神々の塔
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第六十五話 塔の空気その九
「学んでな」
「そのうえで遊ぶ」
「もっと言えばこの世にあるもの全て学問や」
「遊びもまた」
「書を読んでな」
そうしてというのだ。
「あらゆるものを見て経験する」
「それがですね」
「ほんまな」
実際にというのだ。
「学問でな」
「それで、ですか」
「わしもな」
「そうして生きて来られて」
「神霊になってもな」
それでもというのだ。
「しっかりとな」
「そうされてますか」
「学問を司って」
そうしてというのだ。
「遊びもしてるわ」
「飾りなく」
「そや、しかし皆わしの言葉に驚いてへんな」
福沢は今度はこう言った、彼と共に日本の近現代の学者や思想家達がいるが彼等は今は黙っている。
「関西弁であることに」
「元々そっち生まれですよね」
綾乃は福沢にあっさりとした口調で答えた。
「そうですね」
「そや、大坂で生まれてや」
「育ってきましたね」
「大坂は侍少なかったけどな」
それでもというのだ。
「わしはその中で暮らしてたんや」
「それでその言葉ですね」
「いや、ほんま当時の大坂侍少なくて」
綾乃に笑って話した。
「五十万は人おったが」
「殆ど町人さんですね」
「侍は千人もおらんかった」
それだけの数だったというのだ。
「ほんまな」
「少なかったんですね」
「そやったわ」
そうだったというのだ。
「これがな」
「そやったんですね」
「それで町人の影響も受けたな」
自分からこう言った。
「今思うと」
「そうですか」
「そしてな」
そのうえでというのだ。
「今のわしがあるわ」
「そうなんですね」
「何か堅苦しいイメージあるな」
「福沢さんには」
「しかしそれはちゃう」
自分から言うのだった。
「わしはこの通りや」
「飾らへんですね」
「そんな性分やない、あとはったりもな」
これもというのだ。
「どっかの誰かみたいにや」
「ああ、勝海舟さんですね」
「今もあまりな」
その彼とはというのだ。
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