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金木犀の許嫁

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第十八話 忍の家その二

「そう、けれどそれは昔のことで」
「今はなのね」
「維新でそうしたことは終わったから」
 伊賀と十勇士の宿敵と言える関係はというのだ。
「もっと言えば真田家と十勇士は大坂の陣で薩摩に逃れて」
「あそこでずっと暮らしていたから」
「死んだことになって」 
「そうだったから」
「幕府もなくなったし」 
 佐京はこのことも話した。
「もうそうした因縁も」
「なくなっていたのね」
「うん、だから」
 それでというのだ。
「お祖母さんはうちに嫁いできた」
「そうだったのね」
「お互いの家も納得してくれて」
「猿飛家の人と結婚されたのね」
「そう。ただ」
「ただ?」
「味付けは苦労したみたい」
 夜空にこのことも話した。
「こっちの」
「関西の」
「そう、伊賀は関西に入れられる時もあるけれど」
「東海よね」
「そちらになるから」
 だからだというのだ。
「味付けもあちらだから」
「お味噌とか」
「というか三重県」
「あちらの味ね」
「三重県も幾つの地域に分かれていて」
 そうなっていてというのだ。
「津市のある鳥羽とかと」
「伊勢ね」
「四日市もあって」
「それで伊賀ね」
「そうした感じで分かれていて」
 そうなっていてというのだ。
「お祖母さんは伊賀の味付けで」
「過ごしておられて」
「それで大阪には慣れていなかったから」
 こちらの味にはというのだ。
「最初は苦労したみたい」
「そうだったのね」
「けれど」
 それがとだ、佐京は夜空に話した。
「次第に慣れて大阪の味になったから」
「そうなのね」
「今も神戸にいるから」
 だからとも話した。
「神戸の味の筈だけれど」
「大阪の味なの」
「お祖父さんが言うには」
「お祖父さんはこっちの人よね」
「今も一緒に暮らしてるから」
「そうなの。ただどうして別居されてるの?」
 ふとだ、夜空はそのことが気になって佐京に尋ねた。
「ご家族なのに」
「実はお寺を継いだから」
「お寺を」
「うん、神戸の平地のところの」
 そちらにあるというのだ。
「そこに入ったから」
「住職さんになられたの」
「お仕事定年してから」
 それからというのだ。
「通信教育でお坊さんの資格持ってたから」
「それでなの」
「親戚のお寺の後を継ぐ形で」
 それでというのだ。 
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