もう通用しない

「僕はね」
「そうなんだな」
「いきなり何があったかも聞かないで」
　堀内のロッカールームでの醜悪な行為のことも話した。
「後ろから飛び蹴りなんてね」
「しないな」
「大体暴力って犯罪だし」
　そもそもというのだ。
「訴えられるよ」
「そうだよな」
　同級生も確かにと頷いた。
「暴力はな」
「問題外だよ」　
　それこそというのだ。
「そんなことしたら」
「その通りだな」
「だから僕は堀内みたいにならない」
「堀内みたいなことはしないってか」
「いつもね」　
　それこそというのだ。
「しない様にね」
「心掛けてるんだな」
「うん、球界の紳士なんてね」　
　この都市伝説の話もした、かつては巨人軍は球界の紳士と言われていたのだ。今ではそんな言葉は妄言とわかっている。
「堀内を見ればね」
「違うってわかるな」
「紳士どころか」
「暴力野郎だな」
「紳士は暴力振るわないよ」
　絶対にというのだ。
「下品で偉そうなもの言いもね」
「しないな」
「そうだよ」
　まさにというのだ。
「本当にね」
「その通りだよな」
「何ていうか」
　堀内恒夫、この輩はというのだ。
「あいつは老害だよ」
「ああ、昭和のか」
「本当に昭和四十年代で頭が止まった」　
　そこから、現役時代の最盛期から一歩も成長していないというのだ。
「見事なね」
「老害か」
「うん、ああした老害が偉そうにしていたら」　
　そうであるならというのだ。
「もうね」
「世の中嫌なことになるな」
「実際あいつの文章読んでいて不愉快だし」
　得られるものは何もなくというのだ。
「文章下手でね」
「偉そうでか」
「それでメジャー行く選手のこと頭にないし」
　そうして文章を書いているのだ。
「そりゃ昭和だとね」
「日本からメジャー行くなんてな」
「漫画だったし」　
　だから大リーグボールというものが出たのである、メジャーが当時の日本から見て夢の様な世界だっただけに。
「それでだよ」
「そんなこと言うな」
「それでいて自分をね」
　堀内自身をというのだ。
「大谷さんと比較対象にするとか」
「思い違いもそこまでいくと凄いな」
「ならないよ」
　寿は忌々し気に切って捨てた。