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金木犀の許嫁

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第二十九話 質素な充実その十

「今だとね」
「小さいですね」
「そうよ、まあ今伊藤さんがいたら」
 それでもというのだ。
「普通に背もね」
「平均で」
「そうだったわね」
「そうなんですね」
「けれど伊藤さん本人だったら」
 当時の彼のままならというのだ。
「かなりね」
「小柄ですね」
「そうなるわ」
「そうなんですね」
「今大人の男の人で一五五はね」
「まずはいですね」
「時代によって体格って変わるから」
 だからだというのだ。
「あの人もね」
「今だとかなり小さいですね」
「嘉納治五郎さんも」
 柔道の創始者であり人格を備えた教育者として知られた彼もというのだ。
「一六〇なかったし」
「今だとかなり小柄ですね」
「伊藤さんと同じでね」
「そうですね」
「それで二次大戦の頃になるけれど」
 真昼はこの時代の話もした。
「ドイツのね」
「その頃はナチスですね」
「あの総統さん実は一七〇以上あったから」
「あっ、ドイツの子に聞きました」
 白華はその人物の名前が出てすぐに真昼に言葉を返した。
「あの人小柄じゃなかったと」
「髭の小男って言われてもね」
「実は当時高い方だったと」
「ナンバーツーの航空相の人は大きいって言われてて」
 ヘルマン=ゲーリングもというのだ、尚彼の場合はその太った体格からそう言われる面もあったことは事実だ。
「一七八位よ」
「そんな風ですか」
「私達から見れば大きい方でも」
「物凄くじゃないですね」
「一七〇でね」
 それ位の背丈でというのだ。
「普通だったのよ」
「そうでしたか」
「当時のドイツでもね」
「背が高い人が多い国ですが」
「昔はね」
「そんなものですか」
「オーストリアだとモーツァルトさん一五八だったし」
 記録ではそうある。
「そこは時代でね」
「変わりますね」
「けれど今生まれて」 
 真昼はまた伊藤博文の話をした。
「それであの能力と性格なら」
「真昼さんも好きになっていましたか」
「例えどれだけ女好きでもね」
 そうであってもというのだ。
「あれだけの人だとね」
「惚れますか」
「絶対ね、凄い人だったわ」
「気さくで飾らないお話の多い」
「ユーモアがあって剽軽でね」 
 兎角そうした逸話が多い人物である。
「明るくてね」
「器が大きかったですか」
「かなりね、そんな人だから」
 それ故にというのだ。
「本当に傍にいてくれたら」
「惚れていますか」
「私もね。私はお見合いまだだし」
 このこともあってというのだ。
「今ならね」
「お付き合い出来ますか」
「何なら伊藤さんとならお見合いしても」
「あの人にお家を継いでもらいますか」
「養子に入ってくれるならね」
 それならというのだ。
「そうしてもらって」
「一緒になりたいですか」
「そう思うわ、けれど美味しいものはね」
「ちゃんと作りますか」
「衣食住にこだわらなくて」
 服はボロキレの様なものでよく家は庭を雑草が生い茂っていても構わず食事もかなりの粗食であったという。 
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