リュカ伝の外伝
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良くも悪くも潔癖症
(グランバニア王都:中央地区・それなりステーキ)
ピパンSIDE
「責任重大ですね」
「君は……この前の遣り取りで異様にデボラ伯母さんがブチ切れた事を憶えているかい?」
「憶えてますよ。突然リュカ様と特にウルフ閣下に強い殺意を向けましたからね」
そこまで怒る様な事を言ったかな? って感じだったけど。
「もう言ってしまってるけど、デイジーは僕の妹なんだ」
「……ワザワザ言い直すって事は、言い回し的な意味では無くて“親が同じ”って意味で良いですか?」
「そう言う意味だよ。所謂腹違いの妹だ。君の周りにも大勢居るよね。ティミーさんとリュリュさんとか!」
「居ますね……リュカ様がはしゃぎ過ぎちゃって」
「“はしゃぎすぎ”……ね。まぁ良いか悪いかは今討論する必要性は無いよね!」
「無いですね。でも俺は、どちらかと言えば反対派ですけども」
あぁダメダメ……討論に発展しそうな事を言っちゃ!
「如何してそうなったかとか、そう言うのってその当時の当人達の心次第であると思われるんだ。だから『今更蒸し返すな』ってのも真実だし、今まで問題なく進展してきたんだから、ワザワザ皆を混乱させる様な事はしないのが一番良いと思う」
今日は家族に纏わる事しか言わないって事だね。
「僕としてみれば、父さんは母さんを愛しているから、浮気をすると思ってないけど……伯母さんも父さんを愛していたらしく、当時は止められない事になちゃったんだろう」
「その結果が15年後(?)の今ですか」
「まぁそうなるね。でも問題なのは、この時にお祖父様が騒いでしまった事なんだ」
普通は騒ぐよねぇ……
「父親としては娘を妊娠させた男に当事者としてその話し合いに参加させたいでしょうからね。騒ぐって表現も失礼な気がしてしまいます」
「確かにそうだね。君は熟々ティミーさんに思考が似ているねぇ(笑)」
「そ、そうですか?」
「悪い事じゃ無いよ。正に正義の味方って考え方な気がする」
ティミー殿下に似ている……悪い気はしない。
「余談の部類に入るけど……この時に『デイジーの父親がリュカ様なのか?』って疑いをお祖父様が持っちゃってね。ほら……言うまでも無くリュカ様には疑いをかける要素が多分に存在するからね(笑) 疑われて呼び出されて詰問を受けたそうなんだ。本当に違う訳だし、リュカ様も聡いからこの時点でデイジーの父親が誰なのかは、瞬時に理解して把握。性格も相俟って冗談半分で『僕は父親じゃぁないけど、父親無しって可哀想だから生まれてくる子のパパになっても良いよ(笑)』って言ったそうだ」
「まぁそうなりますよね……でもリュカ様は何で真相を知ってるんですか?」
「その点はリュカ様だからってしか言えないなぁ……元々伯母さんは僕の父さんの事が好きだったんだけど僕の父さんは僕の母さんが好きで、何とか結婚出来た。その後は当然ながら妹夫婦が同じ建物内で暮らす事になるんだけど、家の中で僕の父さんに会う度に、今(当時)なお好きな気持ちが無くならず、止まらなくなっちゃって……ってのを、リュカ様は悟ってたんだと思う」
「化け物か……あの人(リュカ様)は!?」
「本当にそう思うけど……伯母さんの性格と普段の言動を鑑みて、未だに僕の父さんの事が好きってのは、幼かった僕でも感づくレベルだと思うよ。僕だって誰かにこの話を聞いて知ったワケじゃ無いから……周囲の反応とかから推理……と言うか結論が勝手に解っちゃっただけだからね」
「えっ……ルディーさんは聞かされてたワケじゃ無かったんですか!?」
「言わないよぉ……だって結構大事だからねぇ。子供に聞かせる話でも無いでしょ。それこそ僕がデイジーに襲いかかったりしてなければ知らせる必要が無いもの(笑)」
「ルディーさんが聡すぎる! ご両親も困っちゃうだろうなぁ(笑)」
「僕が気付いている事は気付いて無いと思う。ただ先日の遣り取りで伯母さんは感付いたかもね。リュカ様とウルフ閣下は完全に解っちゃてると思う。まぁ問題ないと感じて、誰にも言わず、僕にも『何故知ってる?』と聞いてはこないと思うけど……」
「ルディーさんが知ってるって事には問題ないですからね……でも訊かれたら何と答えるんですか?」
「正直に言う……それに僕が気付いちゃう大きな要因にティミーさんが居るから、その事をリュカ様には言ってやりたい」
「ティミーさん?」
「詳しい経緯は知らないけど、あの人も今回の事を知ってるみたいなんだ。そして僕の家に来る度、僕や僕の父さん・伯母さん……そしてデイジーを見て複雑な顔をしてたんだ」
「解らないではない」
「僕も成長してあの人の性格を理解していったからね……あの表情の正体を考え、僕の家族の言動とかと総合し、この結論に到達したんだ」
「そ、それって何歳ぐらいの頃に気付いたんですか?」
「う~ん……10歳くらいの時には結論が僕の頭の中に存在したと思う」
この人、見た目が柔和で気付きにくいけど、頭の回転が速すぎる!
「兎も角ティミーさんが潔癖症過ぎるんだよ……こう言う話題でさ。まぁ嫌いな分野だから仕方ないけど、もう少し腹芸が出来ないと王様になった後、苦労しちゃうんじゃ無いかなぁ? 僕がサラボナで力を得て、政治の舞台でティミーさんと遣り合う場面になったら、そこら辺を弱点として突かせてもらうからね」
「そ、それは……勘弁してもらいたいな」
「大丈夫だよ……リュカ様はその為にウルフ閣下をナンバー2にして、あの二人でタッグを組ませる様にしたんだから。ウルフ閣下がサポートして取り組まれたら、大抵の事柄じゃぁ太刀打ち出来ないよ」
「アイツ……そう言う方面だけは優秀ですからね」
「グランバニアの光部分をティミー陛下が担って、闇の部分をウルフ閣下が担う。完全な布陣だよ……敵に回すなんて愚行だけは避けないとね」
それを既に考えている……この人も敵には回せないだろう。
「と言う訳でさ……ワザワザ皆に『俺、デイジーの父親の事は知ってるよ』って言う必要性は無いけども、彼女の事を愛してくれるのなら、全ての事を知っておいてよ」
「は、はい! 当然俺は彼女と言う個人を好きになったので、それに付随する要因は問題ないですけど、それを含めた全ての彼女を愛するつもりです!」
「本当にありがとう。君になら妹を任せられる」
「いえ、そんな……それよりも俺が振られない様に気を付けないと! 今後失敗して嫌われる事だって皆無じゃぁ無いですからねぇ(笑)」
「あははっ……ヤバい時にはリュカ様に相談しろよ。僕も先日ちょっとした問題を相談して、綺麗さっぱり解決出来たからね」
「相談って……この話の流れだと女性絡みって意味ですよね?」
「そ、それ以外……あるかな?」
「ルディーさんはこの国で生活を始めて1年も経過って無いのに、もうリュカ様に相談する様な女性関係トラブルを起こしたんですか!?」
「そ、そうなる……よ……ねぇ」
「やっぱりルディーさんもプレイボーイだな~」
偉くなる人は女関係が派手なんだよな。
「プ、プレイボーイって! そ、そう言うトラブルじゃ無いよぉ! ひ、他人には言えないし、凄く困った事態だったけど……ち、違うって! そ、そんな目で見るなよぅ(T-T)」
俺の視線に心底怯える(?)ルディーさん。
相談内容は解る訳も無いが、俺の目の前で慌ててるルディーさんが可愛く見えて面白い。
もうちょっと見学したくなった俺は、追加で飲み物を注文。
『フィンタ(株)』社のメロンソーダ……所謂『フィンタメロン』を注文。
このフィンタ(株)は他にも“グレープ炭酸ジュース”や“オレンジ炭酸ジュース”等を販売している。注文した物は直ぐに到着。
ルディーさんは自らを落ち着かせる為(と勝手に推察)にブラックコーヒーを注文。何時もは砂糖とミルクをバッチリ入れてる。
頻りに「僕は何時も余計な事を言うんだよなぁ……」と呟き、戒めるかの様に苦いコーヒーを飲んでいる。
苦さのあまり顔がグチャグチャになってるから、俺も話題を変える為に「因みにこのフィンタメロンって、何処の資本の飲み物ですか?」と問うてみた。
「フィンタ(株)はグランバニアの企業だよ……悔しいけど、美味しい飲み物だよね」
と呟く様に教えてくれる。
そんなにコーヒーが苦いのなら、今から甘い物でも頼めば良いのに。
十分すぎる満腹感で満たされながら、俺はコーヒーを半分以上残したルディーさんと店を後にする。
驚いた事に、ルディーさんのM・Hの隣に、別の魔道車が駐まっている。
何れはグランバニア中……いや、世界中に魔道車が並んでる時代が来るのだろう。
因みに隣の魔道車を見たルディーさんは、
「ふ、ふ~ん……『(株)ツヅキ』のAstlerかぁ……ま、まぁまぁ良い魔道車じゃんか。小回りも利くし、見た目が可愛いし、燃費も良いし……」
とそれを評価。何でか羨ましそう……
詳しくない俺は、
「高いんですか?」
と興味ないのに訊いてみた。
すると……「ま、魔道車は何でも高級だよ! た、た、た、ただ僕のM・Hとは比べ物にならないけどね! だって僕はこのM・Hに凄く………………」と早口で捲し立てられました。これは何かあるなぁ(笑)
ルディーさんが見知らぬ誰かの魔道車に動揺している間に、家(と言っても城門前)まで彼のM・Hに乗せてもらい到着。今度奢ってくれる時はライトな話題を会話出来る時にして下さいと言って解散させてもらった。
ピパンSIDE END
後書き
2024年6月9日更新
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