傍にあった日本の暮らし
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第三章
「本当にね」
「なくて」
「お食事は和食が多くても」
「衣食住の住については」
「衣もね、皆洋服だしね」
このことも言うのだった。
「着物の人殆どいないね」
「それはね」
「それで特にね」
「日本の住居とかは」
「もう身近にないかって思っていたんだ」
「それで残念に思っていたの」
「うん、それがね」
どうかというのだった。
「こうしだよ」
「あるから」
「僕は今感激しているんだ」
こう言うのだった。
「日本の住居が傍にあるなんて」
「そこまで言うのね」
「言うよ」
裕子に強い声で返した。
「日本に来てそのことを残念に思っていたから」
「日本に来たのになかったから」
「そうだよ、あると思っていたものがなくて」
そうしてというのだ。
「ある、それも傍にね」
「あるってわかったら」
「嬉しいよ、青い鳥みたいだよ」
「青い鳥って幸せでしょ」
「僕は今幸せを感じているよ」
現実にというのだ。
「本当にね」
「日本のお家に来られて」
「うん、出来たら」
ジュリアーノはさらに言った。
「日本に住めたら」
「その時はなの」
「是非ね」
まさにというのだった。
「こうしたお家に住みたいよ」
「畳と障子があって」
「日本の家具もあってね」
そうしてというのだ。
「和風の庭園があるね」
「そうしたお家に住みたいのね」
「日本でお仕事をしてね」
日本で住んでというのだ。
「そうしたいよ」
「じゃあそうなる様にね」
裕子はそれならとだ、ジュリアーノの夢を聞いて笑顔で応えた。
「今はゼミを頑張って」
「うん、学問を修めてね」
「大学を卒業してね」
「無事に留学を終えることだね」
「そうしましょう」
「そうだね、じゃあ僕は頑張るよ」
裕子に明るい声で応えた。
「このままね」
「それじゃあね」
「頑張るよ」
こう言ってであった。
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