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第9話「隣星系に攻め込む作戦完了後」
前書き
ネオ・代表05-1です。第9話「隣星系攻め込む作戦完了後」となります。
どうぞ、ご覧ください。
―――隣星系に攻め込む作戦完了。
ピロンっという通知音が浴室に響き渡る。
「…ん?」
タブレット端末に届いたその通知を観たギルド長は、フっと笑みを浮かべた。
「これで、安全は確保された」
ギルド長は、作戦を思い返す。
隣星系に攻め込む作戦は、何も攻め込むだけではない。
我が領域とする為だ。
我が領域とする理由は、勿論ある。
このサニー星系の安全の為にも、隣星系からやって来るクロインに脅かされない為に、この作戦は絶対に遂行しなければならなかった。
余談だが、サニー星系というのは転移した星系の名称。
名称は私が名付けた。…一々、太陽系太陽系と言わない為に。
ゴホンっ、さて。
「作戦は成功」
駐留していたクロイン戦闘艦はデルタ艦隊により無力化。
地上戦力を積載している着陸船は地上戦力を展開し、軍事拠点を包囲しつつ、内部も制圧。
「素晴らしいな。これで安全は確保されたも同然」
笑みをより強く浮かべるギルド長。
しかし彼女の瞳は、余裕・油断といったのは一切無い。
「クロインの軍事拠点は確かに制圧し、駐留していた艦隊を無力化した。…しかし」
懸念している事は一つ。
クロインの”根”は隣星系ではなく別ではないのか、について。
そもそもワープ航行を確立している時点で、一つの星系で満足するとは思えない。
宇宙に進出する事が可能な時点で、他の星を他の星系を支配するという欲望が、限界にまで高まり、やがては支配するに至る。
無論、この思考は人類のメンタリティと同一である前提だ。
まぁ私が知っているその人類はそもそもワープなんぞ無理だ、開発すら無いしな。
だがもしも、その前提が正解であるならば…。
「な〜にが”安全は確保された”、だ!…はぁ〜、これがリアルか」
なんていったて、宇宙は広い。
太陽系のみが人類の領域であれど、太陽系なんぞ、めっちゃある星系の内の一つだ。
宇宙人はクロインのみと決めつけては絶対駄目だ。
クロイン以外の勢力なんぞ、沢山存在しているのは考えるまでもない。
「征服欲溢れる宇宙人共が群雄割拠する宇宙、か」
ますます地球が恋しくなるし、ますます地球の事が心配になってくる。
「現代兵器vsクロイン。…いや、戦いにすらならない」
はぁ〜、とギルド長はデカい溜め息を吐いた。
軌道上から艦砲射撃ないしは爆撃されたら、絶対に人類は詰む。
ギルド長は浴槽の壁に、背中を深く預けた。
「軍拡に力を入れないとな、それも最優先で」
ギルド長は、改めて今後について練り始める。
先ず現状の主力戦力は、フリゲート。
しかし今後の事を考えれば一部のフリゲートを除き、主力艦隊から退場させ、後方で勤務することとなるだろう。
主力はフリゲートから駆逐艦となれば、クロイン巡洋艦〜巡洋戦艦からビーム砲撃が来たとしても、”基本的に”対ビームコーティングによって無効化・拡散。
艦艇は各惑星の造船ドック・要塞の造船ドック・造船所での生産体制を確立し、造船している。
生産性が最も高いのは造船所だ。
造船所は惑星の衛星軌道上に存在している。
瓜二つ惑星の衛星である月にも造船所は存在し、地表から見上げれば土星の環のようなリング状が見えるだろう。
そのリング状こそが、造船所なのだ。
造船所は他にもあるが、リング状の造船所は月と一つの惑星に存在する。
その生産体制をサニー星系ででしか出来ないでいたが、隣星系を我が領域となったからには、隣星系にも造船ドックと造船所を建造する必要がある。
他にも星系基地やら防衛プラットフォームやら、やるべき事はいっぱいある。
ギルド長は湯船から上がり、軽くシャワーした後、浴室から出るのだった。
「あ、しまった!」
声高に叫ぶギルド長。
彼女はヒノキの風呂桶を忘れたと思い出すや、あわあわと慌てながら浴室に戻った。
…良い子の皆は忘れ物しないようにしましょう。
キリッとした顔つきで浴室を出たギルド長は、お風呂で使っていたバスタオルを洗濯籠に放り投げる。
その後、ギルド長はハンガーに掛けていたバスタオルを手に取った。
バスタオルを取った直後、ギルド長は黒髪をゴシゴシと拭く。
髪を拭き終えた後は身体を拭き、拭き終えた後はハンガーにバスタオルを戻す。
少しして、ドライヤーで未だ濡れている髪を乾かす。
1〜2分ほど時間が経過し、ギルド長はドライヤーを止めた。
髪を触り、完全に乾いた事を確認した彼女は、ドライヤーを元の場所へと戻した。
元に戻したギルド長は、畳んで入れていた籠を覗き込む。
籠の中には軍服があり、その上には下着があった。
下着は黒いレースパンツと黒いブラジャー。
ギルド長は先ず、黒いレースパンツを履いた。
「おぉ、改めて思うが、フィット感が凄い」
まるで本物のようだ、と感動を露わにするギルド長だが、そういえば現実世界に転移したのだからそりゃ当然か、と付け加えた。
次に黒いブラジャーを装着してゆく。
「あぁ、なんというフィット感。最高だ」
ブラに胸を締め付けられる感覚は実に新鮮だ。
まるで一体化したかのよう。
下着を着用した後は、最後に白い軍服を着用するだけだ。
ギルド長はサッと着用した。その時間、実に1分。
軍服を着用した彼女は鏡の前に立ち、髪を整えながら自分の姿を見る。
艶かで美しく、きめ細かな黒髪。
真っ直ぐ整った鼻。
切れ長の美しい赤い瞳。
強い意思を感じさせる唇。
全てがバランスよく配置された彼女の顔立ちは、まるで精巧に作り上げられた人形のようにも見えることだろう。
いや、美しいのは顔だけじゃない。
身体付きも完璧といっても過言ではないものだった。
学ランを基調としたような白い軍服。
軍服の上からはっきりと分かるくらい胸元は、ツンっと上向きに盛り上がっている。
それでいて腰は今にも折れそうなくらい引き締まっていた。
下は白いスラックス。
足にフィットしているスラックスは足のラインが良く分かり、スラリとした両足は、まるでモデルのよう。
もしも軍の講堂の壁に背中を預け、腕に組みながら、ただそこに立っているだけとする。
さぞかし異常な存在感を放つことだろう。
ちなみに彼女の容貌は、リアルの自分をベースにしたものだ。
「髪の整え完了っと」
髪の整えが終わったギルド長は、赤い肩掛けマントを付ける。
鏡に映る彼女の姿は、さながら高級将校のよう。
ギルド長はタブレット端末を手に取り、靴置き場にある黒いブーツを履き、脱衣所を後にしたのだった。
…日本酒の冷とお猪口を忘れてしまった事を思い出した彼女は、B1バトルドロイドに片付けをお願いしたのだった。
良い子の皆は忘れ物しないようにしましょう。
〈???SIDE〉
暗い。
此処は、何処だ?
身動きが取れない、拘束されているのか?
…あぁ、そうだ。
私は、逃げ遅れたんだ。
脱出しようとしても、既に手遅れだった。
鉄の骨で出来たドロイド共に、制圧されたからだ。
私以外の者は、どうだったかな。
…あぁ、そうだ。
私以外の者は、殺されたんだ。
降伏しても殺され。
死んだフリをしていても殺された。
何故無抵抗の者を殺すのかを、とある者は言った。
「なんで、なんで殺すんだ!無抵抗なのに、何故だ!」
とある者と向き合っていた数体のドロイドの会話を聞いた。
「無抵抗ダッテサ、先マデハ抵抗シテイタノに」
「ホントダヨナ〜」
「ア〜、コマンダー?ドウシマショウ?」
「宇宙人・エイリアンに耳ヲ貸スナ、排除シロ」
『ラジャー、ラジャー!』
その直後、銃声音が鳴り響いた。
ちらっと覗き込む必要は、なかった。
彼は死んだと、理解したからだ。
トントンっと肩をつつかれた私は振り返り、…意識を失った。
…何故、私は生きているのか、分からない。
…何故、生かされているのか、分からない。
だけど私は、心の何処かでは、助かった自分に安堵していた。
だって、だって…!
……怖かった、怖かったんだ!!
次々と制圧されて、次は司令部に来るのは時間の問題。
だから私は、隠れた。
部下・同僚・上司を犠牲にして。
「…そんな私は今、拘束されている」
何故かは分からない。
だけど、…電撃を浴びせられたのは覚えている。
尋問、だろう。
暗いから分からない。
けど五体満足であった私の身体は、今では痛く感じる。
私が吐く息は荒い。
時折、彼女の顔をよく思い出すのは何故だろうか。
時折、両親の顔を思い出すのは何故だろうか。
彼女も両親も、私に向けて怒っている表情となっているのは何故だろうか。
*真っ暗だった部屋に照明が点いた。
*照明は点いたが、真っ暗から暗いに変わる程度の照明だ。
*部屋に数体?数人?が入室し、赤い双眸を向けられているのを彼は気づく。
あぁ、そうか。
これは罰なんだ。己の役目を果たさなかった私への、…”俺”への罰なんだ。
後書き
さてさていかがだったでしょうか。至らないところもあるかと思いますが、温かい目で観ていただけると嬉しいです。ご意見、ご感想お待ちしております。次回もお楽しみに!
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