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怖い叔母さん

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第一章

                怖い叔母さん
 両親が事故で世を去ってだった。
 松村愛奈一四七位の背で黒髪を長く伸ばしあどけない顔立ちで黒い眉を持つ楚々とした外見の彼女は路頭に迷うことになった。
「事故だから保険金入るし」
「もう高校生だしな」
「一人暮らし出来るでしょ」
「だったら引き取らなくていいよな」
「一人で暮らせばいいでしょ」
 親戚は殆どが身寄りがなくなった彼女を引き取ろうとしなかった。
「わし等はいいな」
「大丈夫よね」
「お家もあるし」
「何の問題もないな」
「何言ってるんだよ」 
 だがここでだ。
 愛奈の母の姉で銀座で夜の経営している津田稲穂が言って来た、気の強そうなきりっとした顔立ちであり黒髪を伸ばしセットしている。着物がよく似合う背が高くスタイルのいい四十代後半の女である。
「女の子一人置いておけるかい」
「しかし高校生だぞ」
「もう一人暮らし出来るでしょ」
「お金あるし」
「それじゃあ」
「年頃の娘の一人暮らし程危ないものはないよ、それにね」
 稲穂は自分の言葉に怯んだ親戚達にさらに言った。
「今うちは一人なんだ」
「だからかい」
「家族が必要なのかい」
「それで言うの」
「そうさ、あんたうちに来な」
 稲穂は愛奈にも言った。
「いいね」
「叔母さんのところに」
「そうさ、面倒見てやる」
 こう言うのだった。
「家事は手分けしてやってもらうよ、だからうちに来てだよ」
「二人でなの」
「暮らしな、家具はこっちに持って来るなり売ってね」
 そうもしてというのだ。
「すぐに引っ越すんだよ、マンションだったねあんたの家」
「う、うん」 
 完全に自分のペースで話を進める叔母に答えた。
「そうだけれど」
「なら大家さんとも話をしてね」
「叔母さんのお家に引っ越して」
「学校もそこから通うんだよ」
「家賃とかは」
「家事やってもらうんだからいらないよ」
 一切というのだった。
「わかったね、じゃあこれからはだよ」
「叔母さんのお家で」
「一緒に暮らすんだよ」
 こう言ってだった。
 愛奈は稲穂に手を引っ張られる様にして彼女の家に入った、そしてそこで暮らしはじめたのだった。
 その彼女に親戚達は言った。
「稲穂さんは元不良だったんだよ」
「学生時代は喧嘩に明け暮れて学校もまともに行かないで」
「高校卒業した銀座でホステスになったけれど」
「そこでも気が強くて」
「銀座でも有名な怖い人で」
「今はママだけれど」
「あんな怖い人のところに行くなんて」
 彼女に怯えながら話した。 
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