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第三章
「そうだよな」
「それじゃあこの人の画像送るか」
「そうするか」
「ああ、これなら起きるな」
「そうだな」
二人はその人物の画像を明日の朝六時にチヨのスマートフォンに届く様にした、これで二人はよしとした。そして。
翌朝二人でだ、クラスで話した。
「さあ、アドリアン起きてるかな」
「朝クラスに来たら聞こうな」
「そろそろ来るな」
「部活の朝練終わってな」
「あいつ柔道部だったな」
「そっちの朝練終わったら来るな」
二人にしてもそれぞれの部活の朝練を終えたばかりである。
「それじゃあな」
「あいつあと少しで来るな」
「来たら話を聞くか」
「起きられたらな」
二人でのどかに話していた、だが。
二人はクラスに何か大きなものが駆けてくる音を聞いた、それが何かと思うとその瞬間にチヨがクラスに駆け込んできて。
二人のところに来てだ、大声で叫んだ。
「おはようってまず言うな!」
「ああ、おはよう」
「それで起きられたか!」
「起きるどころか飛び起きたよ!」
これが千代の返事だった、見れば怒っている。
「幾ら何でもあんな人の画像送るなよ!」
「いや、起きると思ったら」
「効果あり過ぎだったか」
「あのな、あの人は駄目なんだよ」
チヨは拳にして振っていた両手を腰の横にやって立ったまま言い切った。
「ハンガリー人には」
「それだけ有名か」
「そうなんだな」
「バートリー=エリザベートっていったらな」
その人物の名前を出した。
「誰もが知ってるな」
「そんな人なんだな」
「あっちじゃ」
「血塗れの伯爵夫人だよ」
チヨはその顔を青くさせて言った。
「何百人もの女の子を殺してな」
「その血を搾り取ってか」
「その血の風呂に入ってたんだよな」
「自分がずっと奇麗でいられる様に」
「そうしたっていうな」
「鉄の処女なんて拷問器具も使ってな」
そうしてというのだ。
「他にも色々なやり方で殺して」
「血を搾り取ってたんだな」
「自分の為に」
「物凄く残虐でな」
そうであってというのだ。
「おぞましい人なんだよ」
「それでか」
「ハンガリーじゃ今も恐れられてるんだな」
「もうな」
それこそというのだ。
「悪いことしてるとな」
「来るってか」
「そうも言われてるんだな」
「日本で言うと鬼か」
「そんな風か」
「鬼じゃなくて怨霊だよ」
日本で最も恐れられている存在に匹敵するというのだ。
「魔王みたいにな」
「恐れられてるんだな」
「そうなんだな」
「そうだよ、送って起こしてもらって悪いけれどな」
そでもというのだ。
「あの人だけはな」
「駄目か」
「バートリーさんだけは」
「あの人の肖像画はな」
絶対にというのだ。
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