リュカ伝の外伝
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キャンギャルはローアングルで!
(グランバニア王都:陸軍演習場・特設展示会場)
ザルツSIDE
今日はグランバニア王都の西の端にある陸軍の広大な演習場に特設した展示会場に来ている。
今回の展示会の為に特設された会場ではあるが、広大な演習場をフルに使い広い展示会場が建設されてる。
でも今回の展示会が終了したら、また陸軍が演習場として使用する為、展示会場も取り壊されるらしい。
今回の展示会期間は3日間。
しかし会場建設も含めれば15ヶ月もの間、陸軍は演習場の一つを貸し出し協力をしてくれた。
と言うのも、軍の強い要望により王家(主にリュカ陛下)主体で開発された物の発表及び展示会だからである。
では軍は何を要望したのかと言えば……
所謂『魔道車』と呼ばれる物である。
だが殆どの人が『魔道車とはなんぞや?』となるだろう。
魔道車の開発計画自体は数年前から存在してたので、興味のある者は知っていただろう。
だが私の様に興味の無かった者達には、展示会開催のアナウンスで知る。
私をここへ連れてきたルディー君は、彼の持つその類い希なる人脈で情報を得ていた様だ。
元々グランバニア王都内限定で“魔道運搬車”と“魔道人員輸送車”と呼ばれている魔道車が走っていた。
これは建国されたばかりの“アリアハン”が全面技術提供してくれた物で、使い方が完全に限定されておりグランバニアの自由が利かない代物だ。
軍事利用はアリアハンが認めてないし、運用範囲もグランバニア王都内限定となっており、王都以外の地方都市にはその恩恵を受けられないでいる。
大量の貨物と人員の輸送力は魅力的であり、尚且つ列車の様に線路を敷設した場所にしか移動出来ないという縛りが無くなり、軍は常に国産を望んでいた。
だが時の国王“リュケイロム陛下”は軍部が力を付ける事……即ち軍事力増強には反対であり、車の開発は御自らのアイデアに対し集まった有志の民間企業(国内企業限定)と魔技高校の技術者だけで開発を進めた。
そして数年の年月をかけて完成した国産の車である。
最も早い段階……即ちリュケイロム陛下の呼びかけで参加した企業が3社。
“レックス・トコタ”社長が率いる『(株)レックス』。
“カルロス・ニット”と“ローワン・サンタナ”が共同で起ち上げた『ニットサン(株)』という企業。因みにニットが社長でサンタナが副社長だ。
“ソータス・フォンザ”という当時魔技高校の学生だった者が起ち上げた『フォンザ(株)』という3つの企業。
他にも陛下の呼びかけに参加した者(企業)はあったものの、やはりタイミング的に最も早くに参加したこの3社が中心となり、今回の展示会をメインで飾る事になった。
当然民間企業が多数で研究開発をしたが、その中心には陛下が常にいた。
殆どのアイデアは陛下からの発案だし、参考になる魔道車もアリアハン製だから民間だけで開発するのにはもっと時間が掛かったであろう。
軍部も納得しないだろう……(まぁ陛下なら力尽くで押さえ付けるだろうけど)
その為、完全国営企業の『GM』も車を開発したが、今回の展示会には参加していない。
なので如何様車が開発されたのかは一般の人は知る事は無い。
でも実は私は見学させてもらっている。
勿論ルディー君の縁故で見学出来た。
生まれて初めて国産の車を見たのだが、その重厚感に驚いた。
軍用車という事で車内も広く、完全装備の兵が運転手含め6人乗れる。
後部の貨物収納も広く、車外の屋根などにも色々装備を付ける事が出来る。
因みにこの軍用車は“Hanmmer”という名称だ。
陛下なりに名前の意味があるのだろうが、凡人の私が聞いても理解出来ないだろうから聞かないでいたが、物怖じしないルディー君はそんな事は気にもせずに『何でこの車はHanmmerって名前なんですか?』と聞く。
開発に携わった方々も気になっていたらしく、陛下の答えを聞こうと一斉に静かになった。
だが陛下の答えは『ほら、うちGMって会社名にしたじゃん。本家と違ってグランバニア・モーターズなんだけど、だから“Hammer”をパクった』と、やはり凡人には理解出来ない事を……
なおそれを聞いたルディー君は『へぇ……パクリなんですか』とのこと。
そこだけをピックアップするんじゃ無い!
陛下は苦笑いでやり過ごしていた。
さて、そろそろ本日の展示会に話を戻そう。
私が何故この展示会に来る事になったのか……
勿論それはルディー君のお陰(所為?)だ。
彼に唆される形でプリ・ピーに興味を持った。
だがルディー君には申し訳ないが、私は彼程の嵌まり方はしなかった。
それでも曲とかに興味を持ったので、彼が勧めるままMPとCCを購入。
購入はプリ・ピーのコンサートが終了した直後に、コンサート会場となった城内カフェの向かいにあるPONYの本店でだ。
目的の物も購入したし、ルディー君が自分の部屋で今回のコンサートについて語ろうと言いだしたのだが、私は店内にあったとある商品に目を奪われた。
店員さん……因みに社長さんだった……によれば、私が気になった商品はMSVと言われており、手に持って活動出来るくらいの大きさのカメラと、完全に据置の大きさであるプリンター、それに付随する諸々の付属品。
開発したてという事で完全赤字の販売価格らしいのだが、その時はMPとCCを買ってしまい持ち合わせが無く渋々断念。翌日に父を説得し一式を購入。
翌日から様々な物を写真に収めてきた。
そんなMSVを使う私を誘い、自身の縁故を存分に使い新発明の車の展示会へと私を連れてきたルディー君。
彼は車に凄く興味があるんだなぁ……と思いきや!
彼が興味あったのは展示会を盛り上げるコンパニオンとして雇われ、ボディーラインを殊更強調のうえ極端なまでのミニスカートなコスチュームに身を包んだプリ・ピーの皆さんだった。
まだデビューしたてで仕事をえり好み出来る状況では無いのだろう。
この展示会で彼女らは音楽活動をすることは無く、その美貌で人々(特にスケベな男共)の興味を惹き付けて、車のカタログスペックが書かれたパネルを持って立っている。
当然ながら車についての知識は皆無で、真面目心かスケベ心か判らない気持ちで近付いてきて質問をする者に応えることは出来ず、直ぐ傍に居る各社の開発者(もしくは責任者等)が代わりに答えている。
私をここに連れてきたルディー君は、車への興味は薄いらしく、華を添えている女性陣(如何やらキャンペーンギャル……略してキャンギャルと呼ばれている)に近づき、写真を撮る様に促してくる。
キャンギャルの彼女らも自分達の立場を理解しているらしく、またMSVの事も知っているらしく、写真を撮ろうとすると「その角度ですと当社の車が写りません。こちらからのアングルでどうぞ」と展示されている車が被写体に入る様に促してくる。
だがめげないのがルディー君。
「いやいやアイリーンさん。僕はメインでアイリーンさんの写真を撮って欲しいんですよぉ! 特にこう……下から上への視線で」
そう言って私を屈ませプリ・ピーの方を撮影させようとする。
「おいコラ、そこのカメラ小僧。キャンギャルの撮影の仕方に熟知してるじゃねーか。今回の展示会のメインは車だぞぅ(笑)」
振り向くとそこにはニヤニヤしながらリュカ陛下が近付いてくる。一緒に居る軍人さん(しかも軍務大臣閣下だ!?)も苦笑い状態だ。
「い、いや違うのです陛下! これは私の意思では無くてルディー君が……!!」
「本当かぁ? カメラ小僧はパンチラが好きだからなぁ……」
「リュカ様~、パンチラが嫌いな男なんて存在しませ~ん(笑)」
ル、ルディー君……確かに私も嫌いでは無いけども、女性陣の目の前で高らかに宣言する必要はないだろ。
「はっはっはっ、残念だったなルディー。この展示会のキャンギャルのコスチュームは上から下・内から外まで事前に運営本部が用意した衣装だ。プリ・ピーの全員がサイズの違いがあれど皆同じ物を着用している」
なるほど……それは残念だったなルディー君。
「という事は……皆さんは用意された“見せパン”・“見せブラ”を付けているって事ですよね! 見て良いんですよね! 見ること前提ですよね!! 是非見ます! そして記録します! さぁザルツ君。君の腕の見せ所だぞぅ! パンチラ・ブラチラ撮りまくるんだ。先ずはローアングルからの撮影で!!」
彼のこの物怖じしない性格は羨ましく感じる時がある。
ザルツSIDE END
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