リュカ伝の外伝
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
人を好きになる条件は……
(グランバニア王都:中央西地区・フォンザ(株)店)
ジージョSIDE
俺とライデンも当然ながら、完全に今日購入を考えていたリューナさんも全ての書類等を用意してあったらしく、昼間と言うには遅い時間に来店したにもかかわらず、一般的な夕食前には全ての手続き(魔道車購入の為の)が終わり、フォンザ(株)のお店を後にする。
当初の予定では俺とライデンは、この後に魔道車購入無事達成記念祝賀会として、ライデンと共にオールナイトを独身男性な我らだけで楽しもうと思っていたのだが……急遽飛び入りで絶世の美女が加わり予定を変更。
(グランバニア王都:中央地区・ロイヤルバスト)
中央西地区のフォンザ(株)の近くにある魔道人員輸送車停から、魔道人員輸送車に乗って、西地区方面よりも夜の方が賑わっている中央地区へとやって来た。
男二人だけであれば野暮ったい(悪い意味では無い)居酒屋とかで問題無いのだが、今俺の目の前に居るのは絶世の美女すらも敗北感に苛まれる美女級の美女が居るのだ。
喧嘩別れでもしたのなら一緒に飯食う必要性も存在しないけど、俺はまだこの人に好意を持っており、彼女が幸せになれるならとの想いで彼女の婚約を受け入れ、俺は元彼という立場に収まる決意を持ったのだ。
俺なりにそれなりに高級な店を脳内チョイスしながら魔道人員輸送車を降りた……
すると、「何か気取って高い店行こうかと考えてなぁい?」と心を読まれる。
「そ、そりゃ……リューナとディナーだからね。格好付けるのが常識人だよ!」
「えぇ~……勘弁して下さいよジージョさん! 俺もう金ないっすよぅ!」
「だ、出すよここは!」
「良いから無理しないで……この店にしましょ!」
俺とリューナさんの会話を聞いて泣き言を言い出したライデン。
因みにライデンは彼女がグランバニアの血を引いている事を知らない為、ただの絶世の美女としか見えて無い。
だけど気の利く美女なリューナさんは、降りた魔道人員輸送車停の一番側にある店に入ったしまった。
因みに店は『ロイヤルバスト』って名のF・Rだ。
正直言うとF・Rの中では高い方。
それでもロイヤルバストはF・Rに分類されており、金のない者共の救世主になっている。
食べ盛りの学生が居る家庭等には、高級感を感じつつ食事を楽しめる食事処となっている。
だがそれでもまだ高級感は否めず、俺はライデンにコッソリ「俺が出すから……今日は我慢してよ」と耳打ち。
「お願いしますよ……」
との返答で今宵のディナーは決定した。
納得しての別れ……
彼女の幸せを望んでの別れ……
頭の中ではそれを理解しているのに、やっぱり彼女は可愛すぎる!
今後の事を期待して浮ついてしまう。
彼女の事情を知らないライデン……
あまり良い感情を彼女に対して持ち合わせていない。
なので、今日が初対面でもこんな質問をしてしまう……
「何で貴女はジージョさんを選ばなかったんですか!?」
着席し注文も終わり先に到着した飲み物が来るまでの間、近況報告をしていたのだがライデンがトンデモない質問をブチ込んできた。
「ジージョさんは良い人です! 幼い頃に大変な目に遭いながらも、心根を崩す事無く小さいながらも実家の伯爵家を盛り上げるべく尽力しております! 貴女の選んだ彼氏に負けてるとは思えません!」
う、嬉しい言葉ではあるのだが、今ここで言うモノでも無いだろう……
「知ってるわ……ジージョの事は私も知っているわよ」
「じゃぁ何故!?」
如何やらライデンは俺と二人きりでの飲み会(と言う名のダラダラした時間の過ごし方)を期待してたらしく、突然の美女参加に不満がある様子。
「先程貴方が言った幼き頃のトラウマにも負ける事無く、救って頂いた恩人であるグランバニア家……特に陛下と殿下に忠誠心を捧げて、ご実家共々発展に寄与できるように日夜力の限りを尽くしている事は、昨今この王都に来た貴方よりも知っているわよ」
そこまで言うと、手にした“フィンタ・グレープ”を一口飲む。……何だか色っぽい♥
「貴方は……私の未来の夫について何を知っているのかしら? 私の知らない裏の顔があって、そちらでは悪行の限りを尽くしてる……って事で宜しいかしら? そんな男であるのなら、結婚なんてトンデモ無いですわね……あちらさんのご両親にも挨拶を済ませてしまっているけど、今からでも婚約は破棄にすべきですわ! 如何思いますか……え~っと、ジージョのご友人さん?」
「も、申し訳ございませんでした……今のは完全に私の思慮に欠けた発言でございました。私は貴女の彼氏について全くの知識は持ち合わせておりません。にも関わらず、一方的な見識だけで貴女と、貴女の彼氏の事を侮辱しておりました。誠に申し訳ございません!」
ライデンは自身の発言があまりにも身勝手だった事に気づき、慌てて頭を下げてリューナさんに謝罪する。
「頭を上げて下さい。貴方がそれ程ジージョの事を慕っているって証拠ですから(笑)」
そう優しく頭を上げさせて、目線を合わせて笑顔を浴びせるリューナ。
この笑顔光線を浴びせられてリューナに敵意を持ち続ける事が出来る男は居ない。
「あっ……いえっ、そんな……あのぅ……」
顔を上げたライデンは蕩ける一歩手前まで赤くして恥ずかしがっている。
もう既に惚れてしまい、リューナさんから目が離せない。
そして頼んだ料理が続々と運ばれてくる中、それらを食べながらリューナさんは現在の生活を報告しながら彼氏の良さを説明してくれる。
別に惚気ってワケでも無く、俺では無く彼氏を選んでしまった理由をライデンに説明しているって感じだ。
「……成る程、ジージョさんじゃ勝てねーや(笑) 貴女の選択は間違いないっすね! 流石は天才だ」
「お、おいおい……先刻までは俺の味方だったじゃないかぁ」
急な掌返しに戯けて文句を言うも、俺の事を気にする事無く追加で頼んだ“フィンタメロン”をリューナさんにお酌するライデン。もうメロメロじゃねーか!?
「でも知ってますかリューナさん……ジージョさんは貴女にフラれた後は本当に酷い状態だったんですよぉ」
「お、おい! な、何もリューナに言う事は無いだろ!」
「その日の夜も慰める為に飯を食いに一緒に行ったんですけど『おっ、俺は……彼女の幸せの為に身を引いたんだぁ!!』って終始喚いちゃって(笑)」
「これはこれは……その節は大変ご迷惑をおかけ致しました」
ライデンの話を聞き真面目な顔で俺に頭を下げて謝罪してくるリューナさん……意地悪な所も可愛い。
そして暫くの間、俺等も近況報告の様な愚痴を喋って、互いの立場を笑い合っている。
こういうくだらない会話ってのがまた楽しいんだよね。
「そう言えば……私と夫と貴方の3人で、夜中までこうやってくだらない事をダベってたわよね……楽しかったわぁ」
そんなノスタルジックな会話をしていても時は勝手に経過して行き、気が付けば既に22時になろうとしている。
明日は土曜日で休みと言う事もあり、気にせず別の店に行く……所謂“ハシゴ”をしようと提案が出たのだけど、リューナさんはキャンセル。
彼氏が居る身としては独身男性二人と夜遅くまで飲み歩くのは拙い……と。
確かにその通りである。
しかも相手は俺……元彼であるのだから、変な噂が立ち上がっても文句を言えない。
(グランバニア王都:中央地区)
店を出て近くの魔道人員輸送車停まで歩く3人。
酔いで火照った身体に真冬の匂いは心地よく……大好きだったリューナさんの横顔から目が離せない。
「あぁ……ラッセル君が羨ましい。君の横顔を何時でも好きなだけ眺めてられる……」
思わず呟いた一言だったが、彼女の耳には十分届く。
スッと俺の頭を抱き込むと、その豊満な胸に顔を埋めさせ「良い子、良い子貴方は良い子……早く次の恋にいきなさい♡ 貴方はライデン君の言う通り素晴らしい人なんだから、お似合いの彼女だって引く手数多……幾らでも居るわよ」と慰められる。
涙が溢れて心を締め付ける……
くぅぅぅぅっっっ!
彼女の為に……この国の為に……そして尊敬するお二人の為に、俺はもっと頑張るぞ!!
ジージョSIDE END
後書き
2024年7月13日更新
ページ上へ戻る