なお、ギルド長の仕事は全て副主席に任せた。 
 

 
後書き
 次回第14話もお楽しみに!いよいよアルポ銀河の外に行く日がやってきた!
 さてさていかがだったでしょうか。至らないところもあるかと思いますが、温かい目で観ていただけると嬉しいです。ご意見、ご感想お待ちしております。 
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