リュカ伝の外伝
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
分不相応な物は欲しがらない!
(グランバニア王都:東中央地区・ブーグル邸)
ザルツSIDE
顔が緩む……
嬉しさを抑えられない。
昨晩は父に何度も礼を言い続けた。
私の目の前には『(株)ツヅキ』と言うメーカーの『Astler』と言う名前の車が停車されている。
勿論これは私の車として、昨日納車された物だ。
以前に催された魔道車の展示会で、ルディー君に誘われて行き、そこで行われたビンゴ大会で魔道車の操縦に必要な能力を得る教習所への入校基本料を免除してくれる権利を得られた為、彼と共に通いました。因みに彼は自腹です。
私等はほぼ毎日の様に教習所に通い、偶然ではあるが同タイミングで合格することが出来ました。
二人して小躍りで喜び、敢えて互いの入手する魔道車は報告も詮索もしない……お互い入手後に報告し合うって事で楽しみを作りました。
彼は『実家のお祖父様にすがって、兎に角最新で最高装備の高い魔道車を注文するんだ!』と息巻いておりました。
基本的に彼は謙虚なのですが、変なところで自己主張をする人物だ。
特に実家自慢は並じゃぁない。
実家についての詳細は話さないのだが、お祖父様が商人として大成功していて、お金はあると言う事だけは何時も自慢(と言うかその時の話題で出てしまってるだけ)している。
多分、私のAstlerでは太刀打ち出来ない高級車を購入したんだろう……見せて、もしくは試乗させてもらえる時が楽しみである。
私の家は……良く他人から『成金』と揶揄されているが、事実である為否定は出来ない。
しかし言われる程大金持ちってワケでは無いのだ。
“一般”とか“平均”とかがどの程度なのか説明が難しい……
だから多分……同じ様な家庭の平均的な年収と比較すれば他人には解りやすいかもしれない。
……私の調べた感じでは、私と同じ様な家庭は大体“年収5万G”くらい。
私の家は“年収6万Gをギリギリ越える”くらいなのだ。
ご覧の通り差異など殆ど見受けられない。
一般の平均年収の5万Gが、平均って事で低い方の家庭と比べて我が家が高収入に見えてしまうだけだ。
だからMSVを買ってもらえたのも、今回の様に魔道車を買ってもらえるのも、本当に感謝の気持ちでいっぱいになる。
私も早く父に恩返しをしなければ……
「へ~い、そこのイケメ~ン! それはお前の魔道車か~い? ちょっと乗らせておくれよぉ~!」
自身の愛車に見とれていると、背後から何者かが話しかけてくる。まぁ声で誰だか判ってるがね。
「メリー……目敏いなぁ……後で迎えに行く予定だったのに」
不意に下品な声かけをしてきたのは幼馴染みで恋人のメリーアン・モルトだ。
確認するまでも無い事だったけど。
「おばさ~ん……ちょっとザルツを借りていきますねー!」
私の返答はガン無視して、玄関から顔だけを中に入れ、家の奥に居る私の母に大声で出かける旨を伝えて、やっと私に正対する。
「ほれ……魔道車に乗りな! 運転の腕前を見させてもらうぜ!」
そう言って目の前の私を無視して助手席へと乗り込んだ。
ただ……この時驚いてしまったのは、彼女の衣装だ。
基本が緑色でそこに赤と黄色の細いラインで構成されたチャック柄(?)と言うのだろうスカート……
何にそんなに驚いているのかと言えば、そのスカートが凄く短いって事なんだ。
今までに彼女がこんなに短いスカートを履いてきた事が珍しい。
だって助手席に乗り込んだ際に、彼女緑の下着が見えてしまったのだから。
冬で寒いから、スカートの丈ギリギリまでの黒いニーソックスで、寒さへの対応はしている様に見受けられる。
今更彼女の下着が見えてしまっても、私的には見慣れた物ではあるのだが、チラリと見えてしまった現象に、少しばかりの心の動きを自覚してしまう……(何だろう……ちょっと見える事にドキドキする)
先に乗り込み準備万端な彼女に促されるかの様な流れで、私も運転席へと乗り込んだ。
後部座席に自分の荷物(カメラや財布等が入ってる)を置く。
それを見た彼女も、なる程と私を眺めながら、自分の荷物を後部座席へ……
ゆっくりとエンジンをスタートさせて……
「お客様……どちらに行かれますか?」
と、同乗者に問いかける。
「世界一周の旅へ!」
と冗談で返答されつつ、東中央地区の我が家前から、スタジアムが建設中の“スタジアム地区”へ自身の魔道車を移動させる。
(グランバニア王都:スタジアム地区)
ここはグランバニアに住む者(どちらかというと若者)に現在人気のスポットで、出来上がってしまえば見る事が出来ない姿を観光しに来る人々で賑わっている。
近隣に住んでいるからこそ出来る観光だ。
とは言え、私も同じ事を考えており、建築途中のスタジアムと購入したてのマイカーの写真を撮りたいと考えての行動である。
予定してる被写体には、一緒に来ている彼女も含まれてるんだが、何時もとは若干違う服装で、写真に写される事を許可してくれるだろうか?
普段と違う衣装での写真撮影も断られる事無く、建設途中のスタジアムを背景にマイカーを停車させ、彼女を前方のボンネットに座らせて撮影。
ただこれだけの写真……
何気ない写真のはずなのに、何度も取り直しをする事となった。
と言うのも、ボンネットに座らせた彼女の下着が、如何言うワケか見せてしまい……その都度リテイクになっていたのだ。
思わず
「如何した……股(股関節)が緩いのか? パンツまで写っちゃってるんだよ」
と指摘する事に……
すると彼女も
「ごめ~ん! 次は注意するから。見えちゃった写真は誰にも見せないでね」
とようやく成功する。
自分の彼女の下着が見える写真(絵も含めて)他人(特に男)に見せたくは無いけど、何枚か良い構図で写れた写真もあるから、削除するのは勿体ないんだよなぁ……
(グランバニア王都:港地区)
本当はここより東の“北東地区”にある海水浴場でマイカーを撮影したかったのだが、よくよく考えたら海水浴場での最も見栄えが良い撮影スポットって、それこそ海水が打ち寄せる波打ち際……所謂“渚”と呼ばれる場所である事に思いが到達する。
私の魔道車はAstlerだ!
現在販売されている魔道車の中では悪路に最も弱い部類に分類される。
濡れてない砂地(砂浜)に入っていく事だってリスキーなのに、海水に触れるのは魔道車に毒であろう。
客船等が見えるエリアまで近付いてはみたけれど、私的にイマイチ写真の構図に合うシーンが見受けられなかったので、無意味な時間に感じてしまうけども彼女と車内でくだらない雑談に華を飾る。
大抵はプリ・ピーの事ではあるのだが、時折この話題を持ってきたルディー君の事へと経由し、先日偶然に出会う事の出来たプリ・ピーの生みの親的なプーサン社長と言う男性の話で盛り上がる。
あの人は何処で知り合ったのか想像も付かないくらい人脈が豊富で、ご自身の興味だけに生きている……そんな印象を見受けられる人物だ。
だからなのか、何処か憎めない様な印象も持ってしまう。
少しの間、彼女との車内雑談を楽しんでると、窓の外……港の奥の方から豪華な客船が入港してくるのが目に入ってきた。
掲げられている所属国籍を“ラインハット王国”の旗が表している。
船舶について私は全く詳しくないのですが、今入港してきている船が素人目にも美しく感じた為、是非にと思いマイカーと共に写真に写した。
でもその客船から大勢の乗客が降りてきて、撮影の邪魔になってきたので早々にマイカーにて退避……邪魔なのは我々ですけどね(笑)
(グランバニア王都:中央地区・中央公園)
港地区は人混みの都合上、魔道車から降りる事無くほぼ散策無しでの終了だったが、時間帯的にランチの時間になっていた為、中央公園には立ち寄る事に。
中央公園の周囲には魔道車の存在を予見していたかの様に、駐車するスペースが在り(特に公園出入口付近には多数)、ここでの乗降には困る事が無い。
その証拠(変な表現だな?)に、私が駐車したスペースの隣には、既に何者かの高級な魔道車が停車しており、持ち主が近辺を散策しているだろう事を推測出来る。
因みに先客の高級車はM・Hと呼ばれてる高級魔道車……
私のAstlerなんかとは比較にならない高級魔道車で、年下だが友達(プリ・ピー関連で知り合った)のピパン君のお父上が社長を務めているGMと言う国営企業の軍用車Hanmmerを、民間企業の(株)レックスが民間用に作り替え(勿論性能は軍用よりも格段に落ちる)て販売になった魔道車だ。
その友達が『父さんがHanmmer欲しいって言っててでも運転出来ないから諦めるって愚痴を陛下に言ったらしくて、今度(株)レックスが見た目だけHanmmerのSUVを販売してくれるんだって。でも性能は凄く落ちるってさ……』と教えてくれた。
もしかしたらこのM・Hはピピン軍務大臣の高級魔道車で、この付近に来ているのかな?
偶然会えたら試乗させてもらおう。
ザルツSIDE END
ページ上へ戻る