リュカ伝の外伝
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兄よりも父になりたかった
(グランバニア王都:東中央地区:ラッセル邸)
リューナSIDE
前回(?)私の両親との挨拶会をした時は城内カフェを借りて行った為、権力によって融通が利く部外者が押し寄せてトラウマになってるラッセルは、場所を自宅に決定。事前に『陛下でも駄目ですから!』と釘を刺し牽制してました。
そんな中、馬車を用いて丸1日かけてラッセルのご両親……即ち私の義両親が王都まで来てくれました。
宿泊はここでも良かったんですが、“仕事”とかで他人が出入りする可能性もあるから、挨拶後は王都観光とかをしてもらいたいと考えた私は『王国ホテル』のスイートを予約。
何とか無事に当日を迎える事が出来、ラッセルは馬車の発着場まで迎えに行きました。
私は大人しくここで待機。
何もせずに“待つ”ってのが一番辛いかも……
トイレへの往復とお化粧のチェックの数十回セットを終えた頃、玄関先からラッセルの声が聞こえてきた。
私は慌てて立ち上がり入室してきた義両親に頭を下げてご挨拶。
「は、初めまして! む、息子さんとお付き合いさせて貰っているリューナと申します。どうぞ宜しくお願い致します!」
完全なる定型文。“不束”って言葉を入れ忘れた事が悔やまれる。
「まぁまぁご丁寧に……そんなに緊張しないで。貴女の事はよく手紙に書かれてあって、良い娘である事は知ってるの。寧ろ私の息子の方が貴女に迷惑をかけてるんじゃないかと心配で……」
「い、いえ……そんな事は全然!」
こんな感じで始まった“挨拶会”と言う名の食事会。
私がそれ程料理に自信が無かった(それでもリュリュさんより断然マシよ)ので、無理する事はないとお父さんから助言を受けてプロ級の人に依頼。近衛騎士隊長のラングストンさんにですけどね。
私の義両親になるお二人だが、正直外観に特徴的な部分が見受けられない。
お義母さまは線も細く、若く見えがちではあるモノの顔のシワがラッセルが居る事を物語っている。
お義父さまの方も容姿に関しては何も特徴的な部分が見付けられません。
ですが食事会を進める中で出てきたお二人の馴れ初め(?)等で、お二人が特徴的である事を知りました。
お義母さまは『パメドア・C・ランドウォーカー』さん……
お義父さまは『アンダレアス・ランドウォーカー』さん……
何故だかお二人ともラッセルとFNが違うのです。
因みに彼氏のフルネームは『ラッセル・クリステンセン』です。
ラッセルが10年近く母子家庭であった事は訊いてたが、お二人は息子さんが芸高校に入学し、故郷の実家を出てから婚姻届を提出し夫婦になったとの事です。
何でそんな事をしたのかと尋ねたら、お義父さまが……
「俺とラッセルは11歳差なんだが、幼い頃からの知った仲で、所謂幼馴染みになるんだが……俺は俺でガキの頃からラッセルの母親に惚れていて、彼女目当てでラッセルと遊んでたから……」
結構複雑(笑)
私の家系も複雑だと自負してるけど、夫の実家も中々のモノねぇ。
だからといって、私の家系の複雑さを教えてしまうワケにもいかないわ。
「『アンダレ兄ぃ』と呼ばれ続けてきたのに、今更『アンダレパパ』って呼ばれたかったって言い出せなくて……恥ずかしいからね!」
「理由がくだらなすぎる! その所為で俺は母の結婚式に参列出来なかったんだぞ!」
「えっ! なに、それ!? 如何言う事??」
「役所に婚姻届等を提出して形式的に親子になった……のに、恥ずかしくて結婚した事すら伝えられず結婚式の当日に案内状とかが郵送されてきて……俺は俺で学校とかがあるし、理解が出来ないまま数日が経過してしまい気が付けば俺はまだFNが“クリステンセン”のまま……」
「ち、因みに……今は何て呼んでるの?」
「形式張ってる場合は勿論『義父』だけど、身内同士での呼び名は『アンダレ』になるよね……そりゃぁ!」
アンダレパパじゃぁ無いんだ。
……と残念を噛み締めながら食事会は進んでいった。
当然だけど現状の私の事とかも話題に上る。
学生の身でありながら既に起業している事や、元々はラインハット出身である事など……
だが次第に話題がお義父さまの仕事に移り変わっていく……
すると夫とお義母さまの顔から少し光が失われる。
これは当然何かあるのだろう……言葉に注意しながら発言せねば。
そう覚悟を決めて夫と義両親の話に集中した。
それで聞き出した……と言うと横柄に聞こえるが、語ってくれた内容としては、現状は村内の郵便局で配達員として給料を貰い生計を立ててる。
覚悟を持って聞き出したら思っている程には深刻じゃ無く少しだけ肩透かしを喰らった感じです……変に問題があるよりも遙かに良い事だけどね!
お義母さまは村内の衣料店(知人の店)で仕立てや手直し等をして、僅かながらだが生計を立てていたそうです。
息子が芸高校に行きたがってる事は知ってたから、それに対しての貯蓄はしていたそうです。
その後の結婚だったので、生活するくらいは大丈夫だそうなんですが……最近、息子への仕送りをしなくても良くなり、その分余裕が出来たそうなんですが、って所まで聞き出して夫家族から沈黙が発生してしまいました。一体何の問題が!?
長い沈黙に堪えられなくなったのはお義父さま。
深く大きい溜息を吐いて、自身の悪い癖を語ってくれました。
その悪い癖と言うのが……
『小説家になりたい!』
だ……そうです。
つまりお義父さまは何時までも小さな村で郵便配達をしてないで、物書きになって世の中に名前を轟かせたいそうです。
私は問題無いと思うんですけど、夫家族には問題みたいですね。
申し訳ないけど訊いてしまいました……一体何が問題なのか?
貧乏のドン底で働きもせずに誰からも評価されてないモノを書いていて、夫やお義母さまを苦しめているってのなら、私も問題視しますけども……
でも、ある意味だから困っているって事なんですよね。
如何言う事かと言いますれば、現状夫は宮廷画家として+漫画家として、それなりの収入を得ています。
宮廷画家の収入だけで、ほぼ学費は賄えてるらしわ。
更に、始まったばかりで手探り感はあるけど国内大手の新聞社と契約し、実験的ではあるけども漫画というモノを掲載してるのだ……
その収入で赤字企業を運営している妻を養う事も出来ている。
今までお義母さまは苦労してきたのでしょうから、息子が頑張って金銭面だけでも支えてあげれば良いのではないだろうか?
……だけどもここで私の脳内にも、この問題事が何なのか見えてきた。って言うか、もっと早く気付け!
そう、何が問題なのかというと……夫の為に苦労してきたのはお義母さま。
そのお義母さまと結婚して、夫とは家族になるお義父さま。
義息に仕送りをしなくて良くなり、家計が楽になる。
だから……昔からの夢である『小説家になりたい』って願望が抑えられなくなってきた!
「私達にも生活があるから、その範囲内で趣味として個人的に小説を書く事には反対なんてしないのよ。でも最近……『スランプだ』とか言いながら、夜遅くまで寝ないで原稿に向かって居るでしょ? その結果、寝坊して現在の本業である郵便配達に支障が出ているのよ。今の仕事をクビになったら困るのよ」
「わ、悪かった……気を付けるよ。何もこの場で……こんな美少女が義娘になるって日に説教は!」
如何な状況であろうと叱られるのは必然だろう。
そんな義両親の遣り取りに思わず笑ってしまう。
だからこそ気になる。
「お義父さまの作品を読んでみたいですわ」
純粋な気持ちである。
でも当然ながらここには持ってきてない。
自宅(ホックワルト村)に帰ればある。
それだけの為に帰るわけにもいかないし、お父さんに頼んで魔法を使ってもらうわけにもいかない。
因みに私も死ぬかと思ったけど、RSを開発するに当たりルラフェンで魔法の勉強をして取得しました……何度も言うけど死ぬかと思いましたわ!!
ですが、私の魔法力では……術者である私だけに効果が発揮されて……複数人、もしくは多少の荷物を移動させる事が出来ません。
それを考えるとお父さんは凄いと重ね重ね感じるし、ポピー様も生まれ付きこれが使えるのが尊敬に値する。
ウルフは……まぁ凄いわよね。
でもね……リュリュさんよりも使えないってのが、私のプライドを傷つけるの!(泣)
あの女より……あの迷惑女よりも役に立たないって……!
まぁお母さんに会いに行きやすくなった……って事を自信に換えるしか無いわね。
リューナSIDE END
後書き
2024年7月8日投稿
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