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バックベアード

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第三章

「よかったわね」
「そうよね」
「やっぱりクイーンいいわ」
「クラリスもね」
「どっちも聴いてよかったわね」
「本当にね」
「?その声は」
 声を聴いてだ、それでだった。
 コーナーの音楽をかける装置のある場所、客からは完全に見えないそこから男の声がした、そうしてだった。
 ひょっこりと上から気配がしてだ、その声が言うのだった。
「女の子か。クラリスは兎も角クイーンとは渋いな」
「えっ、あんた何者?」
「一体」
 見ればそこには黒い二メートル位の球体があった、球体の周りには木の枝の様な針が無数に出ている。
 そして球体の真ん中には大きな目がある、二人はその球体を見上げて彼が何者であるのか瞬時に察した。
「妖怪よね」
「そうよね」
「どう見てもね」
「これは」
「おっと、見られたか」 
 妖怪は二人が言っても困った様子もなく言った、そしてだった。
 すぐにコーナーの中に戻ってだ、その中からまた言ってきた。
「これは失敗したな」
「いや、失敗じゃないでしょ」
「あんた一体何者よ」
「妖怪でしょ」
「一体何て妖怪なのよ」
「如何にも。わしは妖怪だ」
 その通りという返事だった。
「バックベアードという、生まれはアメリカだ」
「アメリカね」
「それで今日本にいるのね」
「実はこの屋上の管理人とは昔馴染みでな」
 そうであってというのだ。
「いつも一緒に働いているが今管理人はトイレだ」
「それであんただけで」
「たまたま覗いたら私達に見られたの」
「そうだ、日本特に大阪は暮らしやすい時と聞いて来日してな」
 妖怪は日本に来た経緯のことも話した。
「暮らしはじめてたまたまここに来たらな」
「この屋上の管理人さんと会って」
「馴染みになって」
「一緒に働く様になってな」
 そうしてというのだ。
「ここにいるが」
「管理人さんがおトイレで」
「あんたがふと私達が気になって覗いて」
「それで見付かった」
「そうなのね」
「こうした時は見間違いかと思われてな」
 例え見られてもというのだ。
「終わるが」
「いや、私達二人共見たし」
「見間違えないわよ」
「そうだな、まあ妖怪は何処でもいる」
 居直った言葉であった。
「気にするな」
「いや、八条グループってね」
「グループ全体で妖怪と縁深いっていうし」
「神戸にグループの学校あるけれど」
「八条学園っていう」
「あそこもう世界屈指の妖怪と幽霊のスポットだし」
「私達二人共グループの社員さんの子供だし」
 二人はバックベアードにそれでと話した。 
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