希望と結末
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第一章
希望と結末
今のプロジェクトが成功に終われば記憶がなくなるまで飲んでやる、宮部正美はそうすると誓っていた。一九〇近い長身で面長の顔で朴訥とした顔立ちだ。黒髪は短く痩せている。
「今は大変だけれどな」
「終わったらか」
「とことんまで飲むか」
「ああ、そうしてな」
そのうえでとだ、別の部署の同期達に話した。
「家で飲んでもう記憶がなくなるまでな」
「そこまでして飲んでか」
「プロジェクトの成功祝うんだな」
「そうするんだな」
「当然課でも飲むけれど」
それだけでなくというのだ。
「俺個人としてもだよ」
「そこまで飲んでか」
「そしてお祝いするか」
「自分でも」
「そうするよ、そうすることを励みにして」
そうしてとだ、宮部は同期達に言うのだった。
「頑張るよ」
「ああ、頑張れよ」
「そっちのプロジェクトにはうちの社運がかかってるしな」
「頑張れよ」
「そして成功させろよ」
「絶対にな」
こう言ってだった。
宮部は酒を記憶がなくなるまで飲む日を手に入れることを励みにしてそのうえでプロジェクトを頑張っていった。
彼も同じ部署の面々も頑張っていった、部署が一丸となってプロジェクトに向かい全員常に可能な限り全力で働いていた。
そしてその努力が実ってだ。プロジェクトの責任者である部長の三村時彦小柄でやや猿顔で髪の毛が薄くなっていて耳の大きい痩せた彼が部署の全員を居酒屋に呼んで食べ放題飲み放題のコースでだった。
乾杯を言った、そして言うのだった。
「有休もそれぞれ取っていいしね」
「プロジェクトは成功しましたし」
「だからですね」
「今は飲むんですね」
「そうするんですね」
「そうしよう、皆のお陰でプロジェクトは成功して」
社運を賭けたそれがというのだ。
「そうなったしね」
「だからですね」
「今はですね」
「乾杯ですね」
「そうしますね」
「丁度連休前だし」
金曜日の夜だ、ここから土曜日から月曜日まで休みである。
「もう今日はね」
「しこたまですね」
「飲んでいいですね」
「そして食べていいですね」
「そうだよ、だからね」
それでというのだ。
「今日は無礼講でいってくれ」
「わかりました」
「じゃあいただきます」
「そうさせてもらいます」
「そうしてね」
こう言って部署の者全員に好きなだけ飲んで食べさせた、その中には宮部もいて彼も店、居酒屋で好きなだけだった。
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